【BACKWOODS】電子書籍編集人 宮島秀樹

2016.10.29

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「衣食足りて礼節を知る」とはよく言われる諺だ。その意味は『人は、物質的に不自由がなくなって、初めて礼儀に心を向ける余裕ができてくる』(デジタル大辞泉)ということである。

 

不況が長引いているとは言え、日本の2015年GDPは世界3位の4兆1232億ドルで、経済大国であることは間違いない。ひとり当たりのGDPは3万2486ドルで世界26位となり、所得格差や貧困率の拡大が顕在化しつつあるものの、インフラも社会保障もそれなりに行き届いており、途上国から比べれば衣食はかなり足りていると言えるだろう。でも、礼節はどうか? 海外観光客からは、日本人はマナーが良いとか親切だとかよく言われるそうだが、本当にそうだろうか?

 

実は先日、4×4MAGとは別の仕事のためにハワイに行ってきた。筆者にとってハワイ訪問は初めてのことで、そのロケーションといい気候といい、メシ代の高さを除けば、なるほどこれは人気になるわい、今度はプライベートでゆっくり来たい…と思わせる観光地であったが、それ以上に強く印象に残ったのはドライバーのマナーの良さだ。現地ではレンタカーを借りて移動したのだが(残念ながら4×4にあらず)、混雑している街中や帰宅ラッシュ中のフリーウェイを問わず、危ないと感じたり、嫌な思いをしたことがほとんどなかったのだ。

 

そしてこの印象は、南国の観光地ハワイに限ったことでなく、アメリカ本土に出かけるたびに感じることでもある。筆者は、西海岸(ロサンゼルス、ラスベガスなど)、中央部(アトランタ、メンフィスなど)、東海岸(ニューヨーク)でクルマを運転した経験があるが、どこでもおしなべてドライバーは紳士淑女的だ。

 

アメリカの交通ルールでは基本的に常時右折可だが、交差点の横断歩道の近くに人がいれば、クルマは必ず一時停止し、まず歩行者を先に横断させる。人が横断歩道を渡っている間に、クルマを発進させるドライバーはまずいない。歩行者優先が徹底されているのだ。

 

一時停止指示のある交差点では、しっかり皆一時停止し、先に停止したクルマを優先し、順番をしっかり守って交差点に進入していく。こちらがレンタカーの旅行者らしいと分かると、先に行けと手で合図を送ってくれるドライバーも多い。渋滞中のフリーウェイであっても、ウインカーを出せばすんなりと入れてくれる。多少不慣れな運転をしていても、嫌がらせのように車間を詰められたり、クラクションを鳴らされたりすることもない。お互いが大変気持ちよく運転できるのである。これはGDP世界1位の国だから実現できたことなのなのだろうか。ちなみに渡欧経験はあまりないが、ドイツやフランスの交通マナーはアメリカに近い印象。ただし、都市部ではマナーが悪かったり、恐い思いをすることも多い。

 

翻って、日本の交通マナーはどうだろう? これはまだまだだと言わざるを得ない。特に横断歩道などでは、アメリカとは逆に、歩行者がクルマに譲る場合を多く見かける。先日は、狭い通学路で、それも通学時間帯に、子供の脇を縫うように飛ばす若いカップルを見て唖然とした。また、とある駅では、駅から公園に渡る横断歩道に一時停止の標識や路面表示がひとつもない。もし、公園から子供が飛び出してきたら…。歩行者優先の意識が低いと感じざるを得ないことが多いのだ。

 

自動車開発や生産において、日本はアメリカと比肩する自動車大国となった。しかし、交通マナー、この1点のみ、日本のモータリゼーションはまだ未熟だと言わざるを得ない。そして、それはメーカーや行政側のみの問題ではなく、我々ドライバー側の問題が大きい。SUV大国のアメリカでは必要のないサイドアンダーミラーが日本では必要となっているが、事故の原因をクルマの大きさや形状に求めるのではなく、運転するドライバーの意識により多く求めるべきなのだ。

 

四駆やSUVは、車高が高くボディーも大きいこともあってただでさえ目立つ存在だ。だからこそ、ドライバーは常に高い意識を持って、人にやさしい運転を心がけていただきたいと思う。

 

 

20161029_image1アメリカでドライブするたびに感心するのがドライバーの交通マナー。ちなみに、ハワイではジープ・JKラングラーを多くみかけた。本土に多いフルサイズピックアップやSUVは意外に少ない。ラングラーが多いのは、観光地であり、サーファーが多いから?(写真はイメージ)

 

 

20161029_image2空き時間を利用して真珠湾にある戦艦ミズーリ記念館へ行った。日本との因縁が特に深い場所と戦艦であり、この大戦で生まれたジープが今の四駆の元祖となっていることを併せて考えると、誠に感慨深いものがあった。