【インタビュー】モノ創りの現場から〜モトレージ岡本代表
2016.3.7
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インタビュー
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その他
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四駆に対する理解と愛情がすべての源泉
1982年の創業以来、 600点以上にものぼる自社開発製品をリリースしてきたモトレージ。
オールラウンドという発想とは真逆の「一個人・一仕様」という姿勢がモノそしてクルマ造りに、貫かれている。
岡本氏とのインタビューから四駆と向き合うヒントを探り出そう。
車種や使用環境を想定し
創り上げるパーツとクルマ
本格派が指名するメーカー兼専門店として、高い評価を得ているモトレージ。何より驚かされるのが、数え切れないほどのオリジナル製品群だ。これは単にアイ テム点数を追ったという訳ではなく、絶対に必要と思ったもの、他では造られていないものを吟味した上で、造り続けて来た結果なのだという。
確かにアンダーガードひとつとっても、車種ごとに肉厚や素材を設定している。一見ドレスアップ用と思われるフロントスポーツグリルでも、開口面積の拡大に よる冷却効果を高める形状を採用するなど、すべてのアイテムに、デザイン性だけでなく機能的な必然性がもたらされていることが判る。
「お客様から、クルマ創りのご相談を頂いた際に、まず第一に、使用環境やその目的をお尋ねしています。 例えば、四輪独立懸架の車両で、ハードなオフロードに持ち込みたければ十分な強度を持ったアンダーガードは必須。前後リジットの車両なら、段差を超える際 も、脚を伸ばしながら低速でゆっくり走り抜けられます。でも独懸車はリジット車に比べサスペンションストロークが短いため、場合によっては突撃(車速をつ けて一気に乗り越える)しなければならない。だからダメージ対策のガードは不可欠なんです」。
この言葉からも、一車種一仕様という考え方のさらに先を見据えた「一個人・一仕様」という、岡本氏のモノ創りに対する姿勢をうかがい知ることが出来る。カスタムには四駆に造詣が深い専門店との相談が大切、と指摘される所以だ。
車種により戦略が変わるカスタム術
プロの秀でた知見を取り入れよう
モトレージの数あるアイテムの中で、近年特に人気が高まっているのが、期間限定で再販が話題となったランクル70と根強い人気のFJクルーザー用パーツだという。
ナナマルはバン用に加え、ピックアップ用リーフもラインナップ。改めて説明するまでもなく、ピックアップはバンに対しホイールベースが450mm長く、全体の販売台数に占める割合も3割弱という理由からか、国内で専用リーフを製作しているメーカーは数少ない。
しかし、以前からナナマルパーツを徹底的に追求しているモトレージでは、ピックアップ専用リーフを開発。76と合わせると、4種類のリーフをリリースし た。この他、岩場などでのバック時に、ダンパーの付け根部分を守る「ショックガード付きリアUボルトスキッドプレート」の製品化をはじめ、本格四駆ならで はの頑強なガード類を続々とリリースしている。
一方、そのカジュアルなイメージから、ドレスアップ指向のユーザーにも人気のFJクルーザーだが、岡本代表はこのクルマを、本格四駆として高く評価する。
「フロントはストローク量が制約されますが、リアの動きを高めることで、走破性は格段に向上します。電子デバイスも大きな武器。ローレンジをしっかり備えた車両なので、本格四駆の仲間に加えるべき一台だと捉えています」。
この車両に加え、ディフェンダーを筆頭とするランドローバーの各モデルについても並々ならぬ思い入れがある。様々なトラブルシューティングに加え、AT限 定免許でも乗ることが出来るクラッチペダルレス・手元スイッチ式機構「アクティブクラッチ」など、ユニークな提案も行っている。
「ディフェンダーは、まだランドローバー90、110と呼ばれていた時代から、手掛けてきたクルマです。国産車のようにメンテフリーで乗れる車種ではあり ませんが、しっかり手をかければ、想像以上のパフォーマンスを発揮してくれます…」と、「モノ創り」に対する言葉は、さらに熱を帯びる。
全国各地には、モトレージのように特定のブランドや車種をとことん追求し続ける四駆チューナー達が多数存在する。自身では、思いもよらなかった発想や提案をしてくれるところもまた、四駆専門店の魅力のひとつと表現出来るのではないだろうか。
もしもの時に備えて四駆を
震災経験者として伝えたいこと
モトレージの所在地は神戸市東灘区。今から20年前に発生した「阪神淡路大震災」によって、深刻な被害を受けた地域である。同店は建物の崩壊こそ免れたも のの、周辺には瓦礫が積み重なり、交通は完全に寸断されるなど大変大きな被害を受け、生活基盤を回復させるまでには、数ヶ月の時間を要したという。このと き、救護や物資の運搬などに大いに役立ったのが四輪駆動車だった。
「大規模震災直後には、警察、消防とてすぐに駆けつけることは出来ない。特にあの時は、警察署、消防署も倒壊や何らかのダメージを受けてしまいましたし、 助けを呼びたくても2日間電話さえ繋がらない…。怪我人を病院に連れて行ってもごった返しているし、病院の設備が十分な機能を果たせていない。まさに 自分の身は自分で守るしかない、という状況でした。
この時、四駆の存在意義を痛感しました。もし可能なら、大切な人が傷を負った時でも、医療が可能な場所まで移送させる手段として、ローレンジ付き四駆それ も欲を言えば、デフロックやウィンチを装着した四駆を手元に一台置いておくことをお勧めしたいですね。そして出来ることなら、オフロード走行をはじめウィ ンチ等レスキュー道具の正しい使い方も身につけたい。そんな目的から、四駆ショップとお付き合いが始まっても良いと思うんです」。
5度のアジアンラリー参戦、英国におけるキャメル・トロフィー国際トレーニングへの参加など、オフロードでのレスキュー経験が豊富な岡本代表ゆえ、その言葉の重みが胸を打つ(ちなみに同氏は震災後、日本赤十字の救急員講習も受講している)。
レジャーやモータースポーツ用のためのアイテムとしてだけでなく、時には緊急時に身を守るための 、そして人助けに繋がるサバイバルツールとして向き合う。そんな意識を頭の片隅にでも持っておくことは、四輪駆動車に対する、正しい理解の拡大にもつながるだろう。
モトレージ代表:岡本元良氏
パーツ開発への思いは、還暦を過ぎた今でも熱いままだ。世に出ることを待っているパーツ達が、まだまだ沢山あるという。
四駆業界団体JAFEAの前身であるJOA会長を4年間務めるなど、業界発展のために大きく貢献している。四駆カスタム業界の立役者なのだ。