【林道ツーリング】福島県/林道古桧峠線他

2015.9.4

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1507-mag-01未走行の林道にチャレンジ!

青森県相馬村から秋田県田代町を結ぶ、約53kmの『田代相馬林道』、日本海に面する青森県西津軽郡深浦町から弘前市まで、青森を東西に走る約42kmの『白神ライン』を筆頭に、東北には10km以上のダートが続く林道が多数存在する。

 

『白神ライン』は十数年前に走ったことがあるが、ブナの原生林の中をひたすら走るロングダートに大感激! そこは古代から続く手つかずの大自然が広がっており、筆舌に尽くしがたい感動を覚えた。林道好きになった大きなきっかけのひとつでもある。

 

「いざ、東北へ!」と言いたいところだが、相棒の山岡カメラマンとのスケジュールが合わず、確保できたのはいつも通り2日間のみ。そこで東北地方の南部、ミドルクラスの林道の宝庫『福島県南会津』に行くことに決めた。

 

『七ヶ岳林道』や『玉川林道』、『黒沢林道』などの候補の中から選んだのは『七ヶ岳林道』。詳しく調べたら手持ちの地図に載っていない複数の林道と繋がっていることが判明したからだ。

 

計画を立てた後に台風が発生して天候が危ぶまれたが、そこは『驚異の晴れ男』を自負する我々ふたり。1日目は台風一過により、朝から雲ひとつな い晴天に恵まれた。朝から異様な暑さに見舞われた中、東北自動道を北へ向かい、『西那須野塩原IC』で一般道へ下りる。そして国道400号線でさらに北を 目指す。

 

福島県に入り、7〜8km走った辺りが林道へのアプローチとなる。国道から左に入って集落を抜けしばらくすると分岐となり、林道名が記された杭 が立てられていた。右側が『古桧峠線』で左側が『富貴沢線』だ。どちらにするか迷った結果、距離の長い『古桧峠線』を選んだ。どんな林道なのだろうか? ワクワク感が堪らない!

 

1507-mag-02『富貴沢線』との分岐を過ぎてすぐに広がる『古桧峠線』の広々とした風景。

標高1,000mちょっとの山々が立ち並ぶ大パノラマは、東北地方ならではの魅力なのだ。

 

 

期待以上のロケーション!

『富貴沢線』との分岐までは舗装路だったが、すぐにダート路面となった。そして木々に覆われた薄暗い道が続くかと思いきや、いきなり壮大な景色が目に飛び込んできた。左に開けた景色が広がり、鉄山や黒森山が眺望できるのだ。

 

以前走ったことのある『七ヶ岳林道』は、半分から南側の景色が全く望めなかったので、周辺の林道も同じだと思っていたから驚いた。標高 1,000mほどの低山だが、高さなど関係ない。通い慣れた信州では、決して見ることの出来ない広々とした景色。これが東北の林道ならではの魅力である。 スタート早々、筆者、Yカメともに気分が高まった。

 

1507-mag-03林業が盛んなため、路面はキレイに整備されている。数カ所に倒木があったが、いずれも軽自動車が通れるように処理されていた。ジムニーの有り難みを実感。

 

 

しばらくすると木々に囲まれて山々の景色は遮られたが、広葉樹の明るい緑の世界が心を癒やしてくれた。路面はフラットダートで走りやすく、平日 ということもあり(休日でも?)我々の他に走るクルマは1台もない。エンジンを止めると聞こえるのは木々のざわめきと、野鳥の鳴き声のみ。大自然を独占で ある。

1507-mag-04鮮やかな緑を身に纏う広葉樹が多いため、木々に囲まれていても視界は明るい。深い山奥なので、空気がとても新鮮で気持ち良い。

 

 

途中に広場があったので、ひと休みすることに。「せっかくだからコーヒーでも湧かすか!」と思いきや、ふたりとも愛用のコーヒーセットを「自分 のクルマに積んだままだ…」。仕方なしにコンビニで買った缶コーヒーを飲むが、それでもいつもより美味しく感じる。これまた林道ツーリングならではの 魅力だ。

 

支線を見つけては走り、行き止まりで引き返すを繰り返すこと数回。下りにさしかかったし、昼食時間を超えていたので、一度国道に戻り食事を取ることに。もちろん食事後も再び走るつもりだ!

 

1507-mag-05支線は荒れている場合が多い。ジムニーでもスクラッチは必至だが、それくらいで引き返したら勿体ないので前進を続ける。この後に素晴らしい風景が広がっていたので大正解!

 

1507-mag-06七ヶ岳林道の途中にある、穴場ポイント。ご覧のように河原まで下りられるので、休憩するには持ってこい! 川の水は綺麗でとても冷たかった。

 

 

予想外の光景に思わず唖然!

お腹を満たしたところで、今度は七ケ岳林道からアプローチ。七ケ岳林道は今でも林業に使われているために路面整備が行き届いており、とても走り やすい。約16kmものダートが続く、走り甲斐のあるとても素晴らしい林道だ。そのまま本線を進んでもいいかな〜と思っていたら、左に支線を発見。通行止 めされていなければ再び七ヶ岳林道と合流するので、迷うことなく進むことに。

 

さすがに支線は使われていないのか、倒木はそのままで道脇の草木は伸び放題。ゆっくり走っても「キィー、キィー」とJB23のボディを引っ掻 く。ボディが凹んだり、横転の危険性が高いのならば回避するところだが、スクラッチ程度で引き下がるのは何とも悔しい。しかし自分の愛車ではないから、傷 付けるのは心苦しい。

 

「でも、こればかりは仕方ないよな? ワザとキズ付けているんじゃないから、JB23も分かってくれるさ!」と無理矢理な言い訳で、その後もいくつかの支線をアタック。思っていた通り、どこも荒れ放題でJB23のボディは悲惨な状態になってしまった…。

 

いい加減JB23が可愛そうだから…と七ヶ岳林道に戻ろうとしたら、今度は道幅が広そうな支線が現れた。ここまでスクラッチが付いたんだから、もう行くしかないだろ! その判断は大正解であった。

 

稜線に出て視界が広がり、さらに進むと山火事現場のような荒涼とした景色が現れたのである。「うわっ! なんだこれ?」。「まるで地獄だな」。鮮やかな緑に包まれていた状態から一転、真っ黒に焼けた山肌が広がる光景を見て、筆者、Yカメともに驚いた。山焼き を行ったばかりのようで、こんなロケーションに巡り会えることなど滅多にない。なんとも稀少な体験ができて大満足であった。

 

1507-mag-07野焼きが行われた山に伸びていた林道に進入。普段は使われていない道なのか凸凹が強烈で、道幅も狭くてかなりスリリング。かなり楽しめた。

1507-mag-08山(野)焼きが行われ、荒涼とした雰囲気が漂う。多分、今頃は新緑が芽吹いていると思うから、なんとも貴重な体験であった。

1507-mag-09七が岳林道の周辺には地図に掲載されていないダートが多数走っている。1日掛ければ全てを走りきれるだろう。いつかチャレンジしてみたいものだ。

 

 

その後も支線を走り継ぎ、国道に近くなったら見覚えのある場所に辿り着いた。そう、本日最初のスタート地点だった『古桧峠線』と『富貴沢線』の 分岐点である。まだ走っていない支線があるかもしれないが、これでほぼ一周が完了。陽も傾いてきたので宿に向かうことにした。走行距離、走りの内容、ロ ケーションとも十分に満足。心置きなく温泉に浸かって寛ぐぞ!

 

夜の露天風呂は最高だ~

今回の温泉地は福島県南会津郡下郷町にあり、奈良時代からの歴史があると言い伝わる『湯野上温泉』だ。『猿湯』と『上ノ湯』、『姥湯』、『舘ノ 湯』そして『舘新湯』と5つの源泉があり、大川の渓谷沿いに18軒の旅館・民宿が建っている。また湯野上温泉駅の駅舎は茅葺き屋根の日本家屋で、敷地内に は無料の足湯が設置されるなど観光スポットとしても有名。待合室には茅の虫除け用の囲炉裏が備えられ、有人時間帯には火が入れられている。

 

そんな『湯野上温泉』の中から選んだ宿は『民宿 紫泉』。もちろん決め手となったのは、温泉のロケーションと料理、そして接客サービスだ。

 

1507-mag-10『湯野上温泉』の人気温泉宿『民宿 紫泉』。アットホームな雰囲気で、とても居心地が良い。

http://aizu-sisen.com/

 

 

温泉は内風呂と露天風呂を備えていて、24時間入浴可能。いずれも源泉かけ流しだ。露天風呂の脇には大川が流れていて、宿の反対側には緑の森が 広がっている。明るい時間帯も良いが、オススメの時間帯は夜だ。聞こえるのは川のせせらぎと源泉が流れ込む音、そして風が吹いた時の木々のざわめきのみ。 この自然音の三重奏に加えて、都会では絶対に見ることの出来ない満点の星空が心を癒やしてくれるのだ。

 

 

夕食のメニューは地元の旬の素材を活かした郷土料理。梅肉風味のカレイの煮付けや岩魚の唐揚げなど、見たことがあるようで趣向を凝らしている。とても丁寧に調理されているのが良く分かり、味付けも申し分なし。民宿のレベルを超えた料理である。

 

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地元の旬の素材を活かした食事。調理に工夫を凝らした郷土料理で、食材が持つ本来の味を美味く引き出している。高い人気も納得である。

 

 

何より驚かされたのが、その料金。いつもの感覚から、ひとり最低1.3万円と思っていたら、なんとふたりで約2万円!湯野上温泉はそれが相場だというのだから、コストパフォーマンスが高い! 是非ともまた訪れたい温泉地だ。

 

1507-mag-13a源泉かけ流しの露天風呂。無色透明の単純泉だが、湯から上がった後もなかなか身体が冷めない。温めだからのんびりと浸かっていられるのも魅力だ。

 

1507-mag-141日目の昼に食べた『ラーメンまりんちゃん』の『ソースカツ丼』。食べログで福島県1位に輝いたというだけに味、食感ともに大満足!福島県南会津郡南会津町田島谷地甲2-2

 

1507-mag-15湯野上温泉の駅舎は、なんと茅葺き屋根の日本家屋だ。現在、茅葺き屋根の建築物を採用している駅舎はここだけとか。中には囲炉裏が設置されている。