【オフロード試走】 SUZUKI HUSTLER vs DAIHATSU CAST ACTIVA

2016.7.16

  • 20160715hc1
    • 四輪駆動車
    • スズキ
  • スズキ・ハスラーが人気だ。今や首都圏をクルマで移動中、「ハスラーに出会わない日はない」と言っても過言ではないほど、そのファニーな顔はお馴染みになってきている。


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人気の軽4WDワゴンをオフロードで乗り較べてみた!

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“一歩踏み込んだ”フィールドで
気になるライバルのオフロード対決

スズキ・ハスラーが人気だ。今や首都圏をクルマで移動中、「ハスラーに出会わない日はない」と言っても過言ではないほど、そのファニーな顔はお馴染みになってきている。

 

そして、そんなハスラーを話題にするたびに引き合いに出されるモデルがある。ダイハツのキャストアクティバだ。両者とも4WD仕様をラインナップし、いわゆるクロカン4×4という位置付けではないものの、オフロードでも安心…と積極的にアピールされているクルマだ。オフロードの急勾配を安全に下るためのヒルディセントコントロール機構や、低μ路や地形によるタイヤの空転を抑え、最適な駆動力配分を行う電子制御式トラクションコントロール機構を装備する、オフロード性能にもキチンと目が向けられたモデルと言える。
2016071504当ウェブサイトにも、ことあるごとに「どっちがオフロードで強いの?」という読者の声が寄せられており、それならば…ということで、今回のオフロード対決試走が企画されるに至った。もちろん両者とも本格的なクロスカントリー走行を目的としたモデルではないので、今回の試走はあくまでも“舗装路を外れて自然に一歩踏み込んだ辺り”を想定した。クロカンと言うほどではないが、セダンや4×2ではちょいと入り込むのを躊躇する…といった程度のフィールドとお考え頂きたい。
2016071505なお試乗車は、ハスラーが最上級グレードの「Xターボ」、キャストアクティバ(以下キャスト)は、標準グレードの「X“SAⅡ”」で、いずれも4×4、トランスミッションはCVTだが、エンジンはハスラーがターボ付き、キャストはNA(自然吸気)つまりノンターボ車である。比較という意味では、キャストの試乗車も最上級グレードである「Gターボ“SAⅡ”」が理想的だが、キャストの場合はノンターボ車の方が最終減速比がより低速に設定されており、状況によっては有利に働くケースもあると考えられるだろう。

エンジン以外のスペックはほぼ同等
オフロードを楽しむ素質充分な2台

試走に入る前に、まずはスペック等の簡単な比較から。全長と全幅は軽自動車枠の最大限ということで両者同一。全高はハスラーが35mm高く、ホイールベースはキャストが30mm長い。最小回転半径はハスラーが0.1 m小さい。

 

車重はハスラー870kg、キャスト890kg。ちなみにキャストはグレードにかかわらず4×4車はすべてこの車重で、ハスラー(4×4)は標準グレードの5速MT車だと800kgまで軽くなる。
201607150620160715072016071508写真ではルーフやバンパーのカラーリングによる錯覚でハスラーのルーフが低く、下まわりのクリアランスが大きく見えるが、実際は見た目の印象ほど両者に大きな差はない。
20160715hd20160715cd運転席の着座姿勢は写真が示すとおり、両者ともシートリフター(手動)により座面高をかなり高く設定でき、直近の路面状況を目視しやすいアップライトなドライビングポジション設定が可能。写真は左が座面とハンドルの最高位置で、右は最低位置。ウインドシールドの傾斜角度の違いにより、ハスラーはこのようなアップライトポジションを取ったときの眼前の圧迫感がキャストに較べて少なく、また夏は日射しの射し込み量も少ないため暑くない…というオマケも付く。
20160715ht20160715ct対地障害角、つまりアプローチアングル、ディパーチャーアングルについては数値で見るよりも実際の状態を見た方が分かりやすい…ということで、左がフロント(アプローチアングル)、右がリア(ディパーチャーアングル)。フロントは両者ほぼ互角だが、リアはキャストの方がマフラーの突出量も少なく優勢。ちなみに標準タイヤサイズは、両者同一の165/60R15となっている。
20150715hc最低地上高は両者同一の175mmで、おかしなことに両者とも4×2車の方が180mmと数値が大きい。これは4×4と4×2では計測ポイントが異なるためで、4×4の最低地上高はリアデフ下の高さを指すのに対し、リアデフのない4×2の最低地上高はフロントバンパー下の高さを指すためだ。

 

写真は、前後軸の中心点(ホイールベースの中心)の地上高を計測しているところ。それぞれサイドシルの形状やRが異なるので一概に優劣は付けられないが、キャストの方がややドアシル位置が高く、干渉しにくい形状となっている。

トラクションコントロールがキメ手
セオリーどおりの走りで実力を発揮

さて、ここからは実際のオフロード試走である。前述のように、本格クロスカントリーとは言えないけれど、セダンや4×2ではちょっと入り込む気にならない程度で、せっかくの4×4のメリットを活かせる、そんなレベルのフィールドだ。

 

まずは、緩くうねりのある地形。モーグルと呼ぶには凹凸の高低差が小さいが、走行ラインを考えて走らないとこの手のワゴンの脚ではすぐにタイヤが浮いて空転、失速してしまう地形である。わざと対角線上のタイヤが空転する走行ラインを走り較べてみる。

2016071519ハスラーはターボ付きエンジン+一定の時間電気モーターのアシストが少々加わる「マイルドハイブリッド」を採用しているためか、ターボの恩恵の範囲外である低回転域でもけっこう太いトルクを感じる。ただし、本来は発進加速時や追い越し加速時にモーターアシストがかかるシステムなので、このような低回転時でもアシストが効いているかどうかは不明だ。

 

ゆっくり進み、やがて左前輪が浮き気味となり空転。かまわずアクセル一定でトロトロと回し続けていると、トラクションコントロールが効いてジワジワ前進し、今度は右後輪が浮いて空転(写真)。かまわずアクセル一定で回し続けると、ひと呼吸置いてトラクションコントロールが効き、再びジワジワ前進して無事モーグル脱出。
2016071520基本的にはキャストも同様の挙動で、同じようにこの地形をクリアしたが、アクセルの踏み込み量はハスラーよりも多めになる。「グリップサポート制御」と呼ばれるトラクションコントロール機能は、ごく自然に機能し、「今効き始めました!」という境目を感じない…そんな効き方。

 

一方のハスラーには、インパネのセンターにグリップコントロールスイッチがあり、これをONにするとトラクションコントロールの反応、つまり、タイヤの空転からグリップコントロール作動までのレスポンスがやや早くなる。

 

結果としては両者同じようにこのモーグルをクリアできるのだが、トラクションコントロールの効き方の特性もあってか、ハスラーの方がやや気持ちに余裕を持って走破できる印象だった。
なお、この程度の地形のうねりなら、「凹みは跨ぎ、突起はタイヤを乗せる」「段差にはナナメにアプローチ」というセオリーどおりのライン取りを行えば、両者とも充分な対地障害角を備えていると言って良いだろう。

 

また、両者とも腹下がフラットで突起物もなく、段差や隆起を乗り越えるのに都合は良いが、ホイールベースの長さは要注意だ。
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フラットならヒルクライムもOK
活躍の場が雪道だけでは勿体ない!

その4×4が「オフロード走行を視野に入れているか否か」を判断するひとつの基準として「ヒルディセントコントロールの有無」が挙げられる。滑りやすい急坂を安全に下るために開発されたこの機構は、そもそも副変速機のLoレンジや、エクストラLoのような特別な低速ギアに代わるシステムとして登場した。つまり、強力なエンジンブレーキが使えない代わりに、電子制御でタイヤをロックさせずにブレーキングできる仕掛けであり、オフロードや雪道以外で使用することはまずないシステムと言って良い。というわけで、この2台を急勾配に連れてきた。フラットなのでサスペンションのストローク不足を気にしないで済む傾斜角20度ほどのスロープだ。
20160715hc1ヒルディセントコントロールスイッチをオンにして、作動ランプの点灯を確認(点滅時は作動準備中)し、ヨーイドン!で下ってみる。短いスロープなので、降坂時間に差は出なかったが、両者とも安心して下れる速度だ。制動のタイミングやポンピングの間隔には違いがあるが、特に問題なし。強いて言えば、車内で聞こえる作動音に関しては、ハスラーのほうがやや静かだった。ちなみに後退時でも有効であり、タイヤのグリップが期待できないにもかかわらず、安心してバックダウンすることができた。
20160715252016071526同じスロープを今度は登ってみたが、これはさすがにエンジンパワーの差でハスラーが圧倒的に余裕の登坂。できれば、ほぼ同スペックを持つターボ車同士で較べて、ハスラーのモーターアシストがオフロードでどの程度戦力になるのかを試してみたいものだ。

 

ジムニーのようなクロカン4×4とはまた違って、「ハスラーなのに行けた! キャストでもココまで来られた!」という感動や楽しさは間違いなくある…それが今回の試走の感想だ。わざわざこれでオフロード走らなくても…というご意見もあろうが、雪道を安全に走るだけの4×4なんて、ちょっともったいない。
冒頭でもふれたが、たとえば川原でのキャンプやBBQで、他のセダンや4×2よりもう一歩奥に踏み込めるポテンシャルは、やはり4×4オーナーならではの悦びだろう。

【細部写真】
20160715272016071528吸気口の位置も一応チェック。ハスラーは正面、キャストはヘッドランプ後方の側面から吸気。水たまりに飛び込んだとき、水を吸い込みにくいキャストは安心。

 

 

20160715292016071530ハスラーのインパネ。エアコン操作部の下にグリップコントロールとヒルディセントコントロールのスイッチを装備。

 

 

20160715312016071532キャストのインパネ。ハンドルの右脇にヒルディセントコントロールスイッチを装備。グリップサポート制御は常時待機状態で、作動スイッチはない。

 

 

20160715hkオフロードでなくても牽引ポイントは気になる。ハスラーには基本的に牽引のための専用フックは前後ともなく、輸送時固定のためのタイダウン用フックのみ装備。いずれもそのまま牽引ロープを使えばバンパーに干渉する。

 

 

20160715ckキャストのフロントには取り外し可能な牽引用フックが装備される。ただし、スタック救出等で勢いを付けて引けば、強度に保証はないだろう。リアはハスラー同様のタイダウン用フックのみ。

 

 

20160715372016071538少々極端だが、ボディーが思い切りねじられる地形でドア類の開閉をチェック。両者全く開閉に支障なし…という高剛性ボディーに感服。

 

 

20160715hsハスラーのフロントサス(左)はマクファーソンストラット式、リアサス(右)は3リンク式リジッドアクスル+コイル。

 

 

20160715csキャストのフロントサス(左)もマクファーソンストラット式、リアサス(右)も3リンク式リジッドアクスル+コイル。

 

 

文/内藤知己
写真/佐久間清人