【BACKWOODS】 宮島秀樹

2016.5.27

    • コラム
    • 日産
  •  近年、首都圏周辺の林道に取材やツーリングで出かけると野生動物に出くわすことが多い。それは大半がシカであったりイノシシであったりするが、特に夜間では大きな群れが道を横切ったりしていて、ヒヤッとさせられたことが何度かある。よく取材で立ち寄る富士山麓の駐車場には、いたるところにシカの糞が落ちており、生息数の多さが窺い知れる。学生時代からもう30年以上林道ツーリングを楽しんでいるが、この10年ほどで、野生動物を見たり、その痕跡を見つけたりすることが大変多くなったと感じている。それ以前は、かなり山奥の林道であっても、野生動物の姿はおろか、糞などもあまり見た覚えがない。


野生動物とハンターと4×4

 

 実際のところ、ニホンジカやイノシシの個体数は、環境庁などが発表している調査データによればかなりの増加傾向となっており、日本クマネットワークによれば絶滅危惧種であるツキノワグマの分布(個体数ではない)も拡大傾向を示しているという。こうした野生動物の生息域の拡大は、自然保護の観点からとても喜ばしいように思える。

 

 しかしその一方では人間社会との軋轢も生んでおり、近年、人里およびその周辺での野生動物による被害が問題となっていることはご存知だろう。つい最近も、秋田でツキノワグマによる死亡事件が2件起き、その他の地域でも傷害事件が起こっている。また、イノシシによる傷害事件や食害も多数報告されているほか、シカの食害による農業被害や環境破壊も各地で大きな問題となっている。

 

 野生動物による被害増加の理由には、温暖化による生存環境の変化、天然林の伐採と植林、林業労働者の減少、山間集落人口の減少および高齢化とそれに伴う里山環境の荒廃、天敵(ニホンオオカミ)の絶滅など(クマの場合はシカやイノシシの増加に伴う食料植物の減少を挙げる人もいる)様々な要因が挙げられている。

 

 そのひとつとされているのがハンター人口の減少だ。特に1970年代に50万人近くいた銃猟者(銃による狩猟免許保持者)人口は、今や10万人以下となっており、狩猟免許所有者の約7割が60歳以上と高齢化もかなり進んでいる。実はシカやイノシシの場合、狩猟による(罠猟なども含む)年間の捕獲数は年々かなり増えているのだが、それでも個体数増加に追いついていない現状となっている。つまり、当面の対策としてはハンター人口の増加が必要なのだ。

 

 しかし、日本では銃の所持は厳しく規制されており、銃の所持許可を取得するためには、初心者講習に始まり、教習資格認定申請、教習射撃受講など数多くのプロセスを経なければならない(詳しくは姉妹サイトである『スポーツガンネット』を参照。http://www.sportsgun.net)。また、狩猟のためには、所持許可とは別に銃猟免許も必要とされるし、銃や弾の維持管理も警察によって厳しくチェックされるのだ。伊勢志摩サミット開催にあたっては、所持している弾薬をサミットまでにすべて使い切るよう通達があったというが、現役のハンターはこうした厳しい規則に対応するのが大変だという。数年前には狩猟税の減免措置が実施されたが、それでもやはり銃の所有は少々ハードルが高い。もちろん、こうした厳しい規制は必要なことだと思うが、ハンターに高齢者が増えていることを考慮すれば(射程が長く威力も高いライフルを所有するには、散弾銃を10年以上所有していることが原則的に必要となる)、「有害鳥獣捕獲」や「特定鳥獣保護管理計画に基づく数の調整」などのためには、特定の目的・条件下で、所持許可取得手続きを簡略化する、銃は公共機関や自治体などから一時的に借りてもよい(現状は自分で銃を購入しないと所持も許可されない。もちろん貸し借りは厳禁。他人の銃を触るだけでも銃刀法違反となる)などといった、より一層の規制緩和があってもいいのではないかと思う。

 

 また、現役のハンターからよく聞くのは、狩猟に使えるクルマの選択肢が少ないという不満だ。林道や雪道を走るのでやはり4×4が必要であり、仕留めた獲物の運搬を考えると、車外に積めるピックアップがベストだという。しかし、今や4×4のピックアップというと軽トラしかない…。走破性が高く、狭い林道での取り回しもいいので、軽トラ4×4は狩猟に最適なクルマであることは間違いないが、やはり居住性や装備に不満があり、長距離の移動に向かないという欠点もある。だからといってアメリカンフルサイズのピックアップはデカすぎるしガスも食うので、以前のハイラックスやダットラのようなミドルサイズのディーゼル・ピックアップを欲しがっている人も多いようだ。

 

 本来、4×4は軍用車・実用車として生まれ進化してきた。しかし、今ではクロスカントリー4×4を謳うモデルでも、その大多数が高級車としてのステイタスを築き、実用車として使われることはほとんどなくなってしまっている。それを否定するつもりは全くないが、せっかくの機能と実用性を活かせるモデルが少ないのは、やはり本末転倒である…とも思う。日本市場からピックアップやいわゆるスタンダードグレードの4×4の姿が消えてしまって久しい今だからこそ、ハンターに限らず、本当に実用的な4×4を欲しているユーザーもそれなりにいることだろう。そうしたユーザーの声に応えるため、そこそこの装備と燃費で、価格も比較的手頃なピックアップ4×4やバン4×4に再登場して欲しいものである。

2016052701-thumb-500x333-30450  写真の日産・NP350ナバラをはじめ、トヨタ・ヴィーゴ、三菱・トライトンなど、タイで生産されているミドルサイズ・ピックアップはどれも魅力的だ。排ガス適合やそれに伴うコストアップなどのハードルは高いと思うが、日本市場にもこれらの2.5リッタークラスのディーゼルモデルが投入されれば…と思う。トライトンや70ピックアップのような期間限定販売もアリだろう。