【BACKWOODS】電子書籍編集人 宮島秀樹

2016.12.3

    • コラム
    • スバル

取材用サブカメラを久々に新調した。手持ちレンズや操作性、そして予算などを考慮すると、購入できるカメラはほぼ数製品に限られてしまうのだが、それでもいろいろなメーカーの製品カタログを見て、あーでもないこーでもないとスペックを比べたり、思い切ってすべて買い換えようかと悩んでみたりして過ごす時間は結構楽しいものである。そうやって各メーカーの製品カタログを集めてみて感じたのは情報量の多さである。最近のデジタル一眼は、オートフォーカス方式や測光モード、撮影モード、画像エフェクトなどが非常に多彩になっており、それらの詳細な説明はもちろん、中級機以上になると、センサーやシャッターの形式、連写速度や枚数などのスペックに加え、ボディーの構造やシャッターの耐久性などがしっかり説明されている。カメラは上級者になればなるほどこだわりが強い人が多くなるように感じるが、ほとんどのデジタル一眼のカタログには、そうしたユーザーのニーズにすべて応えられる情報がしっかり網羅されているように思う。

 

一方、少々物足りなさを感じるのが、最近のクルマのカタログである。ほとんどのカタログがエクステリアやインテリア、ユーティリティー、先進安全性の説明がメインになっており、メカ的な解説やスペックの表記は、諸元表を除けば、載っていてもせいぜいエンジンぐらいのものである。最近4×4モデルが設定されている新型ミニバンの試乗会に行ってきたが、そこで配られたカタログにもプレスリリースにも、どんな4×4システムが採用されているのか説明が一切載っていない。パートタイム式なのかフルタイム式なのかさえも分からないのだ。そしてこれは、たとえ4×4モデルがメインとなるSUVであっても同様の場合がある。4×4システムの説明は、筆者が四駆専門誌の編集者だから知りたい瑣末な情報なのか? 一般のユーザーにとっては、あまり興味のない情報なのだろうか?

 

4×4システムには様々な方式がある。大まかにはパートタイム式とフルタイム式に分けられるが(電気式もある)、フルタイム式もセンターデフを採用した常時4×4状態で走行する本当のフルタイム式と、通常では4×2状態で走り、走行状況に応じ、ビスカスカップリングなどで前後トルクを配分するトルクオンディマンド式がある。トルクオンディマンド式は、本来はサムタイム式とでも呼ぶべき4×4システムであり、フルタイム式とは区別すべきものだと思う。いくら電子制御が高度に進化して駆動の切り替えや各輪へのトルク配分が俊敏かつスムーズになっているとしても、それぞれの駆動方式によって、やはりドライビングの特性が異なるからだ。しかし、カタログにはフルタイム式としか書いていない場合が多く、4×4システムについて詳しく知りたい筆者のようなユーザーにとってはストレスとなる。

 

さらにややこしいのが、各メーカーが自社モデルに搭載している4×4システムを様々な名称で呼んでいることだ。最近のSUVは、通常4×2(FF)で走るトルクオンディマンド式が多いのだが、カタログや取扱説明書を読んで、前後駆動配分を100:0〜50:50に自動制御するとか、チェーンは前輪に巻いてください…などといった説明から、このクルマはどうやらFFベースのトルクオンディマンド式らしいと判断しなければならない。逆に言えば、そういう文言から、これはどんな4×4システムを採用したクルマであるか判断できる人は、よほどのクルマ好きであるということになるだろう。

 

クルマはデジカメよりもはるかに高価なものであり、何より常に事故の危険が伴う精密機械である。そんなクルマのカタログの内容が “薄い”と感じられてしまうのは筆者だけであろうか。特に乗用車系モデルや最近のSUVには、搭載している4×4システムについて詳細に解説しているカタログ(ウェブを含めて)は多くない。本格的なクルマ好きをターゲットとしていないモデルだから、機能の解説もそれなりでいいやということでは本末転倒であると思う。四駆だから雪道や未舗装路で何となく頼りになりそうだと購入を検討しているビギナーやライトユーザーに向けてこそ、搭載する4×4システムの基本的なメカニズムや特性、そしてメリットだけでなくデメリットも、きちんと解説するべきだと思う。

2016052006スバルは、自社の4×4システムを「AWD」と称して他社の4×4とは区別し、そのシステムの詳細をカタログで解説している。AWD(全輪駆動)自体は世界的に使われている言葉だが、スバルは他社のトルクオンディマンド式とは異なることを強調するためにAWDを謳っているのだ。