【紹介/試走】LAND ROVER DISCOVERY SPORT HSE

2015.6.12

    • プレミアムSUV
    • LAND ROVER

LR改革の先鋒

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LAND ROVERの中堅
オンロード仕様のディスコ

s_IMG_5891 “LAND ROVER”というブランドが、まだ一部の4×4ファンにとって特別なクルマだった時代、この四輪駆動車専門ブランドのモデル・ラインナップは実に明解だった。

 

即ち、高級車のレンジローバー、マルチパーパスなディスカバリー、実用車の90/110(現・ディフェンダー)、そしてコンパクトなエントリーモデルのフリーランダーと、それぞれが明確な役割を与えられて、見た目も分かりやすく棲み分けが成立していたわけだ。

 

とりわけディスカバリーの登場(1989年)は、各モデルの守備範囲をより明確にしつつ、LAND ROVERユーザー層の底辺を確実に拡げたという意味でもその功績は大きい。

 

もちろんメーカー側はそんな言い方こそしなかったが、当時のディスカバリーは「レンジローバーの血を濃く受け継いだ廉価版」として大いに受け入 れられ、スパルタン過ぎる90/110(後のディフェンダー)はさすがにちょっと…というユーザーまでも取り込むことに成功した。

 

しかしそれ以降は、空前のSUVブーム、そしてその後のプレミアム路線に乗り、ディスカバリーは廉価版としての役目を終え、RR(レンジローバー)に次ぐ高級車として進化してきたのはご存知の通りである。

 

現行ラインナップでは、高級ブランドであるRRの中でエントリーモデル的な立ち位置のイヴォークが存在し、それとプラットフォームやパワート レーンを共有するのが今回の「ディスカバリー・スポーツ」ということで、守備範囲やその棲み分けを判断しようにも、なかなか複雑かつややこしい印象を受け るモデルではある。

 

公式には、近々販売を終了するフリーランダーの後継モデル…という位置付けらしいが、作りや味付けが全く異なるため、個人的にはとてもそう思えないので、やはりこれは「オンロード寄りに味付けされたディスカバリー」という理解のもと、試乗に臨む。

 

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ディスコより630kgも軽量!
中身はイヴォークと姉妹の関係

「オンロード寄りに味付けされたディスカバリー」と聞いて「何を今さら」と感じる4×4ファンは少なくないだろう。なるほど、現行ディスカバ リー(日本仕様車)は、300PSオーバーの静かでパワフルな3リッターV6に極めてスムーズな8速ATが組み合わされ、55%扁平のタイヤを履いて快適 なハイウェイ巡航からワインディングまでそつなくこなすクルマ。これ以上どこをオンロード仕様に?という疑問はムリもない。

 

しかし、スペックを見れば一目瞭然。対ディスカバリー比で、ホイールベースは145mm短く、全高は165mm低い。トレッドは前15mm/後20mmワイド。決定的なのは車両重量で、ディスカバリーより630kgも軽い1,920kgに仕上げられている。

 

エンジンがイヴォークと同じ横置きの2リッター直4ガソリンで、しかも副変速機がないことも含めて駆動系が軽量…というのがディスカバリーとの大きな違いであり、”スポーツ”たる所以である。

 

軽量であることは、もちろんオフロードでも有利であり、オンロード仕様の特化項目ではないが、ローレンジの無い駆動系は間違いなく”オンロード仕様”ということになる。

 

試乗車のグレードは「HSE」で、国内ラインナップでは標準の「SE」と豪華仕様の「HSE Luxury」の中間グレード。エンジンの設定は前述のとおり、RRイヴォークと同型の2リッターDOHCガソリンターボのみ。ちなみにヨーロッパでは2 種類(150hp/180hp)の2リッター直4ディーゼルのみの設定となっている。

 

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取り回しはイヴォーク並みに良好
遮音性能の高さはトップレベル

既にお察しかとは思うが、このモデルの仕様を考えれば、同シリーズとは言え、ディスカバリーとの比較はあまりに不自然。よって、どうしてもパ ワートレーンやプラットフォーム、サスペンションの一部を共有するRRイヴォークとの比較が意識の大半を占めてしまう。おそらく、検討中のユーザーの着目 ポイントも同じだろう。

 

車庫入れ、縦列駐車なども含め、街中での取り回しはほぼイヴォークと変わらず。全幅やトレッドはほぼ同じだが、全長やホイールベースはイヴォー クより長く、最小回転半径もやや大きめなのだが、視界が広いためか、取り回しがラクに感じる。イヴォークで感じるウインドシールドの圧迫感も少ない。

 

その代わり、予想どおりではあるが発進加速や取り回しのフィーリングは、ややキビキビ感に欠ける印象。重量差は130kgほど(対イヴォーク5ドア)なので、この差はサス設定の違いにありそうだ。

 

特筆すべきは、やはり車内の静粛性だろうか。2リッター直4ターボは、踏み込めばそれなりに振り絞ったようなサウンドになるが、けっして不快な音質ではない。

 

おとなしく走れば、綿密な遮音処理の成果が顕著に表れる。この遮音性能の高さは、本国ではディーゼルエンジンのみの設定という事情も無関係ではないだろう。

 

コマンドシフト付き9速ATのシームレスなシフトフィーリングには、文句の付け所がない。6〜9速がオーバードライブで、高速走行時も快適な巡航が可能だ。

 

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スポーツとコンフォートの共存
LR成長のカギを握るモデル

タイトコーナーが連続するワインディングでは、適度にロールして無駄なく戻る、自然で安定したコーナリングが楽しめる。この辺りは、イヴォークのタイト感に較べてゆったりとした印象だが、充分スポーティーな走りができる。

 

スポーツという名称から想像する硬さではなく、シャキッとした乗り味だが、ガチガチな脚ではない…という、近頃多い欧州製SUVらしいセッティングである。

 

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ユーティリティー面では、オプションでサードシートの用意もあるのが、イヴォークとの大きな違い。もちろん、車内の、とりわけリアシートのゆったり感は大きなアドバンテージと言える。このリアシートはスライド幅も大きく、とても快適だ。

 

内装に関しては、センターコンソール等にややチープ感(と言うより普通のクルマ感)が漂うが、レンジローバーがある以上、ディスカバリーはそこそこでOKでは? と、どうしても考えてしまう。

 

かつて、その戦略的な価格設定と、ユーザーニーズを的確に捉えた仕様で”LAND ROVER”を大きく成長させたディスカバリーだが、現在もそれが可能なのは、やはりディスカバリー・シリーズだろう。

 

s_IMG_58751,998cc 直列4気筒DOHCターボガソリンエンジン。最高出力177kW(240ps)、最大トルク340Nm(34.7kgm)と、3リッターNAガソリン並のパワーを発揮。
【騒音計測データ】
●車内・・・・38.0dB
●ボンネット閉・・・・62.5dB
●ボンネット開・・・・66.0dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動時

 

欧州ではディーゼル仕様が前提であるためか、遮音性能の優秀さが際立つ。

 

disc1上左:SPORTらしいシンプルな2眼メーター。上右:テレインレスポンスのスイッチはエアコン操作部に組み込まれた。
価格から見れば充分に高級車だが、内装は意外に素っ気ない。

 

s_IMG_5761RRイヴォークと同じダイアル操作型コマンドシフト付き9速AT。咄嗟の切り返しでは、やや戸惑うダイアル操作だが、これも慣れの問題か。

 

disc2HSE にはグレインド・レザーシートが装備される。リアシートのスライド量はご覧のとおり(下)。ゆったりした空間が魅力だ。

 

disc33分割可倒式のリアシート。完全なフラット状態にはならない。試乗車は5人乗り仕様車。

 

s_IMG_5923LEDポジションライトが目元をくっきり浮かび上がらせるヘッドランプ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

disc4フロントサスは、マクファーソン・ストラット(左)、リアサス(右)はインテグラル・リンク式。乗り心地を損なわない程度にカッチリした味付けの脚だ。

 

 

s_IMG_5996HSE以上の標準タイヤは235/55R19サイズ。アルミホイールは、8J×19。