【紹介/試走】MITSUBISHI PAJERO & DELICA D:5

2015.12.18

    • 四輪駆動車
    • 三菱
  • 12月初旬に公式発表された"三菱自動車がパジェロの新規開発を中止"というニュースは、パジェロファンのみならず、多くの、とりわけ古くからの4×4ファンを残念がらせたが、全盛期はSUVやクロカン4×4の手本となり、このカテゴリーのクルマを象徴するモデルであっただけに、本誌としても非常に残念と言うほかない。


魅力は”オフロード力”

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三菱の看板4×4パジェロ&デリカ
あらためてオフロード性能を検証

 

ただ、パジェロの生産自体は続行されるということで、エコカー主流の今は、少しずつでも進化しながら復活の機を窺う時期なのか…と、将来に期待を託すパジェロオーナーも少なくないことだろう。

 

国内未発売の海外生産モデルであるパジェロスポーツやL200トライトンの国内オフロード試乗会が催されたのは、このパジェロ新規開発見送りが報じられるひと月ほど前であり、せっかくの機会だからということで、国内のパジェロやデリカD:5の試乗車も用意されていた。

 

三菱4×4の現在を知るちょうど良い機会でもあるので、今回はパジェロスポーツ、トライトンに続き、この2モデルのオフロードインプレッションをお届けしたい。

 

両者ともディーゼル車に試乗
デリカにはローレンジなし

 

今回の試乗車は、パジェロが5ドアロングのディーゼルターボ車、デリカD-5もディーゼルターボでもちろん4WDモデルだ。ちなみに現行の国内ラインナップでは、パジェロに2WD車の設定はなく、エンジンは3リッターV6・SOHCガソリン(6G72型)と3.2リッター直4・DOHCディーゼルターボ(4M41型)の2種類。一方のD-5には2WD車の設定があり、4WDモデルに搭載されるのは、2.3リッター直4・DOHCディーゼルターボ(4N14型)と、2.4リッター直4・DOHCガソリン(4B12型)のふたつで、2WD車には2リッター直4・SOHCガソリン(4J11型)のみが設定される。

0006 両車ともATだが、パジェロは5速スポーツモードATで、2速トランスファー、つまりローレンジ付きの副変速機を備える。一方、D:5には6速スポーツモードATが設定され、副変速機の設定はない。

 

D:5は、国産で唯一”オフロードをそこそこ走ることができる4WDミニバン”という評価が一般的だが、これは、デリカにローレンジ付きのトランスファーが備わっていた頃のイメージが根強く残っていることも大きな要因かと思われる。

 

パジェロとデリカ4WDがシャーシーやパワートレーンを共有していたのは昔の話で、現在はサスペンション形式も全く異なるクルマ。現在の両者は、果たしてオフロードでどのような走りを見せてくれるのか楽しみだ。

 

 

LOレンジの有無で違う安心感
サスペンションの違いも大きい

 

まずはパジェロに乗り込み、浮き石が多くグリップの良くない勾配を登っていく。4WDシステムはお馴染みの「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」と呼ばれるフルタイム4×4で、トランスファーレバーで2H/4H/4HLc/4LLcを切り替える方式。最初から4LLc でスタートする。

 

2,000rpmで最大トルクに達する3.2リッターのコモンレール式DI(直噴)ディーゼルターボは低回転から余裕のトルクを発揮し、アクセルの踏み具合に対するレスポンスも良いため、コントロールが容易だ。

 

サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式の独立懸架なので、ストロークの限界を超えない限り路面に素早く追従する。何よりこれだけの凸凹道でも突き上げや底づきがなく、揺れも押さえられるので乗り心地が良い。フロントがしっかり接地しているおかげでステアリング操作もよく利く。

 

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ただし、タイヤが浮き気味になるくらいの凹凸路面では、頻繁にトラクションコントロール制御がかかり、動きが多少ギクシャクし始める。もっともアクセルへの踏力を一定に保っていれば、トラクションが回復するエンジン回転数に調整されるため、難しいテクニックは不要だ。

 

下りは4LLcのまま、L(1速)でブレーキを踏まずに下る。やや、速い。全ての走行モードでABSが効くマルチモードABSが搭載されているので、かまわずブレーキを踏んでも挙動が乱れることはないが、もう少しエンジンブレーキがかかる減速比設定(特にトランスファー)のほうが安心して下ることができそうだ。

 

次にD:5に乗り込み、同じコースへ。ローレンジはないので、L(第1速)にシフトしてスタートする。パジェロに較べ減速比が高いため、ややアクセル踏み気味で勢いよく登る。

 

サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式の独立懸架、リアはマルチリンク式の車軸懸架で、凹凸に合わせてやや跳ね気味な乗り心地。ギア比が高く、速度を上げざるを得ないため、ボディーが跳ねる速度に…という悪循環。ただし、トルクバンドが広いため、常用回転域での扱いやすさが特徴と言えるディーゼルターボだ。

 

パジェロよりホイールベースがやや長いが、小回りは利く。勾配がきつくなるにつれて、ローレンジがないハンデを強く感じるが、ミニバンというカテゴリーでココまで来られる性能があれば充分…というのが順当な考え方かも知れない。

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下りは、たとえL(1速)でも速度が出すぎるのは明らかだったため、フットブレーキで速度を調整しつつ下降する。パジェロと同様ABSが効くので踏みすぎてもタイヤがロックすることはないが、ブレーキを踏み続けて下っていく感覚は、あまり気持ちの良いモノではない。

 

モーグル走行ではほぼ互角!?
オフロードを楽しめてこそ四駆

人工モーグル・セクションでは、両者ともATC(アクティブトラクションコントロール)のおかげで互角の走破性を見せたが、細かい点ではやはりパジェロが一歩先を行く印象だ。

 

両者とも独立懸架の前脚はすぐに地面を離れるが、そんな中でもパジェロの姿勢は急激に崩れにくく、水平を保とうとする。脚が浮いてから、なおアクセルを踏み続けると接地している車輪に駆動配分されて前進し出すのはどちらも同じである。

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また、パジェロの方がギア比が低く、より低速で前進できることも、挙動の安定に繋がる。ATCを意識的に機能させようとする場面でも、少ない踏み加減でそれができるのがパジェロだった。

 

今回のようなフィールドでパジェロと比較するような形になると、当然ながらD:5が不利になるが、ミニバンというカテゴリーで考えれば、これは充分にオフロードを楽しめるレベルにある。

 

今回も含めて、一連の三菱製4×4の”オフロード力”の高さをあらためて再認識できた試乗会だったが、やはり四輪駆動車である以上は、このくらいのオフロードを楽しめる能力があれば、4×4ライフも充実すること間違いないだろう。

【細部写真】
2015-12-18 12.36.02パジェロのクリーンディーゼル4M41型3,200cc 直列4気筒DOHCディーゼルターボを搭載。最高出力140kW(190PS)/3,500rpm、最大トルク441Nm(45.0kgm)/2,000rpmを発生する。

 

2015-12-18 12.37.32デリカD:5のクリーンディーゼル4N14型2,267cc 直列4気筒DOHCディーゼルターボを搭載。最高出力109kW(148PS)/3,500rpm、最大トルク360Nm(36.7kgm)/1,500〜2,750rpmを発生。トルクバンドの広さが扱いやすい。

 

PシフトパジェロのINVECS-Ⅱ5速スポーツモードAT。左はトランスファーレバー。

 

2015-12-18 12.44.59D:5のINVECS-Ⅱ6速スポーツモードAT。ガソリン車にはCVTが設定される。

 

PトランスファDトランスファ4×4モードの切り替えは、パジェロ(上)はレバー、D:5(下)はダイアルで行う。D:5には副変速機がない。

 

PサスFPサスRパジェロのサスペンションは、フロント(上)、リア(下)ともダブルウィッシュボーン+コイルスプリングの四輪独立懸架式。

 

DサスFDサスRD:5のフロントサス(上)は、マクファーソンストラット、リアサス(下)はマルチリンク式のリジッド(車軸懸架)+コイルスプリング。

 

 

文/内藤知己
写真/宮島秀樹