【紹介/特別編】MERCEDES-BENZ G350d

2016.8.23

  • 意外に難題!? Gクラスのトレーラー牽引
    • 四輪駆動車
    • Mercedes Benz
  • 先日、日本のミリタリービークル研究の第一人者である白石清氏が所有するメルセデス・ベンツGクラスの現行ディーゼルモデル、G350dの試乗レポートをお届けしたが、このGにはウルトラライトプレーン(マイクロライトエアクラフト、超軽量動力機とも言う)やハンティングを趣味とするオーナーらしいパーツが装着されている。


意外に難題!? Gクラスのトレーラー牽引

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先日、日本のミリタリービークル研究の第一人者である白石清氏が所有するメルセデス・ベンツGクラスの現行ディーゼルモデル、G350dの試乗レポートをお届けしたが、このGにはウルトラライトプレーン(マイクロライトエアクラフト、超軽量動力機とも言う)やハンティングを趣味とするオーナーらしいパーツが装着されている。それはヒッチメンバーやレシーバーヒッチなどの牽引アイテムだ。ウルトラライトプレーンや獲物を載せるライトトレーラーを牽引するために必須となるパーツだが、その装着にはかなり苦労させられたという。そこで今回は通常の試乗記事とは趣を変えて、白石氏のGクラスのトレーラー牽引についてレポートしたい。

 

欧米では、4×4やSUVに限らず自家用車でボートトレーラーやキャンピングトレーラーを牽引することはごく一般的だが、日本では車検制度や法規の煩雑さ、そして車検代、保険代、高速道路料金などで維持費がかさむこともあってトレーラーを牽引する個人ユーザーは少ない。そんな背景もあって、多くの国産車にはヒッチメンバーをはじめ牽引のための純正パーツがほとんど用意されていない。また、ヒッチメンバーや電源カプラーがはじめから備えられている欧米のSUVであっても、日本のディーラーでは対応パーツを用意していなかったり、牽引のための情報や整備技術を持っていないこともあるようである。つまり、日本でトレーラーを牽引するには、トレーラーメーカーや販売店に牽引パーツの装着を依頼するか、知識と技術がある個人が自己責任で装着しなければならない場合が多い(ディーラーが専門業者に依頼することも多いようだ)。

 

 

このGも同様で、白石氏がまずGを購入したディーラーでトレーラー牽引のためのヒッチメンバーを装着したいと相談したところ、純正パーツの情報をはじめよく分からないとの回答だったという。実は、Gには日本仕様にもリアバンパーの裏側、リアメンバーのところにEU規格の13ピンの電源コネクターが純正装備されており、ヒッチメンバーを装着して配線すればトレーラーが牽引できるようになっている。しかし、ディーラーでは、どの端子がどの電気系統に対応しているか分からないというのだ。そこで、白石氏は自分でEU規格コネクターの情報を入手してから、テスターで信号系統を細かくチェックするなどして配線を行ったという。ちなみに、メルセデス・ベンツ日本のGクラスの情報サイトのテクノロジー解説には、クロスカントリーギア(ローレンジのこと)の解説として「オフロードや、トレーラーを牽引する際には、クロスカントリーギアが威力を発揮。」と、トレーラーの牽引について触れているのだが…。

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Gの骨格自体は、ラダーフレーム+前後コイルリジッドという1979年の初代デビュー以来変わらぬ構造ではあるが、それでもこのG350dは最新モデルだけあって至る所にコンピューター制御が採り入れられている。今ドキの欧州車を自分で整備したりカスタマイズする場合にネックとなるのが、これらコンピューター信号の制御やコードの書き換えだが、このGの牽引でも解消していない問題があるという。それは、トレーラーの接続をG側が認識しないことだ。白石氏は、ブレーキランプやウインカーランプ、バックランプなど牽引に最低限必要な信号系統の接続しか行っていない。今のところよく分かっていないコンピューターの信号系統と思われる配線は、誤作動があってはならないのであえて接続していないのだという。そして、すべての電気系統を正確に接続できれば、おそらく車両側が牽引状態を認識し、変速や制動などを適切に制御する牽引モードが働くであろうとのことだ。そのためには、ディーラーでコードの書き換えが必要となる可能性が高いが(もっとも、そのディーラーがよく分かっていないのだが…)、Gの牽引用カプラーの配線や電子制御系統に詳しい人がいたら、是非情報が欲しいとのことである。いずれにせよ、ヒッチメンバーの確実な固定、電気系のチェック・配線などは、白石氏のようにきちんとした知識と技術がある人でないと出来ない作業と言える。

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電子制御化が高度に進んだ最近のクルマは、個人レベルで整備したり自由にカスタマイズしたりできる範囲が狭くなっている。クルマによっては、タイヤ交換やオイル交換すら、メーター内にアラートが表示されてしまう場合があり、それもユーザーレベルではリセットできない場合が多い。こうしたメーカーによる個人の整備・カスタマイズの制約とも呼べる状況に対して、欧米では個人や独立系修理業者が「Right to Repair」という運動を起こし、一定の成果をあげていることは以前の記事でも書いたが、白石氏の苦労を見るに、トレーラー牽引についてはそれ以前の問題と思えるケースもある。

 

保管場所や牽引登録などの規制緩和で、レジャー用ライトトレーラーは以前と比べてかなり使いやすい環境となっている。しかしその一方、個人レベルで牽引のためのカスタマイズを行うことはかなりハードルが高くなりつつあるのが現状だと言えるだろう。

2016082209トレーラーの連結検討書の作成と申請も白石氏自身が行ったそうで、そんな苦労の末に接続されるトレーラーは、ウルトラライトプレーンを搬送するためのもの。ベースは船舶用で、ウルトラライトプレーンを運ぶために白石氏自身が増設フレームやマウントを自作して装着している。

 

2016082206白石氏が4×4に次いで趣味とするウルトラライトプレーン。所有しているのはアメリカSKY RAIDER製で、日本ではかなり珍しい翼が折りたためるタイプ。翼を展開したときのサイズは翼長約9.2m、全長約5.2m、全高約1.5m。ちなみに、ウルトラライトプレーンは、自動車でいう運転免許や車検のようなものは不要で、国土交通省航空局の許可が得られればフライトさせることができる(もちろん、機体に対する要件や飛行場所等はかなり制限されている)。

 

2016082207エンジンは、最高出力80PSのドイツ・リーンバッハ製2リッター水平対向4気筒OHVガソリン。フォルクスワーゲン・旧ビートルのエンジンとほぼ同じ構造だ。飛行高度(酸素濃度が低くなる)やプロペラの回転速度(音速を超えるとソニックブームによってプロペラが破損する可能性がある)などの制約があり、また、一度飛び立てば一定回転数で飛ぶことになるので、クルマのエンジンほど高回転で回ることは不要。この機の場合は約3,800rpmでフライトするそうだ。路面からの大きな抵抗を受けるクルマと比べ、エンジンも機体にそれほど強固にマウントされていない。バルクヘッド側は、8mmボルト4本で固定されているのみ。

 

2016082208コクピット。メーター類はスピード、タコ、エンジン温度、電流のほか、高度、傾斜、昇降などが装備されている。1本棒の操縦桿は、前後に傾けることで昇降舵(エレベーター)の操作(上昇と下降)、左右に傾けることで主翼にある補助翼(エルロン)の操作(機体の左右傾斜)ができる。また、足で左右のペダルを踏み込むことによって方向舵(ラダー)の操作(方向転換)ができる。実際には、自動車とはまるで異なるこの3つの操作系をうまく組み合わせて離着陸やターンを行わなくてはならないのだ。ちなみに、アクセルは左にあるレバーで操作する。

 

文、写真/宮島秀樹