【紹介/試走】SUZUKI JIMNY 64 XC/前編

2018.8.9

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ライバル不在

発売から早1か月
既に発表前から吹き荒れていた“ジムニー旋風”は
予測どおり勢力を増す一方だ。
今回は、そんな中行われたメーカー主催による試乗会からのレポートをお届けしよう。

文/内藤知己 写真/佐久間清人

もはや敵なし!?
ジムニーフィーバー勢力拡大中

ジムニーファンのみならず、多くの4×4ファンたちの期待を一身に背負い、20年ぶりのモデルチェンジを果たしたスズキ・ジムニー&シエラ。
 
7月5日の発売と同時に数多くの試乗ビデオが動画投稿サイトにアップされ、早くも排気系や脚まわりのチューニングを施したカスタム車を紹介する専門ショップの映像も見られるなど、新型ジムニー熱の加速はとどまることを知らない。
 
そんな中、メディア向けのオフロード走行をメインとする試乗会が開催され、新型ジムニーの走行性能をステージ別に体験することができたので、今回はその試走レポートという形でJB64W /ジムニー660(5速MT車)の走りをご紹介したい。
 
なお、ラインナップ(グレード構成)やその仕様の概要等に関しては、前回までの記事(※1)をチェックして頂くとして、今回の試乗車両は、オンロード/オフロード試走ともジムニー660の最上級グレードXC(5速MT車)を選択した。

 

感動のオンロード走行
フレームがサスを進化させた!?

まずはオンロード試走ということで、新色キネティックイエローのXCに乗車。
遠目に見てもボディー色だけで車種が分かるクルマ(例えば、モモタロウピンクのクラウン、javaグリーンのBMW3シリーズ等)はいくつか思い当たるが、強烈な個性を放つこの色も間違いなくその中のひとつだ。
 
エンジンは、他のスズキ車ではお馴染みのR06A型直3-DOHCガソリンターボ。
最高出力47kW/6,000rpm、最大トルク96Nm/3,500rpmは、従来のK6A型に較べて最大トルク値をやや低めに設定(103→96Nm)しているが、低中回転域の扱いやすさを重視したセッティングだ。
 

先代JB23より最終減速比が高速化(4.3→3.818)された分MT変速比が全体的に低速化され、結果、総減速比で見ると1〜3速が低速化、4〜5速は高速化されており、これも低中回転域を重視しつつ、高速巡航では回転を下げて燃費向上を…というセッティングである。
 
この1〜3速のギア比の低速化により、加速フィーリングの大幅向上を期待したが、電子制御スロットルの採用等により急加速時なども状況によっては効率の良い分マイルドに感じる制御が行われるためか、いわゆる“アグレッシブな加速”にはならない。ごくジェントルでスムースな加速フィーリングと言える。とは言え、各ギアで回転制限がかかる7,000rpmまでストレスなく一気に吹け上がるフィーリングは健在だ。
 
何より、シフトフィーリングが格段に改善され、歴代ジムニーのMT車では常に指摘されていた振動や節度感不足は、この新型で全て解決したと言ってかまわないだろう。
 
前後3リンク式リジッドアクスル+コイルという形式を踏襲したサスは、スプリングのレートやダンパーの減衰力こそ見直されているとは言え、コントロールアーム類やそのレイアウトに大幅な変更は見られない。よって、サス性能自体にさほど大きな
 
進化は期待できない…というのが、試乗前の正直な印象だった。
 
しかし、これが嬉しい大誤算で、先代、あるいはそれ以前のジムニーに乗り慣れたドライバーであれば、この乗り心地の良さはちょっとした衝撃かも知れない。
 
これはサス自体の性能が向上したと言うより、クロスメンバーの追加等によって1.5倍のねじり剛性を確保したという強化ラダーフレームの効果が大きいのではないだろうか。
 
懸架装置がマウントされるフレームの剛性が上がったことによって、サスが本来の実力を発揮している…フレームが捩れない分、サスが的確に動きを安定している感覚である。
 


ワインディング路では、連続するコーナーを走り抜けていく際の“人馬一体”感が非常に心地良い。ステア操作に対する車体の追従にロスがないと言うか、従来型で感じることが多かった「ステア操作からひと呼吸遅れてボディーがついてくる…」というような感覚が大幅に改善されているのだ。
 
タイトコーナーでは、従来同様大きめのローリングは起きるが、すぐにシャキッと収束し、安定感は格段に向上している。
 
また、フレームだけでなくボディー単体の剛性も上がっているうえに、横方向には硬く、縦方向に柔軟な特性を持つという大型化されたボディーマウントゴムの採用もあって、ソフトな乗り心地とシッカリ感が良いバランスで共存するシャーシに仕上がっている。
 
巷で見かけるさまざまなメディアの評価の中には「ジムニーが高級車の乗り心地に」的な表現も散見できる。さすがに、そこまでは…とも感じるが、ワンランク上の乗り心地になったことは事実である。
 
なお、オーバースピードでタイトコーナーに進入すると、トラクションが希薄になった内側輪をセンサーが即座に感知し、ESPが働いてブレーキ制御とエンジン出力制御がかかるので、ジムニーではお馴染みのインリフト(内側のタイヤが浮き上がる)現象は起きにくくなった。つまり、ジムニー特有とも言うべき横転のリスクも大幅に減っている、ということだ。
 

 

※1:記事「4代目ジムニー堂々のデビュー」へはコチラから