【紹介/試走】NISSAN X-TRAIL 20X HYBRID

2015.7.10

    • 四輪駆動車
    • 日産
  • 文/内藤知己  写真/佐久間清人


最新ハイブリッドを楽しむ

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豊富な選択肢は健在ながら
クリーンディーゼルは姿を消した

s_IMG_8375今年5月からハイブリッド車がラインナップに加わり、もともと豊富だった選択肢がさらに増えた日産エクストレイル。

 

もはやSUVのハイブリッドモデルというカテゴリー自体に目新しさはないものの、後発ならではの先進性は魅力のひとつであり、注目すべきポイントも多い。

 

既存の2リッター直4ガソリン搭載車(2WD/4WD)は、今までどおり2列/3列シート車それぞれに装備によるグレードが設定され、合計17のバリエーションが用意される。

 

そしてこの5月から、これらに、2リッター直4ガソリン+電気モーター搭載のハイブリッド車(2WD/4WD)合計4タイプが追加された形だ。

 

なお、先代モデルのシャーシーのまま残されていたディーゼル車はカタログから姿を消しており、このディーゼル車にのみ設定のあった6速MT仕様も現行ラインナップにはなくなってしまった。

 

また、ハイブリッド車には、リアシート後方フロア下に電気モーター駆動用バッテリーが収まる関係で3列シートの設定はないため、全車5人乗りとなっている。
ちなみに、ハイブリッドモデルは今のところ日本専用となっており、欧州ではディーゼルモデルが主流となっているそうだ。日本のユーザーだけが選択できる、ある意味スペシャルなモデルと言えるだろう。

 

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 ふたつのクラッチがロスを低減
最新のハイブリッド技術を採用

「ヤワなハイブリッドの時代を終わらせる」…とは、テレビで流れているエクストレイルハイブリッドのCMのキャッチコピーだが、これは他社製も含めた従来のハイブリッドシステムとの違いをアピールするものである。

 

インテリジェントデュアルクラッチコントロールと呼ばれる方式がその最大の”違い”で、エンジンとモーターのトルク伝達を2つのクラッチによってコントロールする技術だ。

 

既存のハイブリッド方式では、エンジン停止中(走行時)でも片方のモーター出力軸が空回りさせられるため抵抗=パワーロスが発生するので、モーターのパワーがフルに発揮されない。

 

しかし、インテリジェントデュアルクラッチ方式では、片側のクラッチによってエンジンとモーターを完全に切り離すことができるため、エネルギーロスが少なく、EV走行の領域を広く取れるので、加速性能や燃費の向上に効果がある…という。

 

このデュアルクラッチ方式ハイブリッドシステム自体は、既にフーガなどで採用されているものと機構的に同じだが、FFレイアウトで採用されるのはエクストレイルが初となる。

 

また、バッテリーの主流であるニッケル水素バッテリーに較べて約2倍のパワー密度を持つというリチウムイオンバッテリーを採用することで、積載性向上や軽量化等も図られている。

 

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パワフル加速、スムーズ巡航
低燃費の決め手はアクセルワーク

理屈は理解できても、それがフィーリングなりデータなりに表れなければ、その素晴らしさも体感できないので、さっそく試走開始。

 

発進加速時のトルクの立ち上がりは、既存のガソリン車や、今は無きクリーンディーゼル車をも明らかに上回っており、発進時に最大トルクを発生する電気モーター+2リッターガソリンの威力を、あらためて思い知らされる。

 

スペックを見ると、ガソリン車の同グレードモデルより130kg重いはずだが、そんな重量差を感じさせない力強さ、軽快さである。

 

ハイブリッド用に最適化されているとは言え、ガソリン車と同型の2リッターエンジンにモーターがプラスされているわけで、パワーアップは当然と言えば当然なのだが…。

 

発進、停止を繰り返す街中では、急発進や急加速をしなければモーターのみで充分メリハリを利かせた走りができ、高速道路でも定速巡航に入ったと ころでアクセルを一旦0FFしてパーシャルを保持すれば、モーターのみで駆動する。もちろんこれは、エアコン設定やバッテリーチャージの状態によって変化 するようだし、エンジン/モーター走行の切り替えはマニュアル操作できないので、早い話がクルマ任せの運転となる。

 

したがって、ドライバーが好燃費を狙って操作できるのは、アクセルの踏み加減くらいだが、これだけでも燃費には大きく影響する。ちなみに、メーター内には、低燃費運転をナビゲートするペダル操作ガイドなども表示できるようになっている。

 

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AUTOモードは通常前輪駆動
LOCKモードはエンジン駆動

4×4システムは、お馴染みの「ALL MODE 4×4-i」が採用されており、ドライバーが任意で「LOCK」「AUTO」「2WD」を選択できる方式。

 

AUTOモードでは、通常走行時(前:後)100:0、つまり前輪駆動で走行し、状況により最大50:50まで前後トルク配分を適正に調整する。
LOCKモードでは、状況にかかわらず50:50固定となり、モーター駆動はOFFとなるよう設定されている。
フラットだが、湿った松の落ち葉が敷き詰まった、けっこう滑りやすい林道を走ってみる。
AUTOモードのままでも、タイヤの空転からリア駆動配分開始までタイムラグはほとんどないので、ふつうに4×4走行している感覚だ。
サスペンションは適度に柔らかい設定なので、未舗装路もある程度快適に走ることができる。
路面に凹凸のある部分では、電子制御によって車体の上下運動を予測し、エンジントルクとブレーキの自動制御(アクティブラ イドコントロール)が働き、車両の揺れを抑制してくれるので、誤ってタイヤを穴や溝に落としてしまっても安心である。それが楽しいかどうかは別として、で はあるが。

 

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低コストだけが売りじゃない!
ハイブリッドの真の価値とは?

グレードにもよるが、ガソリン車との価格差はおよそ40万円。エコカー減税分を引くと、約27万円高となるエクストレイルハイブリッド。4WD の公称燃費はガソリン車が16km/L、ハイブリッドは20km/L(JC08モード)なので、ガソリン価格が135円/Lとして、年間10,000km 走行するユーザーなら、元を取るのに15年9か月かかる。年間5,000kmの人なら倍の30年、いや、実際の燃費(今回は15km/Lだった)を考えた ら、30年以上かかることは明白。しかも、仮に30年間乗ったとしたら、その間、リチウム電池無交換…というわけにはいかないだろうから、コスト節約 でハイブリッドを検討するのは無意味なのだ。

 

そして、こんな計算は愚の骨頂以外の何モノでもないことは先刻承知。ここにわざわざ書かなくても、賢明なユーザーにはよく分かっているはず。

 

ハイブリッドを選ぶことの真の価値は、”元を取る”とか低コストとかではなく、航続距離の長さや環境への配慮にある、と理解したい。
エクストレイルの航続距離に関して言えば、前出の公称燃費で計算すると、ガソリン車960km、ハイブリッド車1,200kmとなる。1回の給油でその差240kmのアドバンテージ。こういった性能のとらえ方こそ、SUVユーザーならでは、と言えるだろう。

 

そして、そういう面でも、エクストレイルハイブリッドは満足感高めなSUVだ。

 

s_IMG_83081,997cc 直列4気筒DOHC直噴ガソリンエンジン+交流同期モーター。エンジンは最高出力108kW(147ps)、最大トルク207Nm(21.1kgm)、モーターは最高出力30kW(41ps)、最大トルク160Nm(16.3kgm)。
【騒音計測データ】
●車内・・・・44.0dB
●ボンネット閉・・・・60.0dB
●ボンネット開・・・・66.5dB
※エンジン始動、エアコンOFF、電動ファン非作動時

 

アイドリング時はガソリン車と変わらず。ただし、走行時の静粛性はもちろん別格だ。

 

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s_IMG_8245上: 2眼メーターに挟まれた部分には、燃費関連のエコドライブサポート表示も。
下:ガソリン車と同じインパネ。試乗車のグレードは、「エマージェンシーブレーキパッケージ」。

 

s_IMG_8202ガソリン車同様、全車エクストロニックCVT仕様。マニュアルモードやパドルシフトはない。

 

s_IMG_8224ALL MODE 4×4-iシステムの操作ダイアル。ダイアル左側はアドバンスドヒルディセントコントロール・スイッチ。

 

201507101ハイブリッドにも防水シートを採用。防水性はもちろん、透湿性も高く、衣服が濡れたまま座っても蒸れにくい素材と構造。

 

2015071022分割可倒式のリアシート。荷室フロアの素材も防水仕様。ハイブリッドにはサードシートの設定がない。

 

201507103モーター駆動用のバッテリーはコンパクトなリチウムイオンバッテリー(左)。床下収納もあり、スペアタイヤもちゃんと収まっている。

 

s_IMG_8552LEDポジションライトをヘッドランプまわりに配置。補助灯は昼間でもよく目立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

201507104フロントサスは、マクファーソン・ストラット(左)、リアサス(右)はマルチリンク式。ソフトで快適なセッティングの脚だ。重量増に応じて、サス設定もハイブリッドモデル専用に変更されているとのこと。近いうちにガソリンモデルと比較してみたい。

 

s_IMG_8356標準タイヤは全車225/65R17サイズ。本来のSUVとして使いやすいサイズ設定と言える。タイヤは特注品のグラントレックで、トレッドパターンは一見オンロードタイプだがM+S規格となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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