【林道ツーリング】茨城県/花園林道他

2016.12.24

    • 林道ツーリング
    • スズキ

mag-1612-01針葉樹に覆われた花園林道。雲ひとつない晴天にも関わらず、薄暗い闇の世界を創りだしている。路面整備が行き届いていて走りやすい。

冬場に残しておいた隠し球

2015年の初夏、福島県いわき市にある鶴石山周辺の林道群を走り回った。「あんこう鍋」に釣られて茨城県の平潟港にある宿まで足を伸ばしたのだが、その宿を地図で探している時に面白そうな林道を発見した。それは福島県との県境近くにあり、4.8㎞、8.3㎞、5.6㎞と3本のミドル級ダートが繋がっているのだ。かなり魅力的な林道地帯である。

 

気になったので「今度走りに来よう!」と少し調べたところ、常磐道・北茨城ICから約30分とアクセス良好。またほとんど雪が積もらないため、冬季でも閉鎖されずに通行できることが分かった。「ならば冬場に…」と、一年半の間キープしていた隠し球である。

 

常磐道を北上して北茨城ICを目指す。今回の足は筆者の愛車、ジムニーJB23-7型である。ただしノーマルではない。流行の純正コンピューター書き換えに加えてハイフロータービンと大容量インジェクター、大容量燃料噴射ポンプなどを装着してチューニング。最高出力110馬力、最大トルク14.8kg-mを叩き出すから2名乗車プラス50㎏以上の荷物を積んでいてもストレスなく加速するのだ。おかげで北茨城ICまで約180㎞、2時間のドライブはノーマルでは味わえないほど快適だった。

 

今回走る予定の林道は『花園林道』と『大金田林道』、『七ツ滝柳沢林道』の3本。それぞれの距離は4.8㎞、5.6㎞、8.3㎞で、花園林道を中心に繋がっている。その花園林道と七ツ滝柳沢林道の入り口は『花園神社』の駐車場にあるので、迷うことなくアクセスできた。

 

走る順番は、七ツ滝柳沢林道→県道111号→大金田林道→花園林道、もしくはその逆なのだが、県道111号側の大金田林道の入り口はチェーンが掛けられていることが多いとか。となると両方のパターンでもピストンが必至…。全体の走行距離を考慮して、花園林道から走ることに決めた。

 

花園林道は現在でも林業に使用されているため、所々に伐採された樹木が置かれていたり、作業用広場が設けられている。平日に訪れたために作業車とのすれ違いを覚悟したが、休業日(冬期休業中?)なのか、結局1台のクルマとも遭遇しなかった。

 

植樹されているのは松や杉などの針葉樹で、発育した高樹が太陽の光を遮り、林道を薄暗く包み込んでいる。眺望は楽しめないが道路脇に沢が流れていて、歩いてなら河原に降りることが可能。デイキャンプが楽しめそうだ。

 

mag-1612-02花園林道の脇には沢が流れている。クルマで降りられる所は見つけられなかったが、デイキャンプに最適な広場がいくつもあった。

 

 

mag-1612-03林業が盛んなため、伐採(間伐)されている所が多い。全体的に勾配がきつくて、ほとんど2速、場所によっては1速で走った。

 

 

mag-1612-04凸凹はそれほど大きくないが、進行方向に対して90度に設けられている排水用の溝は深い。くれぐれもスピードは控えめに!

 

 

mag-1612-05途中で見かけた丸太橋。その先に楽しそうな道が延びていたので渡りたかったが、筆者が歩いただけでも揺れが激しいので断念。

楽しそうな支線が多い

今でも林業に使われているため、路面の整備は行き届いており、フラットダートで走りやすい。しかし勾配がきつくて、2速(ハイレンジ)だとエンジンがストールしてしまうことが多い。また道幅が狭いコーナーが多くて、運転にはかなり気を遣う。距離以上に走り応え(疲労)を感じさせる林道だ。

 

地図に記載されている通り、約4.8㎞走った所で大金田林道の分岐と合流。左は1.5㎞ほどで舗装路となり、右側は県道111号に繋がっている。先に左のルートをピストンしようとしたら通行止めなので必然的に右ルートを進むことに。もし出口にチェーンが掛かっていたらピストンすることになるのだが、果たして…?

 

手持ちの地図には記載されていないが、途中で数本の支線を発見した。整備されていて走りやすそうなルートだが、残念ながら全て入り口にチェーンが掛けられていて進入できず。他にユンボが通っただけのルートも数本見つけたが、こちらは単独行だとキツそうなので断念することに。2、3台で来たらかなり楽しめるだろう。

 

いつも通り(?)、雲ひとつない晴天に恵まれたのはイイのだが、樹木の間から陽が射し込む所と陰になっている所のコントラストが強すぎて、目のオートフォーカス機能がフル活動。歳のせいもあるが、ゆっくり走っていても非常に目が疲れる。まぁ雨が降るよりかは断然良いので、贅沢な問題と言えよう。

 

県道111号線との合流地点にチェーンは掛けられていなかったので、そのまま右折して次なる『七ツ滝柳沢林道』を目指す。舗装路の移動距離は3㎞と短く、数分で入り口に到着した。本日最後、約8.3㎞のダート路を突き進む。

 

花園林道と大金田林道の樹木はほとんどが針葉樹だったが、この七ツ滝柳沢林道は所々で広葉樹が育っている。紅葉の季節に訪れたら、美しい風景を堪能できそうだ。鮮やか新緑に包まれる春に走るのもイイな!

mag-1612-06七ツ滝柳沢林道は広葉樹が植生していた。春や夏は鮮やかな新緑、秋には見事な紅葉が楽しめるだろう。

 

 

気が付いたら昼食時間がとっくに過ぎていた。近場に食堂がないので、今回のメニューはカップラーメン&コンビニのおにぎりだ。沢沿いに広いスペースがあったのでクルマを停めてランチタイム!

 

この日はやや強めの寒気団に襲われて、水溜まりも氷が張るほど冷え込んでいる。そんな寒さの中で食べるカップラーメンの美味さは別格だ。食後は珈琲で一服タイム! この過ごし方が何とも言えぬ贅沢なひと時で、林道ツーリングの大きな魅力である。

mag-1612-07休憩に最適な広場があったので、ランチ&コーヒータイム。寒かったから、カップラーメンとコーヒーが、いつにも増して美味かった。

 

 

休憩していると一台(乗員はドライバーのみ)の乗用車が反対方向から走ってきたのだが、しばらくしたらUターンして来てそのまま帰っていった。多分、花園神社に来た人が林道とは知らずに進入し、凸凹の大きさや閑散とした雰囲気に不安を感じて引き返したのだろう。四駆なら楽しめたのに! その人がのんびりと寛いでいる我々の姿を見て「四駆なら良かったな…」と思ってくれたら嬉しいモノだ。

500年の歴史を誇る古湯

今回の温泉宿は、この林道地帯から30分の距離にある『湯の網鉱泉 鹿の湯 松屋』。『あんこう』の水揚げで有名な平潟港から直線距離で4㎞も離れていない、のどかな里山にある一軒宿だ。

 

鉄分を多く含んだ『赤褐色の湯』として有名で、多くの温泉好きが足を運んで来るという。開湯は約500年前の文明年間まで遡る。傷付いた鹿が湧き出る泉に浸かって治している姿を見た里人が『鹿の湯』と名付けたのが始まりと言い伝わるらしい。

 

お湯は見事なまでに赤褐色をしている。詳しく聞けば『湯の網』の言葉通り、「湯が網の目のように…」は大袈裟だが、数カ所から湧き出ているとのこと。それぞれを溜めておき、順番に使い分けている。比重のある鉄分は流されにくいから、貯蔵している間に色が濃くなるのだろう。

 

温度はぬるめで、鉄分特有の臭いもないから長湯が可能…と思いきや、鉄分が多いためか体の芯まで温まるのが早い。とても良いお湯なので、1日目に2回、2日目も早朝と朝食後の2回、計4回も入浴したのであった。

 

夕食は『キンキの塩焼き』が定番料理で、他に刺身の皿盛り、舟盛り、海鮮鍋、カニなどの特別メニューが用意されている。漁港が近いので、ネタはとにかく新鮮で美味い! 最上級メニューでも大人ひとり約1.2万円だから、コストパフォーマンスは高いと言えよう。

 

古い建物や静寂した雰囲気などから『ひなびた一軒宿の温泉』という表現がピッタリ。ご主人や女将さんのお持てなしも心温まるもので、筆者のお気に入りリストに追加された。「また来たい!」と強く思わせる宿であった。

 

mag-1612-08美味しい珈琲が飲みたいなら、住宅街から少し離れた場所にある喫茶店『岩塙山荘珈琲店』がオススメ。こだわりの自家焙煎コーヒーと自家製ケーキで人気が高い。
北茨城市関本町福田1476-10

 

 

mag-1612-09旬の魚で作る舟盛り。この日のネタはマグロ(赤身、トロ)とヒラメ、イカ、サーモン、そしてアジ。どれも新鮮で美味い!

 

 

mag-1612-10キンキの塩焼き。大型オーブンで30分近くかけて焼くという。皮はパリパで、中身は脂がのっていてプリプリの歯ごたえ。塩加減が絶妙!

 

 

mag-1612-11大正ロマン溢れる造りの大浴場。含有する鉄分が多いため床一面も赤茶色に変色していて、長い歴史を感じさせる。

 

 

mag-1612-12木造の家屋で造りは古いが、それだけにひなびた雰囲気が漂う。奥行きがあり、中に入るとその規模の大きさに驚かされるだろう。

湯の網鉱泉 鹿の湯 松屋/http://www.jsdi.or.jp/~yunoami/

 

 

mag-1612-13太平洋が望める洋食食堂『マルサーラ』の自家製ドミグラスソースを使った牛すじ煮込み。コンテストで賞に輝いたというだけに、通い詰めたくなるほどの美味さだ。
http://happytown.orahoo.com/marsala/

 

 

文/内田 靖 写真/山岡和正