あの丘を超えて、遙かなる地平線の先までも

2011.2.8

    • コラム
    • スズキ
  • APIO代表 河野 仁


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どうして四駆に憧れ、まだ見果てぬ地平線にロマンを感じるようになったのだろう。

 

思い返すと子供の頃自転車を手にいれて行動半径が一気に広がった。行動半径とは言い得た表現だ。半径は一周すると円になる。その中心となる軸はホームポジ ションすなわち家だ。そしてオートバイに乗るようになってさらにその半径が広がった。やがて日本にいると気が付かなかったが当たり前だと思っていた舗装路 は地球上のほんの一部でしかなく、海外へ行き市街地を抜けると、そこには遙か彼方に続く道なき道が広がっていた。1993年第2回ロシアンラリーの時であ る。そのロシアで元気よく走り回るJA11の登場したばかりのAT車をドライブしていたのが、尾上であった。その当時4200ccのランドクルーザーに 乗っていた私は、そうか日本にはわずか660ccの排気量で世界の辺境の地へ行き、数千キロの彼方へ到達することのできるジムニーというクルマがあるん だ!という事を実感したのが18年前の事である。

 

月日は流れて昨年は久しぶりに地平性が見える大地に立った。TEAM APIOラリーモンゴリアに同行して写真撮影をするためである。

 

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画像は2010ラリーモンゴリアの休息地ゾーモットで佇むTEAM APIOのジムニー4台。夜のゴビ砂漠には壮大なスケールで天の川が流れていた。

 

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朝起きてみると、山というほど高くはなく、丘というには少し大きな岩山のようなものがすぐ近くにあった。あの丘の向こうはどんな風景だろう?そう思った私はさっそく早速登って見ることにした。

 

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登りはじめるとしばらくして動物の骨らしきものがあった。どこまでも抜けるような蒼い空と大地があり、そして音は風の音だけが聞こえていた。さらにその風 の音も、岩と岩との谷間を歩くと突然スピーカーの電源を切ってしまったようにピタリと無音となった。空とは日本でも子供の頃に観た秋空はこういう色だった んだよなと思い出しながら歩いていくと、しばらくしてその丘、あるいは岩山の尾根に到達した。

 

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丘の上からゾーモットのキャンプ地を振り返ると、まさに絵に描いたようにこのオアシスの部分にだけ木々が生い茂っている。

 

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気になった丘の上の風景も想像したイメージ通りの風景が広がっていた。特に理由はないがなぜか印象深い一時だった。そして10年前のシルクロードを思い出した。

 

2000年に河西回廊の響きに惹かれシルクロードへ新婚旅行で訪れた。フォーバイフォーマガジン社主催の四駆での旅だった。途中岩肌に西夏文明が描かれた場所を訪れた。

 

井上靖著の「敦煌」にも登場する西夏文字だ。 中国の河西回廊にあたる部分は、中国の権力図が強い時はその支配下にあったが、ひとたび、弱体化するとすぐ西のウイグル族やその他の民族によって占領や支 配が繰り返されていたという。西夏はその歴史上にかつて存在したひとつの国だ。 200年間程の間に西夏は中国の漢字をベースに自国語を作った。いずれ滅 びることは知っていたのか、西夏文明の事について後世に書き残すために、その後の支配者がだれであっても理解できるようにウイグル文字、西夏文字、漢字の 3種 で書き残した書物も多くあるという。

 

この場所ではその大陸の数千年という長い歴史の片鱗を感じその時間にロマンを感じたが、このゾーモットとの近くに恐竜の谷と呼ばれている場所があるという。

 

恐竜がいた時代に遡ると人類の歴史がとても短く感じるほどに太古の昔だ。時空を超えた時のロマンだろう。

 

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どうして四駆に乗り、地平線にロマンを感じるのか。それは結局のところ子供の頃に自転車を買ってもらって行動半径が広がり、あの橋の先は?あの山の向こう は?という男の子が本能で持っていたはずの好奇心や冒険心が四駆、あるいはジムニーという道具としてそこに存在することに他ならない。

 

かつて四駆ブームが盛り上がって今はすっかり醒めてしまった理由に、そのかつては冒険や大陸をイメージさせるようなスタイリングを失ってしまい、不必要な豪華さや高級感、あるいはスポーツカーのような不要な丸みのあるスタイリングに走りすぎたことに尽きる。

 

その証拠には、そのテイストを持つFJクルーザーの方が、本家のランドクルーザーよりもデビューして日本に逆輸入されただけなのにまるで新車発売並に話題になっているし、伝統のJEEPにはその良さが受け継がれている。

 

今から思えばいろいろな四駆がおかしくなっていったのはワゴン車になってからだ。ランドクルーザーもジムニーも日本では4ナンバーとしてメーカーに製造して欲しい。スポーツカーや乗用車をトラックにしないように、四駆は昔の姿に戻ってこそ本来の魅力が出てくるはず。

 

幸いジムニーは10年を経過した今も、おかしなモデルチェンジをしなかったおかげで性能的にも佇まいとしても、かつての国内メーカー全てが持っていた四駆らしさを残している。

 

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小さなジムニーで、でっかく遊ぶ。その好奇心や冒険心をこのまま眠らせてしまうにはまだはやい。ジムニーを買うのは単にクルマを買うのではなく、それぞれ の探求心、好奇心、冒険心を沸き立たせ、そして実際に大陸を走るための行動の切符を購入する第一歩だと私自身がいつも思い描いている。

 

そしてそれに至るまでの日常でさえ、その地平線に向けて走る道につながっているのだ。

 

 

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