ハイラックスREVO TRD AXCR2016 in さなげアドベンチャーフィールド

2017.3.4

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レースのプロフェッショナルが手掛けた
究極のラリーマシンが凱旋帰国

アジアクロスカントリーラリー2016に、ハイラックスREVO TRD AXCR 2016で初参戦し、総合2位という栄冠を手にしたTRD(トヨタ テクノクラフト)タイランド。マシン製作は、屈指のオフロードレーサーであり、マシンビルダーでもある塙郁夫氏をアドバイザーに迎え、日本のTRDが当たった。そのクロスカントリーラリーマシンが凱旋帰国し、新堀忠光ドライバーによる同乗試乗会が、2017年2月13日(月)さなげアドベンチャーフィールド(愛知県豊田市)で開催された。

REVOトヨタ ハイラックスREVO TRD AXCR 2016

 

 

ハイラックスREVO TRD AXCR 2016は、タイで生産されているハイラックスREVO(エンジンはプラド・ディーゼルと同じ2.8リッター直4ターボディーゼル1GD-FTV型)をベースに、本格ラリーレイド仕様に仕上げたマシン。元々のハイラックスREVOの耐久性と走破性の良さを活かし、エンジンはノーマルのままで、吸排気系のライトチューニングを施したのみ。ラリーレイドにおいて肝心なのは、マシンを壊さず、ゴールまで走り抜くこと。もちろんドライバーとコ・ドライバーのスキルが要求されるが、マシンにも耐久性と走破性が求められる。そのためには、脚まわりの強化と各部の補強や軽量化が大きな課題になる。

 

実際にマシンを拝見すると、ハイラックスREVO TRD AXCR 2016は、頑強なロールケージ、下まわりのアンダーガードやデフガードなどの各部の補強、そしてオフロードのあらゆる路面状況に対応する熱ダレしないロングストロークのショックアブソーバーを採用するなど脚まわりの強化に重点を置いている。また、ロールケージなどで重量を増やした分、カーボン製ボンネットや軽量なバケットシートの採用のほか、リアシートを取り外すなど、軽量化を図り、トータルバランスをとり、TRDならではのテイストに仕上げているのが特徴だ。さらに、いざという時のセルフメンテナンス性も考慮した荷台のウインチ、ジャッキ、スペアタイヤ、十字レンチ、工具箱、消火器などの配置は、塙氏の実戦に基づいたマシン造りが活かされている。

 

塙氏のアドバイスで、しなやかなで有効ストロークの長い脚まわりを目指したというサスペンションだが、新堀選手に乗せていただくと、その特徴を体感。ロールは大きく見えるが、路面が荒れているコーナーも、フラットダートも抜群の路面追従性と安定した車両姿勢を保つので、トップスピードで駆け抜けられるわけだ。凹凸をなめずに、凸面の表面をするりと滑るような感覚で走り抜け、実に気持ちいいものだった。モーグルが続く急勾配の上りも、実にしなやかで、突き上げ感がない。これまでさまざまなクロスカントリーラリー仕様のマシンに同乗させてもらってきたが、このハイラックスREVO TRD AXCR 2016は、乗用車に近い乗り心地に仕上がっていた。新堀選手の走行テクニックもさることながら、思わず「ラリーカーって言うより高級乗用車!」と笑いながら叫んだほど、乗り心地が良かった。総走行距離が2,000㎞を超える長丁場のラリーでは、乗員が疲れにくいマシンであることは大切なポイントだが、そういう意味でも見事な仕上がりだ。車重バランスを上手く取っているせいか、ノーマルエンジンのトルクとパワーが素直に感じられ、ハイラックスREVOの素の良さも、新堀選手が語ってくれた通りだった。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAラリーマシンといえばガチガチの硬い脚まわりを想像しがちだが、TRDが仕上げたハイラックスREVOの脚まわりはしなやかに路面の障害をクリアして行く。

 

 

オフロードという初舞台への参戦で、TRDが総合2位を獲得した理由を、ずばり新堀選手にたずねたら、「チーム力のたまものです」とかえってきた。マシン、ドライバーとコ・ドライバー、メカニックなどのサポート体制など、全てを総合したチーム力が、初参戦ながら好成績につながったという。これまで、トヨタのワークス活動を支えてきたTRDだけに、クロスカントリーラリーでもその実力が発揮されたといえるだろう。そして、アジアクロスカントリーラリー2017にTRDは再び挑戦するらしい。同乗試乗で感動したマシンセッティングに微調整を加え、さらなる飛躍を目指すハイラックスREVO TRD AXCR 2017の活躍が楽しみだ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAアジアクロスカントリーラリー2017では、TRD仕様のハイエースをサポートカーとして採用する予定だとか。

 

 

ハイラックス REVO AXCR 2016をドライブし、総合2位を獲得した新堀忠光選手。アジアクロスカントリーラリーで2度の総合優勝経験を持つ、頼れるドライバーだ。今回の試乗会でもドライバーを担当した。

 

 

<細部写真>
OLYMPUS DIGITAL CAMERAエンジンはプラドにも搭載されている2.8Lの1GD-FTV型だが、日本仕様とは違い尿素SCRシステムは装着していない。今回は吸排気系のみの変更にとどめ、エンジン本体には手を加えていない。

 

 

荷台にはウォーンM8000Sウインチを搭載。脱着可能なマルチマウント式となっており、前後バンパーに装着することができる。ワイヤーは軽量な化学繊維タイプだ。

 

 

ウインチの隣にはしっかりした造りのアルミ製1.5トンジャッキを搭載。修理やレスキューを確実に行うためにはこのクラスのジャッキが必要だ。

 

 

スペアタイヤは荷台前方に2本搭載されている。パイプ式ラックとタイダウンで固定され、スピーディーに取り外しができる。

 

 

十字レンチは、車内から目視確認できるように、わざと高い位置に装着されている。これは塙氏のノウハウで、タイヤ交換作業終了後の置き忘れを防ぐためのアイデアだとのこと。

 

 

フロントサスペンションには、KING製のリザーブタンク付きショックアブソーバー(2.5インチ)とコイルスプリング、エアショックを装着。

 

 

リーフスプリングはノーマルを使用。ストロークを規制するリミットストラップ(ショックアブソーバーの隣)により、最大ストロークはレギュレーションの300mmに設定。

 

 

リアデフケース上部にもショックアブソーバーが増設されている。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERAリアのKING製3インチバイパスショックアブソーバーは、荷台の一部を切り抜いて装着されている。オフロードマシンでは一般的な手法だ。

 

 

シートは軽量でホールド性に優れるバケットタイプを装備。ハーネスともにスパルコ製だ。

 

 

車内には頑丈なロールケージが張り巡らされており、クルーをしっかり保護。オレンジ色の板は、大変軽量かつ頑丈な樹脂製サンドラダー。サンドラダーはラリーレイドでの必需品だ。

 

 

内装品を極力省き軽量化を果たしたコックピットだが、パワーウィンドウやエアコンといった快適装備が残っているのが面白い。

 

 

文/緒方昌子、写真/川上博司