【紹介/試走】 CADILLAC ESCALADE

2016.8.28

  • 2016082806
    • プレミアムSUV
    • アメリカ車
  • ライバルたちがこぞってダウンサイジングを図り、省燃費、エコロジー路線まっしぐらなこのご時世にあって、このキャデラック・エスカレードときたら、そんな世の中の流れなど一向に気にかける素振りも見せず、これぞアメリカン・フルサイズ4×4の真骨頂と言わんばかりの6.2リッターV8・OHVサウンドを響かせ、その圧倒的な存在感をアピールしている…と、そんな印象を持つSUVファンも少なくないことだろう。


V8にこだわるフルサイズ・ラグジュアリー

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伝統と最新テクノロジーが混在
“古き佳きアメリカ”を残すSUV

2016082801ライバルたちがこぞってダウンサイジングを図り、省燃費、エコロジー路線まっしぐらなこのご時世にあって、このキャデラック・エスカレードときたら、そんな世の中の流れなど一向に気にかける素振りも見せず、これぞアメリカン・フルサイズ4×4の真骨頂と言わんばかりの6.2リッターV8・OHVサウンドを響かせ、その圧倒的な存在感をアピールしている…と、そんな印象を持つSUVファンも少なくないことだろう。

 

確かに、デビューした1998年から歴代エスカレードのエンジン排気量は、5.7→6.0→6.2リッターと世代交代ごとにスケールアップしてきたし、未だに動弁機構はOHV、ATはコラムシフト、車軸懸架の脚(リアサスペンション)など、伝統的なアメリカン4×4スタイルを踏襲しており、ともすれば意識的に時代に逆行していると受け取られかねない面もある。

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しかし、OHVと言えども直噴化や可変バルブタイミング機構、アクティブフューエルマネジメント(シリンダー休止システム)等による燃焼効率の大幅な向上や低燃費化が図られていたり、ATの多段化や、マグネティックライドコントロールなどサスペンション制御の電子化による走行性能の向上もしっかり図られているので、もちろん、全てが旧態依然…というわけでは、決してない。

 

今回の試乗車は、最上級グレードのプラチナム。本国では4×2/4×4それぞれに「スタンダード」「ラグジュアリー」「プレミアム」「プラチナム」と、4タイプのトリムグレードが用意されるが、日本仕様の正規輸入車は全車4×4モデルで、「プレミアム」と「プラチナム」の上級2グレードのみというラインナップである。

エンジンは6.2リッターV8のみ
快適で安定した脚まわりが秀逸

エンジンは最高出力313kW(426PS)/5,600rpm、最大トルク623Nm(63.5kgm)/4,100rpmを発生する6.2リッターV8 OHVガソリンを搭載。ちなみにグレードの違いによる動力性能の差はなく、エマージェンシーブレーキシステムやスタビリトラック等の電子制御技術を用いた安全システムの差もない。「プレミアム」と「プラチナム」の違いは、パワーリトラクタブルアシストステップ(ドア連動式電動サイドステップ)や後席用AVシステムの有無、前席パワーシートやインテリア、アルミホイールのデザインの違いなど、いわゆる快適装備、贅沢装備の違いに限られる。

 

都市部ではさすがに手に余る場面も多くあるボディーサイズだが、アイポイントが高く車両感覚が掴みやすいスクエアボディーのため、取り回しは見た目の印象ほど悪くない。ハンドルもよく切れ、とんでもなく大回りなどもしない。ただ、いかんせん2m超の車幅や左ハンドルという仕様がパーキングの条件を極端に制限するので、オーナーはそれを覚悟する必要がある。

 

また、標準装備されるセキュリティーシステムには、イモビライザーのほか、振動を感知する発報システム(ホーンとヘッドランプ点滅)も含まれるので、タワーパーキング等では注意が必要だ。

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コラムシフトのATセレクトレバーをDレンジに入れ、アクセルをグィと踏み込むと、V8が低く唸りをあげ、一瞬リアを軽く沈み込ませながら2.65トンのボディーが軽々と加速する。この一連の操作や挙動は、アメリカン4×4ファンにはたまらない瞬間だろう。ただし、エンジンの吹け上がり方は鋭く、レスポンスも良い。しかも高回転までよく回る。もちろんこれは“6,153ccのOHVにしては”という但し書きが入るが、それを差し引いても軽快によく回るエンジンと言える。

 

街中では、アクセルに軽く右足を乗せておき、せいぜい回しても1,500〜2,000rpm前後で充分交通の流れに乗れる。最大トルク発生回転数は4,100rpmと、数字だけ見れば高回転型だが、これだけの排気量ともなれば実際は1,500rpm前後でも充分なトルクが発揮されていて、踏み込めば瞬時に大パワーが得られる。

 

急加速時の一瞬のリアの沈み込みも、状況に応じて瞬時にダンパーの減衰力が調整されるシステムによって制御されるため、挙動変化自体は抑えられていて安定している。それでいて乗り心地は、この手のアメリカンSUVに求められる“ソフトライド”が保たれているので快適だ。

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コーナリング時も同様に安定している。「この乗り心地の柔らかさでコーナーに侵入すれば、このくらいローリングするはずだ」という体感予測が裏切られ、硬くないのにタイト感のある脚というイメージで、ロールも瞬時に収束し、いわゆる“おつり”も発生しない。

 

ワインディングを楽しめる機敏さはないが、ちょっとオーバースピードでコーナーに進入してしまっても恐怖を感じずにすむ脚まわりなのだ。

シンプルな4×4システム
ライバルとは逆の方向性に前進!

4×4機構はセレクタブル4WDシステムを採用。簡単に言えば、これは「4×2にも切り替えられるフルタイム4×4」である。手動で切り替える「2H/4AUTO/4H」モードを備えており、いわゆるフルタイム4×4モードにあたる「4AUTOモード」では、状況に応じて前後トルク配分を変化させ、「4Hモード」では前後50:50に固定するシステムである。この「4Hモード」では前後の差動を行わないので、アスファルト上での転回時には強制スリップが起きる。つまり、センターデフロックと同じ状態であり、いつ、どれだけ効くか分からない電子制御の「4AUTOモード」に頼るより安心感がある。

 

ちなみに、トランスファーにLoレンジの設定はないので、極低速走行が必要な本格的クロスカントリー走行は不可である。

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カテゴリーやサイズ、価格帯を考慮すれば、目下最大のライバルと言えるリンカーン・ナビゲーターは、昨年夏に大幅リニューアルされた。言うまでもなく、一番の注目ポイントはエンジンのダウンサイジングである。従来の5.4リッターV8OHCに代わって3.5リッターV6DOHCツインターボに換装されたが、そのパフォーマンスは、決して従来のV8に引けをとるものではなく、ハイパワー化、低燃費化、そして軽量化と、むしろ多くのメリットをもたらした。

 

そんなナビゲーターとは対照的に、「大排気量+伝統の脚」のまま近代化を進めているのが、このエスカレードである。今回、300kmほどの走行でマークした燃費は、リッターあたり6.1km。ひと昔前なら6リッター超のV8+フルサイズ4×4だと、リッターあたり1〜2kmくらいが常識だったことを考えれば、これは驚きの低燃費である。

 

そして何より、大排気量V8であること自体が重要であると考えるアメリカン・ラグジュアリー4×4ファンにとって、エスカレードは非常に魅力的な1台だろう。

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【細部写真】
20160828096,153cc V型8気筒OHVガソリンエンジン搭載。最高出力313kW(426PS)/5,600rpm、最大トルク623Nm(63.5kgm)/4,100rpmを発生する。可変バルブタイミング機構、筒内直接噴射、シリンダー休止機構等、高効率化、低燃費化対策が多く講じられている。

 

【騒音計測データ】
●車内・・・・39.0dB
●ボンネット閉・・・・55.5dB
●ボンネット開・・・・61.0dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。

 

 

20160828102016082811上:各種情報表示を切り替えられるカラーメーター。視認性は良好。
下:インパネ上部、ドア上部、センターコンソールがレザー張りとなるカスタムレザーラップドインテリアは、プラチナムの専用装備。

 

 

2016082812トランスミッションは6速AT。「M」ポジションでのマニュアルシフト操作はグリップ部の+/−ボタンで行う。先端のボタンはトレーラー牽引モードスイッチ。

 

 

2016082813灯火スイッチのとなりは駆動モードダイアルスイッチ。4×2、4×4AUTO、4×4H(ロック)の各ポジションへ任意に切り替えられる。

 

 

20160828seat2016082816前席にはマッサージ機能付きの18ウェイ本革シートが備わる。セカンドシートはキャプテンシート。サードシートは大人だとヒザを抱えて座る姿勢になってしまう。

 

 

20160828rearサードシートは60:40分割式シートで、収納は電動。セカンドシートがキャプテンシートであるため、畳んだ時に中央は床が窪んだ状態となる。

 

 

2016082821リアゲートは上開き式で、ガラスハッチ部分は独立して開閉可能。便利そうだが位置が高すぎて、平均的な身長の日本人には使いにくい。

 

 

20160828susフロントサスは、ダブルウィッシュボーン+コイル式(左)、リアサス(右)は5リンク式車軸懸架+コイル。

 

 

20160828doorドアの開閉に連動するパワーリトラクタブルアシストステップ。手動スイッチによるホールド機能あり。

 

 

2016082826ハイ/ロービームともLED。下の白色部分はステアリング操作に連動するコーナリングランプ。

 

 

2016082827リアバンパー中央の樹脂カバーを外すと、ヒッチメンバー&ソケットが現れた。

 

 

2016082828標準タイヤサイズはP285/45R22。プラチナム専用ホイールは9スポークタイプ。プレミアムでは7スポークタイプが装着される。

 

文/内藤知己
写真/佐久間清人