【BACKWOODS】 宮島秀樹

2016.4.29

    • コラム
    • Mercedes Benz

救急車や消防車の駆動方式は?

この熊本地震でも、多数の道路崩壊および家屋等の倒壊による道路の通行止めが報告されている。4月15日時点では、通行止め区間が高速道路で3区間、国道で4区間、県・政令市道で38区間(国交省情報)。町道や私道を含めれば相当数の区間が通行不能となっており、揺れの激しかった地域ではクルマでの移動が著しく制限されてしまったようだ(ちなみに、新潟県中越地震では約240区間、東日本大震災では実に700区間以上の国道や県道が通行止めとなっている)。また、かろうじて通行できる道路でも、路面にできた段差の乗り越えや障害物の迂回などによって渋滞が起きた区間があるという。

 

先月は、こうした緊急的な状況下では4×4が少しでも有利・有用であると書いたが、この熊本地震では以前から思っていた疑問が急速に膨らんだ。それは、災害時救助・救援の「初動」で一番頼りにされることになる、現地に配備されている消防車や救急車の駆動方式はどうなっているか? だ。以前は、ランドクルーザーやパトロール(サファリ)のオフロード4×4ベースの消防ポンプ車が各地の消防署や消防団にたくさん配備されていた。しかし、ランドクルーザーもパトロールも消防仕様モデルは10年以上も前に廃止されてしまっている。これは、各地の道路舗装率が上昇し、積載面でより有利なトラックタイプが多く採用されるようになったからだと言われている。

 

では、現在消防署に配備されている緊急車両はどうなっているのか? オフロード4×4ベースではないにせよ、駆動方式は4×4なのだろうか?

 

そこで、まず我が国の消防体制を統轄する総務省消防庁に、全国に配備される緊急車両について電話で問い合わせてみた。平成27年度版消防白書によれば、全国の消防本部における救急自動車の保有台数は6,184台、消防車両は、消防本部と消防団を合わせて消防ポンプ車が21.917台、はしご自動車1,201台、化学消防車996台、指揮車2.622台、救助工作車1,244台、その他の消防自動車10,459台となっている(平成27年4月1日現在)。消防本部の担当の方に、それらについて4×4や4×2の比率や車種の内訳が分かるかどうか尋ねたところ、地形や用途など地域の実情に合わせる必要があるため、車種の選定は自治体の消防庁に委ねているとのことであった。

 

というわけで次に、被害が甚大となる首都直下型地震が高い確率で予想されている東京都の消防庁に問い合わせてみた。広報課の担当の方によれば、東京消防庁は救急車約300台、消防車約600台(消防団保有を除く)を配備しているというが、車種内訳や4×4の比率については調べるのに少し時間が必要だとのことであった。筆者が「震災時、より機動的に活動するためには4×4が有利だと思うが」と言ったところ、消防車にしても救急車にしても、車両が現場直近まで行くことは、必ずしも想定していないとのことであった。例えば、車両が入り込めない隘路が多い地域での消火活動は、ホースの延長で対応可能であり、現在もそういうかたちで対応している場合が多いという。つまり、4×4でなくてもそれなりに対応できると考えている、ということであろう。

 

果たしてどうか? 被災現場どころか、消防署の前の道路に亀裂や段差が出来たり障害物が落ちていたりしたら…。地震発生時の天候が大雪だったら…。はしご車が現場に近づけなかったら…。今回は電話取材ということもあり、また、4×4車両の具体的な所有台数や内訳も分からなかったので、こうした疑問について深くやりとりすることはできなかったが、あらためて書面にて詳しく問い合わせてみるつもりだ。また、状況が落ち着いてから、熊本や東北の被災地域の消防庁に、緊急車両の機動性の面で困った点や改善したい点があったのかどうか取材してみたいと思う。

 

筆者個人としては、消防、警察の緊急車両はすべて4×4(総輪駆動車)であっていいと思っている。もちろん、4×4は4×2よりもコストが嵩む。しかし、首長の海外出張に訳の分からない高額な歳費を使うより、その分で緊急車両に少しでも多くの4×4を採用した方が、よほど納税者の理解を得られるのではないかと思う。

2016042901フォーバイフォーマガジン社が以前保有していたウニモグ。この車両は、元々は災害時の緊急指揮車として東京都で使用されていたものだ。こうしたウニモグなどの機動性の高い特殊車両をベースとした災害対策車や消防車は、各自治体に配備されているが、いずれもごく少数である。