【パーツ最前線】DIXCEL BRAKE DISC & BRAKE PAD Vol.1

2015.12.25

    • コラム
    • Volkswagen

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強い制動力を持つドイツ車
洗車をテーマに考えてみると?

 

輸入車の魅力は様々だろう。お国柄ゆえの大きなスケールを感じさせるアメリカ車、ティフォシ達の熱い血を滾らせるフォルムと走りのイタリア車、エレガントな内外装を纏うフランス車など、優等生な日本車にはない個性溢れる魅力がある。

 

では、日本で最も人気のあるドイツ車の魅力は何だろう?「質実剛健な造りと安心感のある乗り味」とよく言われているが、その魅力を成り立たせている要素のひとつに強い制動力を持ったブレーキが挙げられる。今回の取材車であるフォルクスワーゲン・パサート ヴァリアントもそんな一台だ。ラゲッジスペースに荷物をギューギューに詰め、制限速度無制限のアウトバーンで200km/hを超える猛スピードで走ることを想定されたクオリティであり、日本ではオーバークオリティーとも言えそうな強大なストッピングパワーを備えている。危険を回避する最新の電子デバイスも大事だが、「しっかり止まる」ドイツ車のブレーキは重要なアイテムだ。

 

心強いブレーキを搭載しているドイツ車ではあるが、”洗車”をテーマに考えてみるとお世辞にも優秀とは言えない。ボディーは綺麗なのにホイールが真っ黒で、全体的に薄汚れた印象のドイツ車を見る機会が多々ある。洗車好きの日本人がドイツ車オーナーになると、ブレーキダスト量の多さに驚くことだろう。

 

ディスクブレーキは、タイヤと共に回転する円盤状のブレーキディスクをブレーキパッドで押さえる時の摩擦により制動するが、日本車のブレーキは主にパッドだけ擦り減らす造りとなっているのに対して、ドイツ車のブレーキはパッドだけでなくディスクも容赦なく擦り減らすようにして制動力を高めている場合が多い。ここが日本車とドイツ車との大きな違いだ。制動力だけでなくランニングコストなどトータルで考えられた日本車に対し、ドイツ車は何よりも「止まる」ことが第一義だと考えられているのだ。ブレーキダストでホイールが汚れることなど重要視されていない。ブレーキをかけるたびにパッドはもちろん、スチール製のディスクも削られて鉄粉が飛散するから、当然のごとくホイールは直ぐに真っ黒になる。パサートのホイールの場合、市街地を100kmも走ればうっすらと汚れ始め、4~500km走れば目を覆いたくなるほど真っ黒になる。月に1,000km走るとしたら、愛車を綺麗に維持するためには1か月に2回以上洗車しなければならない。「強い制動力はそのままに、ダスト量が少なくなるブレーキはないものか?」これは多くのドイツ車オーナーの願いだろう。

 

ブレーキディスク&パッドを交換
作業はディーラーに依頼

 

前置きが長くなってしまったが、久々の長期レポートである。今回はブレーキディスクとブレーキパッドの両方を交換する。パサートは初度登録から9年目を数え、走行距離が8万kmを超えた、言わばブレーキ変えごろの車である。前回は4万km走行後に、ブレーキパッドのみの交換をディーラーで実施した。

IMG_0991aディーラーは純正品以外取り扱わないイメージだが、アフターパーツの装着にも相談に乗ってくれる場合も少なくない。

 

ディーラーにあるスキャンツールを通さないとブレーキ交換が出来ない車が増えてきたが、9年落ちのパサートも例外ではなく、自分ではメンテナンス出来ない。一般的にはディーラーで作業をしてもらうことになるが、純正品よりもダスト量の少ないブレーキを選びたい。そんな悩みをサービスフロントに相談してみると、純正以外のパーツも装着できるとの嬉しい答えを貰った。それならば制動力を落とさずに純正品とほぼ同じ予算で、よりもダスト量の少ないアフターパーツを装着しようと考えた。その結果、ブレーキディスクにはディクセルの”PD type”、ブレーキパッドには同じくディクセルの”M type”をチョイスした。
選択した理由は3つある。
①純正品と同等の制動力
純正品の持つブレーキ性能は損なわれない。

 

②純正品同等の価格
“M type”パッドは純正品よりも高価だが、”PD type”ディスクは純正品よりもリーズナブルなため、ディスクとパッドの合計金額は純正品とほぼ同じ。

 

③純正品よりもダストの発生量が少ない
“M type”パッドはディスクへの攻撃が少なく、ダストの素となる鉄粉の発生を抑えられる。

1225brakeディクセルのブレーキディスク(左)とブレーキパッド(右)。ストリート向けからサーキット仕様まで、使用目的に合わせたブレーキパーツを数多く取り揃えている。

 

berore交換前のリアブレーキ(左)。ブレーキディスクの表面には無数のスジ状の溝があり、大きく削り取られたエッジ(赤丸部分)が立っていた(右)。

 

IMG_1006a新品のブレーキディスク&パッド。当然だがブレーキディスクにはスジもエッジもない。

 

ブレーキディスクとパッドを交換するにあたり、ブレーキフルードも交換した。効果を体感しづらいパーツであるかも知れないが、劣化したブレーキフルードではブレーキ本来の性能を発揮出来ないばかりか、フルードの沸騰によりブレーキの効きが弱くなる「ベーパーロック現象」を引き起こす恐れがある。一般的には車検ごとの交換が推奨されているが、折角ディクセルのブレーキに変えるのだから、こちらもディクセル製に統一した。ちなみに去年11月の車検時に、ブレーキフルードは交換済みであった。

IMG_1014aブレーキフルードの交換は二人作業で行っていた。ブレーキ配管に空気が入らないよう、一人がブレーキペダルを踏み、もう一人が古いフルードおよび気泡を抜く工程を繰り返して行う。

 

IMG_1019aDIXCEL BRAKE FLUID DOT 5.1。交換履歴を記録するステッカーが同梱されている。安全のため、2年に一度は全量交換(1~1.5L)しよう。

 

交換作業が完了
気になるブレーキダスト量は?

 

作業を終えた車を見て、「まるで新車のようだ…」と大満足。ブレーキの露出が多いスポークタイプのホイールを装着しているせいもあるが、通常の洗車では洗えないブレーキがピカピカだと、車全体が若返って見える。

 

走り始めるとすぐに”M type”の良さを体感できた。これまでは少しでもラフなブレーキングをすると車体が「ガックン」と前のめりになったが、「ググッ」と優しく減速する。ブレーキの効き具合の話ではなく、ブレーキペダル踏み始めの初期制動が穏やかで、その後しっかりとブレーキが効いてくる。もちろん、ブレーキ鳴きなどは発生していない。ブレーキが車に馴染む1,000kmくらいまでは慣らしが必要なので、穏やかなブレーキングに徹するが、慣らし運転が終わったあとが楽しみだ。もっとも、今は冬用のスタッドレスタイヤなので、夏用タイヤに変えるとどう感じるだろう。

 

気になるブレーキダスト量は、明らかに低減した。市街地を約200km走行しても、ダストの付着は全く気にならないレベルにある。ホイールが汚れにくいと車が綺麗に見えるので、これまでより洗車の回数が減る。水道代の節約にもなり、これは一石二鳥だ。

 

四駆には無縁だと思われそうな本稿だが、重量級四駆にとっても、ダストが抑えられ、効きが良くなると言う意味では一考の価値ありだ。次回は1,000kmの慣らし運転を終えて夏タイヤに履き替えた頃、ブレーキダスト量やブレーキの効き具合についてレポートしようと思う。

IMG_1150a2007年式 フォルクスワーゲン・パサート ヴァリアント V6 4MOTION

 

文/写真:浅野 修司

 

【パーツ最前線】DIXCEL BRAKE DISC & BRAKE PAD Vol.2