【催事】SUBARUテックツアー2016:スバル歴史講座

2016.10.22

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スバル100年
クルマづくりの軌跡をたどる

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来る2017年は、富士重工の前身である航空機メーカー:中島飛行機(1917-1945)の創業100年にあたる年であり、このタイミングで現・富士重工業株式会社から株式会社SUBARUへの社名変更が決定していることは既にご存知の通りだ。

 

そして、これを機に、よりスバルというメーカーを知って欲しい…ということで、今年度よりメディア向けに企画、開催されているのが「SUBARUテックツアー2016〜際立つ安心と愉しさへ〜」である。

 

 

今回はその第2弾ということで、「スバル歴史講座」がメインテーマ。スバル黎明期から現在に至るまでの軌跡や開発秘話が、エンジニアによる解説や座談会形式で披露され、その過程で世に送り出された数々のヒストリックカー試乗会も行われた。

 

国産クロスカントリー4×4の元祖的モデルが三菱・ジープ、トヨタ・ランドクルーザー、日産・パトロール、スズキ・ジムニーであれば、乗用車4×4部門はスバル4WDであることは誰もが認めるところ。そんなスバル・レオーネ4WDにも試乗できるとあって、当取材班も栃木県佐野市にあるスバル研究実験センター(SKC)に出かけた。

 

 

歴史講座が行われたのは、このSKC内に設置されている「技術資料館」。稀少な歴代スバル車はもちろん、水平対向の変遷が分かるエンジン単体やスクーターのラビット・シリーズ等、資料価値の高い展示物がズラリと並び、レストア完成を待つ車両のバックヤードも含めて、スバルファンならずともクルマ好きにはテンション急上昇必至のミュージアムである。

1022image21022image31022image4スバル研究実験センター内の技術資料館

 

 

新車開発に不可欠な実験施設、つまりテストコースの敷地内にあるため一般公開されていないのが残念だが、一般ユーザー向けにも各種イベントが企画開催されており、限られた範囲ではあるが入場できる機会もある施設となっている。

 

ここで、開発陣によるプラットフォームの変遷をテーマにした座談会形式のフリートークセッションや、スバルのお家芸であるボクサーエンジンの歴史、歴代モデル等に関する解説が行われた。

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フリートークセッションは、実験部門のOBと現在の部門長、新型インプレッサの現プロジェクトマネージャーといった顔ぶれ。長きに渡って開発に携わる中、それぞれの世代や立場、そして“スバル車はこうあるべき”という信念がクルマ作りを支えてきた経緯が非常に興味深く、また、「小さなブランドだからこそ、守り、大切にしていること」がよく伝わってくるトークセッションだった。

 

 エンジンや歴代モデルに関しては、このあと試乗プログラムが組まれており、この講座の内容を実際に体感できたので、これはこれで実に興味深く、かつ新鮮な経験となった。

 

 

「歴史講座」終了後は、テストコースに移動してのヒストリック・スバル&プラットフォーム進化体験試乗会。旧車に関しては“雨天の場合、試乗は不可”という貴重な車両も含まれており天候の悪化が懸念されたが、当日は何とかセーフ。“テントウ虫”の愛称でお馴染みのスバル360セダン(1968年式)、史上初のFF方式+水平対向エンジンを採用したスバル1000(1967年式)、etc…。

1022image6スバル360セダン

 

 

1022image7スバル1000

 

 

1022image8レオーネクーペ1400RX

 

 

そして4×4では、2代目レオーネ・ツーリングワゴン4WD(1984年)やスバル史上唯一のリトラクタブル・ヘッドランプ採用のアルシオーネ2.7VX(1989年式)、同SVX(1991年式)等に試乗した。

 

どの車両もレベルの高いレストアが施され、旧車とは思えないほど快調な走りを見せる。中でも、前述のトークセッションで“当時の開発陣が、採算度外視でやりたいことを全てやった”と話題に上ったスバル1000の軽快な加速とハンドリング、ステアリングの軽さ、乗り心地の良さには、全ての参加者が驚きと賞賛の声を上げていた。

1022image9アルシオーネ 2.7VX

 

 

1022image10アルシオーネ SVX

 

 

1022image11レオーネ・ツーリングワゴン4WD

 

 

失敗作と酷評されたアルシオーネも、当時は、ボンネット高を低く抑えられるという水平対向エンジンのメリットを活かし、CD値=0.29という、当時としては驚異の空力性能を備えた意欲作だ。スバルらしからぬスタイルも不評だったが、実は開発者のコダワリが強く反映された、ある意味、非常にスバルらしいモデルだったのだ。

 

 

今回の「歴史講座」では、開発陣の証言や歴史的な資料と考察、そして当時のモデルに実際に試乗することによって“スバルの今がどのように育まれてきたのか”に、触れることができた。そしてそこには、スバルの「人を中心とした、安心と愉しさのクルマづくり」 というDNAの存在をはっきりと確認することができたのだ。

 

プラットフォームの共用やデザインの画一化等によって、お国柄やメーカー、ブランドの個性、あるいは存在感が希薄になりつつある昨今、スバルのような個性を持ったブランドは貴重な存在だ。SUBARUテックツアーの続編にも大いに期待したい。

1022image12ヒストリックカーの他、プラットフォームの変遷を体感するための試乗車両も用意された。左からレオーネ・ツーリングワゴン4WD、初代レガシィ、現行型インプレッサ、次期インプレッサ。

 

 

文/内藤知己 
写真/宮島秀樹