【トヨタ最新自動車情報】新型クラウン

2018.8.29

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トヨタのラグジュアリィーサルーンクラウンが、6月26日にフルモデルチェンジを受け15世代目へとスイッチした。
最近のクラウンは、単にアッパークラスたるラグジュアリィーテイストを高めるのではなく、
そこにスポーティーというキーワードを加えるなど、まさに革新を提案してきた。
そして、最新型ではさらに先進安全装備、コネクティッド機能を充実させ、次世代を語るに相応しいモデルへとステップアップさせている。

文章:吉田直志/写真:山岡和正
 

伝統の継承と革新

1955年にデビューしたクラウンは、トヨタのアッパークラスモデルとして、クルマ好きの憧れの存在として君臨してきた。革新を掲げてきたこともまたクラウンらしさであるが、それは最新技術の採用に止まらず、時代を先取りするような提案に多くみられる。
 
今回の革新として、車載通信機DCMを全車標準装備とし、初代コネクティッドカーを名乗ったこともそのひとつだ。
 
リアルタイム走行データをもとにしたメインテナンスアドバイス、オペレーターとの通話によるコンシェルジュ的なサービス、ITSを利用した交通状況や地域情報の活用、さらには通れた道マップとして、トヨタDCM搭載車などから収集した情報をもとに過去24時間の通行情報実績を通れた道の情報として提供するなど、“つながる”という新しい提案によって、安全・安心、そして
快適、便利という、これまでのカーライフにはない付加価値を与えてくれている。
 
もちろん、クルマとしての進化も多くあり、その手法もまたこれまで同様で、クラウンらしさをしっかりと残しながら、大きくブラッシュアップさせている。
 
たとえば、そのフォルム。ここ数世代のクラウンはスポーティーセダンたるフォルムをデザインしてきたが、最新型ではFRモデルらしいロングノーズに加えて、トランクへと伸びやかなルーフラインを描いた。6ライトウインドウを採用したことも相まってクーペ的な流麗なシルエットを手に入れている。
 
エクステリアでは、大型グリルとシャープなヘッドランプから構成されるフロントマスク、
タイヤの存在をアピールしたフェンダーラインなど、クラウンらしさを失うことなく、革新的なデザインを表現している。
 
インテリアは、スポーティーさをダイレクトに表現したコクピット感と、アッパークラス感を存分に表現したラグジュアリィー感とを上手くバランス。センタークラスタには遠方(上段)に
8インチディスプレイを、操作性を求めて手前(下段)に7インチディスプレイを配置したダブルディスプレイを採用するなど、実用性までしっかりと考慮されたアイテムを装備している。
 
ハードウェアにも革新と呼べる技術が惜しみなく採用されている。パワーユニットは、ガソリン2.0Lターボ、2.5Lガソリンを組み合わせたハイブリッド、そして、V6/3.5Lガソリンを組み合わせたマルチステージハイブリッドの3タイプを設定。もちろん先進予防安全技術も最新を採用。第二世代型となるトヨタの予防安全パッケージToyota Safety Senceを標準装備している。
 

「いつかはクラウン」

今回、テストドライブに連れ出したのは、2.5Lガソリンエンジンによるハイブリッドシステムを搭載したGグレードだ。
 
早速乗り込んでみると、キャビンには意外にもタイト感があることに気が付く。とはいっても、それは狭いと感じさせるものではなく、思っていたほどまで室内幅がない、そんな印象だ。
 
それもそのはず。実は、このクラウン、力強さだけではなく、ワイド感を演出したフロントマスクから、その全幅はイマドキのモデルのように、日本では扱い難いサイズになってしまったかのように思われるかもしれない。しかし、その全幅は国内で取り回しやすい全幅1800mmを頑に守ったからに他ならない。まさに、クラウンらしいこまやかな気遣いだ。
 
ただ、先にも述べたようにシートに座っても、狭いといったマイナスイメージを受けることはない。むしろ広過ぎないといったプラスの印象。つまり心地良さがあり、さすがはクラウンと感心させられるところが多い。これは、アイテムの質感やデザインはもちろんだが、4910mmとなる全長がもたらすゆとりも手伝ってのこと。フロント、リアシートともにゆとりを感じられる。
 
シートに座っただけで感じた心地良さは、走り出しても変わることはない。
 
ハイブリッドユニットは、先代ではガソリンユニットが4気筒ゆえに質感が問われたが、遮音材やボディー補強なども相まって、ユニットの存在を感じさせながらも、音、振動ともに適度に抑えられており、実に快適だ。
 
もちろん、そのフィーリングはモータードライブを上手く活用したもので、ジェントルなフィーリングは音、振動さえ気にしなければ6気筒的だし、パワーもまた同様に感じる。
 
アクセルを深く踏み込むと、ガソリンエンジンは回転数を高めてそのパワーフィールはまさに盛り上がるように発生する。ガソリンエンジンの音や振動は先ほどとは表情を変えるものの不足ないパワーからは、まさに、ひとクラス、いや、ふたクラス上のガソリンエンジンを搭載しているかのような印象を受けるほど。
 
クラウンと訊くと、その乗り心地はコンフォート感を優先したものという印象をお持ちかもしれない。しかし、最新型はそのコンフォート感をさらにブラッシュアップさせながら、スポーティーと呼べる走りを手に入れている。それは、日常では見せぬような、二面性とも呼べるものだ。
 
サスペンションのストローク感を生かしたゆったりとした乗り味は、減衰力を適切にコントロールすることでふわっとしたフィーリングから曖昧さを消し去り、つまりは明確さを作り出している。きめ細やかなサスペンションの動きにしっかり感が加わったことで、これまで以上に安心感がもたらす快適性を感じた。
 
その上でだ。速度域を上げて行くと操縦性に明確さとダイレクト感が強く感じられるようになり、コーナーではそのスタンスを決めるとタイヤがしっかりと路面を捉えたままに挙動を乱すことなく駆け抜けて行く。そこにはドライバーの判断を鈍らせるような曖昧な動きなどはなく、
安定した走り、卓越した操縦性に必要な情報だけを伝えてくる。つまり対話性が存在している。そう、そこには愉しさがある。
 
新型クラウンの真価は想像以上に多く、その進化は思っているよりも大きい。「いつかはクラウン」そのキャッチコピーは、今でも、いや、今でこそピッタリと当てはまるように感じた。
 


力強さとエレガントさをハイバランスさせ、新しい時代のラグジュアリィーサルーンをデザイン。全グレードで採用された3眼LEDヘッドランプによって、そのスポーティーさを強く印象付けている。ただラグジュアリィーテイストを極めたのではなく、安心感がもたらす快適性を追求し、それを具現化したのが新型クラウンだ。それは、走りだけではなく、コネクティビティーといった新機能にも込められている。
 


クーペ的なフォルムに見合うようにテールランプ、リアバンパーなどもエレガントなテイストをデザイン。リアコンビネーションランプはLEDを採用している。
 


後方へとなだらかに流れるルーフラインは、セダンたる実用性ではなく、サルーン的な優雅さを感じさせるもの。6ライトウインドウデザインとしたこともトピック。
 


パワーユニットは、2.5Lガソリンエンジンを組み合わせたハイブリッドシステム。ガソリンエンジンは最高出力184PS、最大トルク221Nmを、モーターは最高出力105kW、最大トルク300Nmを発生し、システム全体では最高出力226PSを発生する。
 


ダブルディスプレイが特徴的なインパネ。視認性を優先して8インチタイプをインパネ上部、奥に配置し、エアコンやオーディオといった操作を考慮して8インチの下段、手前に7インチを配置した。ミニバンのような広々感ではなく、適度なタイト感と、装備にデザインされた質感によって心地良さを提供している。
 


フロントシートは、サイズ、クッション形状などクラウンたるゆったり感を表現しただけではなく、スポーティーな走りでも不足を覚えないサポート性を備えている。個人的には的確なフィット感が印象に残ったが、それは同時にロングドライブでも疲れ知らずをも想像させるものだった。
 

 

 

 

 

 

 

 


後方へとなだらかに傾斜していくルーフラインは、リアシートにおけるヘッドクリアランス不足を想像させるが、実際には不足なし。フロントシート下へ足を入れられるスペースを拡大したこと、ひざ下までしっかりとサポートしてくれる座面長など、クラウンにふさわしい居住性も獲得。
 

 

 

 

 

 

 


クラウンとして譲れないのがトランクルームの広さと使い勝手。いうまでもなく、奥行きは十二分、開口部も広く確保されている。基本、9.5インチゴルフバッグを4個載せることが可能(2.5Lハイブリッドモデルの場合は、オプション装備によってその数は異なる)。
 


センターキャップに伝統の王冠のロゴマークが施されたホイールサイズは18×8.0J。タイヤサイズは225/45R18。
 

 

 

 


路面からの入力をサスペンションでいなし、ボディーに余計な揺れとして伝えてこないというこのフラット感は、さすがクラウンならでは。これはシャシーチューニングだけではなく、ボディー剛性アップも手伝って手に入れたものだ。
また、よく躾けられたシャシーはワインディングで的確な操縦性を提供し、安定性を見失うようなことも皆無。そのハンドリングはスポーティーをイメージさせるシャープさではなく、きめ細やかさを追求し、正確性を極めたといえるフィーリング。