【紹介/試走】JEEP WRANGLER UNLIMITED 75th Anniversary Edition

2016.11.19

  • 2016111910
    • 紹介/試走
    • Jeep
  • 本格的なクロスカントリー走行が楽しめる4×4を街中で見かける機会が激減した。何をもって“本格的”とするかは意見の分かれるところだろうが、例えば、トランスファーに低速ギアの副変速機、いわゆるローレンジを備えているか否か、という項目もそれを見極める基準のひとつにはなる。しかし、ローレンジを備えていても、オンロード専用の超扁平タイヤが標準装備で、クロカンどころか砂利道でさえ進入がはばかられるような“スポーティーな四駆”も多く、当コーナーでもオフロード試走をキチンとお届けできるモデルは少ない…というのが現状である。


ドライバーの資質を問う4×4

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現行型の日本仕様車は3モデル
ジープ75周年記念モデルに試乗

2016111901本格的なクロスカントリー走行が楽しめる4×4を街中で見かける機会が激減した。何をもって“本格的”とするかは意見の分かれるところだろうが、例えば、トランスファーに低速ギアの副変速機、いわゆるローレンジを備えているか否か、という項目もそれを見極める基準のひとつにはなる。しかし、ローレンジを備えていても、オンロード専用の超扁平タイヤが標準装備で、クロカンどころか砂利道でさえ進入がはばかられるような“スポーティーな四駆”も多く、当コーナーでもオフロード試走をキチンとお届けできるモデルは少ない…というのが現状である。

 

そんなわけで今回は、標準仕様のままでムリなくオフロード走行ができて、クロカン走行も高いレベルで楽しめる現行モデル…という条件で脳内検索してヒットした数少ない4×4のひとつ、ジープラングラーを選んだ。
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現在、ラングラーの日本仕様車は、2ドアショートに「Sahara(サハラ)」、4ドアロングのアンリミテッドには「Sahara」と「Sport(スポーツ)」の3モデルがラインナップされ、これに7月から販売されているジープ誕生75周年記念限定モデルの「75th Anniversary Edition(アニバーサリーエディション)」が加わっている。

 

ちなみにラングラーでオフロードと言えば、減速比4:1の極低速トランスファーやDANA製リアアクスル+前後マニュアルデフロック、スタビ解除装置などを標準装備し、クロカン走行に特化した「Rubicon(ルビコン)」というスペシャルバージョンが存在するが、これは期間限定車ということで、2016年分の受注は既に終了している。
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今回の試乗車である75周年記念限定モデルは、アンリミテッドのサハラをベースに、内外装に専用装備や専用デザインを施した車両で、国内では150台限定の特別仕様車となっている。パワートレインやサスペンションなど、走りのパフォーマンスに関わる部分はベース車両とほぼ同一で、タイヤがサハラで標準の255/70R18に対してやや細身のP245/75R17サイズが装着されている。

 

専用装備のフードパワードームと呼ばれるアグレッシブなデザインのボンネットや、サイドシルを保護するロックレール等が、より一層タフな外観を作り出していて、なかなかの迫力。

 

今回はオフロードを多めに走ろうと決め、都心から高速道路で北に向かった。

3.6L V6-DOHCガソリンの余裕
セミオープンでも快適!

4×4の世界でもダウンサイジングがハバを利かせる昨今だが、3.6リッターV6DOHCガソリンの存在感と余裕は、やはり過給器付きの2リッターとは明らかに異なる。

 

4,300rpmで最大トルクを発揮するやや高回転型ユニットであるものの、レスポンスがシャープで、そこそこ低い回転域からでもストレスなく立ち上がる特性は現代のJEEPとして充分以上のパフォーマンスを期待させるものだ。

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高速道路を降り、ワインディングへ。オープン好きならよくお分かりのことと思うが、暑くも寒くもないこの時期は意外に短いもので、迷わずルーフを外す。端から見ればオープンとは言いにくい状態だが、乗り手にとっては振り向かなければオープンと何ら変わらない視界の広がりが得られる。近頃は大型サンルーフが選べるモデルもあるが、やはりこの爽快感はサンルーフとは別次元だ。

 

工具不要で簡単に外せて、外した2分割ルーフを収納して荷室に固定できるバッグも付属する親切設計。もちろん、労力と天候の急変と外したリアキャノピー、左右ドアの置き場所を気にしない酔狂なドライバーならフルオープン走行も可能である。

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前後とも車軸懸架の脚なうえに重心が高く、ヘビー級ロングボディーなラングラーアンリミテッドにとって、ワインディング走行はけっして得意科目ではない。しかし、大きくローリングはするもののロールの収まりはさほど悪くなく、いつまでもフラつくような挙動もない。

 

うっかりオーバースピード気味にタイトコーナーに突っ込むと内側の車輪が浮き気味になりやすいが、タイヤの空転と同時にESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)が作動し、エンジンのトルク制御とブレーキ制御によって態勢を瞬時に回復させる。初代ラングラー、と言うより、それ以前のCJ時代から開発者が横転対策に頭を痛めてきたJEEPだが、現代のラングラーの安全性は電子制御により劇的に高まっていることが実感できた。

ラングラーにも電子制御はある
4×4はお馴染みのコマンドトラック

未舗装の林道に入ると、ラングラーは途端に元気になる(気がする)。段差、深い溝や轍、水たまり…、いわゆるSUVと呼ばれるクルマなら、それが4×4であっても前進を躊躇するようなシチュエーションでも気にせず走って行ける安心感は、何ものにも代えがたい性能だ。

 

フラットダートを快調に飛ばしていると、先ほどワインディングで活躍したESPが、また威力を発揮し出す。浮き砂利が多く滑りやすい路面での横滑りは、各輪のトルク制御とブレーキ制御でしっかり補正されるので、常識はずれな速度で走らない限り、ドライバーが思ったとおりの走行ラインが取れる。

 

ただし、当然のことながら、これはタイヤが地面を捕らえていることが条件になるので、タイヤが完全にグリップを失った状態ではさすがの電子制御もお手上げである。ESPと言えども万能ではないことは、肝に銘じておくべきだろう。

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ラングラーの4×4システムは「Commmand Trac(コマンドトラック)」と呼ばれるパートタイム式である。昔はこれが普通だったが、今では少数派になってしまったので一応解説しておこう。走行モードを4×4にすすると、ハイレンジ(高速)/ローレンジ(低速)にかかわらず、前軸と後軸は等速(50:50)で回される。つまり常時センターデフロック状態だ。そして、4×4↔4×2の切り換え、ハイ↔ローレンジの切り換えは、1本のレバーによってドライバーが行う。

 

4×4走行時は常に前軸と後軸が直結状態なので、直進性が強くなる=曲がりにくくなる(強いアンダーステアが発生)ため、未舗装でも状態の良い林道等では4×2の方が走りやすいケースも充分ある。

 

何も考えずに走っても、クルマが全て判断して対処してくれるのが当たり前の世の中になりつつあるが、ラングラーの場合、そうはいかない。良くも悪くもドライバーの資質が問われる4×4なのだ。

少々物足りないローレンジ
ありきたりのSUVに飽きたら…

状態の良いフラットダートでESPの作動や特性を体感しつつ、なおも進んでいくと、雨や湧き水で路面が削られたままになっている枝道を発見。さっそくトランスファーレバーをローレンジにシフト。ローレンジでは2.717:1に減速される。

 

ATということもあって、ローレンジの1速と言えどもジワジワ這うようなスピードではない。やはり、これ以上の低速ギアを望むのであればルビコン仕様を、ということなのだろう。

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これならローレンジを備えながらもHDC(ヒルディセントコントロール)機構が標準装備されていることも頷ける。やや本末転倒な気もするが…。

 

サスペンションがこれだけストロークする4×4に、最近試乗していなかったためか、4輪がしっかり接地することの有り難さを実感。マニアはさらにこのサスに手を加えて、さらなるパフォーマンスを追い求めるが、それにきっちり応えられるポテンシャルを備えていることも、ラングラーの類い稀なる実力のひとつだ。

 

 

セミオープンでも超爽快、ドライバーにいろいろな判断を迫ってくるけど、その分楽しさ倍増な4×4。JEEPファンにとっては“微妙”でも、ラングラー・ファン、クロカン・ファンにとってはかなり満足度の高い(多分)現行型ラングラー。

 

ありきたりのSUVに飽き、刺激が欲しい4×4ファンにとっても、あらためて注目の価値あり!な“本格”四駆である。

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【細部写真】
2016111913最高出力284PSを6,350rpm、最大トルク35.4kgmを4,300rpmで発生する3.6リッターV6DOHCガソリンエンジン。意外に高回転型だが、レスポンスの良さと全域にわたる余裕のトルクが魅力。
【騒音計測データ】
●車内・・・・41.5dB
●ボンネット閉・・・・61.0dB
●ボンネット開・・・・71.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。

 

 

20161119142016111915上:デジタル表示部分にも液晶は使われていないアナログメーター。
下:日本仕様車は全車右ハンドル。外観に較べてスパルタンさに欠けるインパネ。

 

 

2016111916トランスミッションは必要充分な5速AT。左側はトランスファーレバー。2H-4H-N-4Lを1本で切り換える。

 

 

20161119seat75th専用デザインのレザー/メッシュコンビシート。フロントはエンボス加工による専用ロゴが入る。ポジション調整は手動式。

 

 

2016111919専用エンブレム付き助手席アシストハンドル。エンブレムはともかく、クロカン車には重要な装備。

 

 

20161119206ヶ所のフックをリリースすれば、すぐに外せる2分割式のルーフトップ。

 

 

2016111921ルーフトップは軽量な合成樹脂製。

 

 

2016111922外した2枚のルーフトップは、専用バッグに収納して…

 

 

2016111923リアシートのシートバックに固定できる。

 

 

201611192420161119252016111926全車共通の70:30分割可倒式リアシート。ヘッドレストを外さなくてもフォールディング可能な仕掛け。

 

 

201611192775th専用デザインのフードパワードーム。スリットはダミーではなく、通風口として機能している。本国仕様のルビコンにも採用されたデザインだ。

 

 

20161119282016111929フロント(上)、リア(下)ともリジッドアクスル+コイルの5リンク式サスペンション。スキッドプレート的なアンダーガードも装備されている。

 

 

2016111930タイヤはP245/75R17を装着。ベース車両「サハラ」の標準サイズは255/70R18と、クロカン4×4としては真っ当なサイズ。

 

 

文/内藤知己
写真/佐久間清人