【BACKWOODS】 宮島秀樹

2016.1.29

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  • 「雪道でのドライブとレスキュー」:  先日までの大寒波では、例年雪があまり降らない地方でもかなり雪が積もった。一昨年に関東地方を襲ったドカ雪ほどにはならなかったようだが、それでも長崎で17㎝、鹿児島で10㎝の降雪を記録したそうで、首都圏を含め全国的に交通機関が大幅に乱れた。


TVでは、この数十年に1度といわれる雪に関する情報を終日中継していたが、そこでお馴染みなのが、坂道でクルマがスリップしている光景だ。そのほとんどが、人がクルマを押して脱出させようとしているお決まりの場面なのだが、立ち往生しているドライバーは十中八九アクセルを全開にしてクルマを進ませようとしている。一昨年の大雪の際のニュース映像では、後ろからクルマを押している警察官が「アクセルをもっと踏んで!」なんて叫んでいて、さすがにちょっとびっくりした覚えがある。

 

4×4MAGAZINEを以前から読んでいただいている方には説明不要とは思うが、雪道ではもちろん泥でのスタックでも、アクセル全開は基本的にはNGである。タイヤに詰まった雪や泥、路面の水膜を勢いよくかき出したかったり、揉み出しなどで前後に進む慣性を利用したかったり、泥の下に硬い路面があるような場合などは別だが、オフローディングの基本はトラクションの確保だ。一般的にトラクションはスリップする直前が一番よく効くのであって、低ミュー路でいたずらにアクセルを開けてもタイヤは勢いよく空転するだけだ。アクセルをゆっくりと踏み込み、グリップの感触を探りながらジワリジワリとトラクションをかけてやるようにするのが原則なのだ。

 

「急な操作は厳禁! アクセルは優しく」というセオリーは雪国のドライバーにとっては当たり前のことだと思うが、一昨年目にした光景を今年も、というか大雪が降る度に目にするのは、やはり一般的なドライバーはスノードライブを意識することはあまりないだけでなく、タイヤのトラクションやクルマの挙動に対する基本的な知識が足りないのだろう。それに今や、トラクションコントロールにしろ、衝突安全にしろ、通常時の車体制御のほとんどのことをクルマがやってくれる時代になったから、こうした基本的な運転知識や「非通常時」に対処するための知識はますます希薄になっていくに違いない。

 

こうした背景には、スノードライブやクルマの基本原理に対する知識やノウハウが学べる機会も減っているということも影響しているのだと思う。一般自動車誌でも最近は見た覚えがないし、ネット上でもしっかり解説しているサイトは少ない。何より、一番影響力が大きいと言われるTVでも、スリップ現場の中継の際にキャスターなりコメンテーターが、スノードライブやスリップ時の対処について的を得たコメントなりアドバイスをしていたという記憶がほとんどない。

 

スノードライブに対する知識不足は、最近になって四駆ユーザーになったばかりのユーザーにも当てはまるのだが、心配なのがそんなビギナーが四駆は雪道に強いと、イメージだけでいたずらに過信してしまうことだ。確かに二駆に比べて圧倒的に安全に走れるし、上り坂でスリップするようなことも減るが、「止まる」ことに関する性能はほとんど変わらないばかりか、重量がかさむ四駆にとっては不利になる場合が多い。また、最近のクルマはスタビリティコントロールも性能が向上しており、雪道もハイアベレージで走れるようになってはいるが、その分コントロールを失ってしまった時に大きな事故につながる可能性が高くなる。もっともこれは、雪道にかかわらず四駆ユーザーであれば常に意識しておくべきことだ。

 

もうひとつ注意しておきたいのは、雪でスタックしている他車のレスキューである。雪の日に四駆に乗っていると、スリップして身動きができなくなっているクルマから助けを求められることも多い。そんなときは牽引ロープ等を使ってスタック車を動かすことになるが、その際相手のクルマが乗用車である場合はもちろん、自車がフレームのないSUVである場合は注意が必要だ。両車とも頑丈な牽引用フックが付いている場合はあまり問題ないと言えるが、今ドキのクルマには輸送時の固定用として使用する貧弱なタイダウンフックしか装備されていない場合がほとんど。そこに牽引ロープをかけて大きな力をかけると、フックやボディーの変形・破断などを起こしてしまう危険性がある。また、サスペンションのアーム類に牽引ロープをかけて引っ張るのも、よほどの緊急時以外はお勧めできない。ジオメトリーが変化したり、アーム類によって牽引ロープが破断してしまう可能性がある。牽引用の脱着式iボルトが用意されているクルマも多いが、バンパーのカバーを外して装着しなければならず、寒い中で面倒がらずにこの脱着作業を行う必要がある。それにほとんどの場合リア側には装着できないので、後ろ向きに牽引することは不可能なのだ。スタック車を後ろにしか引き出せない状況も多いのに…、である。また、ハイリフト車で車高が低いクルマを牽引する場合、バンパー等に牽引ロープが当たって傷をつけてしまう可能性もある。当然、オフロードでのレスキューのように、強くしゃくるようにして引っ張るのもNGである。

 

雪で他車を牽引しなければならない場合は、乗用車や乗用車ベースのSUVは「華奢」であることを意識しておきたい。他車からレスキューを求められた場合は、上記のことを説明し、リスクが伴うことを納得してもらった上で作業を行う方がいいだろう。善意で助けたつもりでも、後で恨みを買うことになりかねないのだ。まだこれから先も太平洋側の都心部で雪が降る日があるだろうが、愛車のことをよく理解した上で、くれぐれも安全で楽しいスノードライブを楽しんででいただきたい。

pajero先日実施された三菱SUVの雪上試乗会にて。パジェロのようにしっかりとした牽引フックが複数箇所に装備されていると、自車・他車のレスキューにかかわらずやはり安心だ。なお、この試乗会のレポートは近日中に公開する予定だ。