高級レンジのエントリーモデル

新生ローバーの先駆け

「なんて素敵な顔つきだろう」、2008年の北米自動車ショーに登場したコンセプトモデル「LRX」を見た時の感想である。今でこ そランドローバーのアイデンティティーになりつつあるフロントマスクだが、「LRX」はコンセプトモデルとほぼ同じデザインのまま、レンジローバー・イ ヴォークとして2011年に登場した。全長約4.4mの手頃なボディーサイズであることもあって、たちまちレンジローバーの最量販車種になるほどの人気者 へと成長した。日本では2012年から販売されている。

 

イヴォークの日本でのラインナップは「Pure」、「Prestige」、「Coupe Dynamic」に加え、2014年8月から「Dynamic」と「Autobiography」が追加された。2リッター直4DOHC直噴ターボエンジ ンと、9速ATが全モデル共通で組み合わされている。

 

今回試乗したのは、20インチの大径ホイールを履き、アクティブ・オン・ディマンド・カップリング式の4WDシステムを採用したトッ プグレードの「Autobiography」。運転席に座ると適度にホールド感のある本革シートや、ステッチを施した質感の高いインパネ、グラスエリアが 広く開放的なパノラミックルーフなど、コンパクトなボディーでもレンジローバーの高級感をしっかりと味わえる。

 

走り始めると、2リッターという小排気量ながら240PSを発生するエンジンが、それほど軽くない約1.8tのボディーをターボラグ など微塵も感じさせず軽快に加速させて行く。パワフルなエンジンもさることながら、トランスミッションが2014年8月からこれまでのアイシン製6速AT からZF製9速ATへ変更されたことも特筆すべき点である。過給機付き小排気量エンジンにロボタイズドミッションの組合せが最近の主流になりつつあるが、 9速ATを搭載したことでイヴォークの魅力が更に深まった。力の息つきを感じさせずにフラットな加速を味わえ、パドルシフトを使えばスポーツ走行も楽しめ る。少々乱暴にシフトダウンしても「フォン」と回転数を合わせてくれるので、変速ショックは感じられない。事前に6速以上がオーバードライブと聞いていた ので燃費重視のセッティングかと思っていたが、運転がとっても楽しく、うれしい方向に裏切られた。

 

ハンドリングは大径ホイールを履くだけあってステアリング操作にクイックに反応するスポーティーなセッティングだが、乗り心地はロールを抑えた高級サルーン並に穏やか。低速で若干突き上げがあるものの、高速では快適そのものだ。

 

間もなくイヴォークと同じ2リッターターボエンジンに9速ATを組み合わせたディスカバリースポーツが日本でも発売されるが、イヴォークの満足度が高いだけにこちらにも期待が持てる。

【エンジン】
最高出力177KW（240PS）／5,500rpm、最大トルク340Nm（34.7kgm）／1,750rpmを発生する2リッター直4・DOHC直噴ターボエンジン。0-100km/hは7.6秒をマークする。

 

【インパネ全景】
本革とソフトパッドをふんだんに使用した、贅を尽くしたインパネ。コンパクトなボディーでも、レンジローバーの名は伊達ではない。

 

【メーター】
左側にスピートメーター、右側にタコメーターを配置する。シンプルで視認性に優れている。

 

【インパネまわり】
ジャガーとも共通するダイヤル式のシフトセレクター。シンプルだが、操作には多少の慣れが必要だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⚫SPECIFICATION…全長X全幅X全高：4,355X1,900X1,635mm／ホイールベース：2,660mm／定員：5名 ／エンジン形式：直列4気筒DOHCガソリン・ターボ／排気量1,998mm／最高出力177KW（240PS）/5,500rpm、最大トルク 340Nm（34.7kgm）/1,750rpm／トランスミッション：9速AT／駆動方式：フルタイム4WD（アクティブ・オンデマンド・カップリン グ）／サスペンション：前マクファーソン・ストラット・後リンク・ストラット／ブレーキ：前ベンチレーテッド・ディスク、後ソリッド・ディスク／ステアリ ング形式：ラック＆ピニオン（電動パワーアシスト付）／タイヤ（標準）：F&R 245/45R20／ホイール（標準）：F&R 8.0JX20／車両本体価格7,180,000円（税抜）