【BACKWOODS】 宮島秀樹

2015.12.25

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  • 「悲報と朗報」:  今冬は穏やかな陽気の日が多いこともあって、今ひとつ年末感が沸かないのだが、WEEKLY UPDATESも年内最後の更新となる。 


さて、4×4市場のこの1年を振り返ってみると、昨年のランクル70復活ほどの大きなトピックこそなかったが、マツダ・CX-3、レクサス・RX、スバル・クロスオーバー7、スズキ・SX4、スズキ・エスクード、ランドローバー・ディスカバリースポーツ、キャデラック・エスカレード、BMW・X1などが初登場したほか、三菱・アウトランダーやスバル・フォレスター、フォード・エクスプローラーなど、ビッグマイナーを受けたモデルも多数あり、4×4市場はこの数年来の堅調を維持している。日本自動車販売協会連合会(自販連)によれば2015年の国産「オフロード4WD」の販売台数は約36万台(12月除く)で、4年連続での増加となることは間違いない。海外メーカーも新型モデルの開発・リリースを加速しており、来年はジャガーやアルファロメオが新型SUVを投入するなど、4×4市場は活況と言ってよい状況が続いている。

 

しかし、この12月になって衝撃的なニュースが流れたことはご存知だろう。三菱がパジェロの新規開発の中止を決定したというのだ。最近まで首脳陣は次期モデルの開発を明言していたはずだが、次期RVRの発売を大幅に延期したことも大きく影響しているのだろう。パリ-ダカで一世を風靡し、日本の4×4市場を切り開いてきたモデルだけにネット上でも大きな話題になったが、筆者自身も、先にプレス関係者向けに実施された三菱4×4のオフロード試乗会においてパジェロの走破性の高さを再認識した直後だけに、この報道はショックであった。パジェロは3代目で四輪独懸にモノコックボディーという、当時の4×4としては斬新な手法を採り入れたのだが、それが賛否両論を引き起こしたことは記憶に新しい。これを多くのシリアスオフローダーがオフロード性能の低下と捉えたようだが、実際の進化の過程や開発経緯を知ると、それは一面的なものであり、究極のマルチパーパスカーとしてのパジェロの性能はかなり底上げされていることが理解できるだろう。これに関しては、ラリーストでパリ-ダカ優勝者である増岡浩氏と開発エンジニアの西岡芳樹氏、そして自動車評論家の吉田直志氏によるパジェロ座談会を是非ご一読いただきたい。http://www.mitsubishi-motors.co.jp/pajero/special/pride/talk/

 

パジェロ開発中止と前後して、次期ジムニーの開発も報道された。日刊工業新聞によれば、次期ジムニーは、ラダーフレームを採用し、高い悪路走破性など“原点回帰”しながら新装備を取り入れる方針、とのことだ。月販約1,000台で、ほぼ国内専用モデルのようになっているジムニーだが、次期モデルの開発とクロカン路線の継承に安堵しているジムニーファンも多いことだろう。“実際に”本格的なオフローディングが楽しめるクロカン4×4の牙城が守られたことは、個人的にも大変嬉しいことだ。

 

矢継ぎ早に大きな進化を目指したパジェロ、コンベンショナルなクロカン路線を踏襲しているジムニー。同じクロカン4×4ながら、両車の開発コンセプトの違いが現状の差の背景にあることは間違いない。技術の改革と進歩は自動車発展のために絶対に必要であり、またエンジニアの大きなモチベーションとなる。しかし、そこには残すべき、言い換えればユーザーが残して欲しいと思う技術や踏襲すべきコンセプトもあるはず。クルマとしての進化が正しくても、ユーザーの心に響かなければ、その真価や魅力はなかなか伝わらない。特に乗り心地やデザインにも増して、機能性、整備性、頑丈性を重視するユーザーの多い4×4には、そのバランスが難しい要件なのだと思う。

 

ここでパジェロ、ジムニーと並んで数少ない国産クロカン4×4のひとつ、ランドクルーザーについても触れておこう。レクサスブランドや海外モデルを含めれば非常に多彩なSUVラインナップを誇るトヨタだが、ランドクルーザーの名前が与えられているモデルには、初代から現行モデルまで、すべて頑強なラダーフレームとリア・リジッドアクスル、2速トランスファーが採用されている。そしてまた、モノコックボディーや四輪独懸のSUVに、サブネームとしてもその名が与えられたことは一度もないのである。それがトヨタのランドクルーザーに対するブランドアイデンティティーであり、ランドクルーザーたる所以だと筆者は思っている。

 

現代のクルマは、コスト削減を前提として同じプラットフォームを、まったく別のモデルで使用している場合が多い。今ドキのいわゆるSUVのほとんどがこれに当てはまるだろう。つまり乗用車と基本骨格は同じなのだ。そう考えると、プラットフォームを共有するモデルのないパジェロもジムニーも、4×4専用に作り込まれたかなり贅沢なモデルと言える。原点回帰がテーマという次期ジムニーの登場は今から大いに楽しみだが、パジェロも生産・販売は続けられるというのでひと安心ではある。現行ジムニーであるJB23Wは約17年にわたって生産されている実に息の長いモデル。それから比べると現行パジェロは登場から9年ほどだから、まだまだこの先もずっと生産を続けて欲しいと思うし、都会派SUVが増える中で、これからもオフロード4×4としての実力が色褪せることはないだろう。そして、その間に是非とも復活の機会を窺って欲しいと思う。
20151226現行ジムニーは1998年10月デビューの長ロングセラー。次期モデルは原点回帰とされているので、幌車の復活も期待してしまうところ。