【紹介/試走】JEEP GRAND CHEROKEE SUMMIT

2016.4.8

    • 四輪駆動車
    • Jeep

伝統と革新のバランスが心地よい

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2016040802 試乗車は5.6リッターV8エンジンを積む「サミット」。その名の通り、ジープブランドの頂点だ。この場合の頂点とは「オフロードの…」という修飾を(脳内で勝手に)付けたくなる。というのも、最上級グレードには「STR8」があるからで、こちらのエンジンは同じV8でも6.4リッターと更に大きく、最高出力もサミットが352PSであるのに対して468PSとなる。ただし、ローレンジを備えていないなどキャラクターはかなりストリート寄りなのだ。

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 全長4,880㎜、全幅1,945㎜で、スクエアなフォルムのグランドチェロキーのボディーは2,380㎏あるが、V8エンジンがゆとりさえ感じさせながら加速させる。本来なら空荷ではなく、アメリカン・キャンピングトレーラーの代名詞である大型のエアストリームあたりを牽引して力強さを確かめるのが妥当かもしれない。それくらい余裕がある。多段化されたATは8速。7速以上がオーバードライブとなるギアレシオで、変速ショックは探さないと見つからないレベル。実に洗練されている。メルセデスと合併して世界戦略を目指した時代の影響は、ユーザー目線で見れば悪くない。いや、かなりいい。

 

 洗練された…という表現はポジティブだが、人によっては味わい、ちょっとしたアク、個性が感じられないということにもなる。そういった寂しさを忘れさせてくれるのも、さすがJeep。ご安心いただきたい。フラッグシップモデルであってもオフロード走行性能を担保することにかけては、前のめりの姿勢を見せてくれる。「クォドラリフト」サスペンションシステムは、エアサスペンションを基本とするもので、深い雪や泥、轍などを越えるときは、通常より車高を33mmアップさせることができる。コンソールのスイッチを操作するとみるみる車高が上がる。思ったより待たされない。たった33mmと思われるかもしれないが、オフローディングにおいて、この1インチ(25.4mm)強のクリアランスの差はデカい。ギャップを越えられるか、越えられないかの境目になることもあるし、フロントバンパーを引っ掛けて傷つけるか傷つけないかの瀬戸際にもなる。さすがにグランドチェロキーでムキになって走破することなどないだろうが、「無傷で帰ってこられる」可能性が大幅に高まるという性能は対価に値する。その一方で、荷物を下ろすときは車高を40mm下げられる。お年寄りや子供が乗り降りするときに、ちょっとした気配りを見せることも可能だ。

 

 グランドチェロキー・サミットは乗り込む前と、乗った後の印象にギャップがあるSUVだ。運転席から下り、離れたところからガッシリとした体躯を眺めると、7つの縦スロットを持つ伝統のグリルが、乗る前よりも一層頼もしいシンボルに感じられる。今や個性のあるSUVが増えてモデル選びは混迷を極める時代になったものの、Jeepブランドは伝統と革新のバランスが心地よい。グランドチェロキーは、それが最もハッキリと感じられるモデルだ。

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【エンジン】2016040805V8は古典的なOHVであり、高回転を狙っていない。最高出力は352PS、最大トルクは53.0㎏m。オフローディングと同様にトーイング(牽引)も得意とする特性だ。

 

 

【インパネ】2016040806見やすく、扱いやすい、実用本位のデザイン。化粧パネルなどはプレミアム路線を逸していないところが寂しいと言えば、寂しい。もう少し無骨な感じを求めたくなるのは考え方が古いのかも。

 

 

【セレクテレイン&クォドラリフトサスペンション】2016040807走行モード選択や車高調整などはフロアコンソールにあるスイッチで操作する。Jeep独自の電子制御4×4マネージメント機構であるセレクテレインは、サンド、マッド、オート、スノー、ロックの5つの走行モードを備える。

 

 

【シート】20160408seatシートは大きく、ドップリと体重を預けられる。レザーシートなど、インテリアの印象はかなりシック。大人の装いだ。

 

 

【カーゴ】20160408rearカーゴルームの容量は約782Lあるという。乗車定員の5人分の荷物なら余裕で飲み込んでくれそうだ。リアシートを倒すと、最大1,554Lに容量が拡大する。

 

【全国メーカー希望小売価格】
Jeep グランドチェロキー・サミット ¥7,365,600

 

文/中村文大 写真/山岡和正