【紹介/試走】BMW MINI COOPER-D CROSSOVER ALL4

2016.8.20

    • プレミアムSUV
    • BMW

小型ディーゼルの可能性を実感!

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期待のディーゼル+4×4(ALL4)
クロスオーバーが唯一の選択肢

20160820012ドア・コンバーチブルから3ドア/5ドアのハッチバック、SUVのクロスオーバー、観音開きのテールゲートを持つクラブマンまで、多岐にわたるバリエーションと際立つ個性で人気のBMWミニ。

 

我々四駆ファンが気になる「ALL4(オールフォー)」、つまり4×4モデルは、現在5ドアモデルにのみ設定されている。欧州では3ドアモデルの「PACEMAN(ペースマン)」にも設定されているが、現在日本で4×4モデルが選べるのは「CLUBMAN(クラブマン)」と「CROSSOVER(クロスオーバー)」のみだ(※厳密に言えば合計6枚のドアがあるクラブマンも便宜上5ドアとされている)。

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今回の試乗車両は、シリーズ最長ボディーの「クラブマン」に次ぐ全長とホイールベースを持つ「クロスオーバー」のALL4。クリーンディーゼル搭載車COOPER-Dである。

 

3ドア・クーペのペースマンとシャーシーを共有し、欧州マーケットでは「COUNTRYMAN(カントリーマン)」という車名で販売されているこのクロスオーバーは、ディーゼルMINIの4×4としては唯一の選択肢(日本仕様車)だ。

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最高出力112PS/最大トルク270Nmと、数値は控えめながら、車両重量1.5トンに満たないコンパクトな車体には充分なパフォーマンスが期待できそうな2リッター直4-DOHCディーゼル。データでは従来型を上回る低燃費も謳われており、「欧州での販売では全体の6割以上がディーゼル車」という実績を誇るBMWだけに期待も高まる。

 

また、コンバーチブル以外のモデルには全てディーゼル車の設定があることも、多くのユーザー予備群に歓迎されそうだ。

常にトルクの厚さを感じるエンジン
独特なマニュアルシフト操作

クリスタル・シルバー・メタリックのボディーペイントにブラックのボンネット・ストライプ、5スター・トライアングルスポークのアロイホイールは、いずれもオプションの装備だが、どちらかというと可愛らしさがウリのMINIを精悍なイメージに変身させている。

 

インテリアは相変わらずの円基調デザインだが、不思議とオモチャっぽさを感じないのは素材の質感のせいだろうか。惜しむらくは、センターメーターの中心がオプションのナビゲーションパッケージに含まれる四角い液晶ディスプレイに占領され、せっかくのデザインの面白味を半減させているところ。ここはぜひとも本来のアナログメーター・デザインを優先させて欲しい。

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全て手動のシートポジション調整を済ませ、早速走り出す。出足は軽快だが、アクセル操作に神経質に反応するような敏感さはない。アクセルをグイッと踏み込むと、ジワッとトルクの太さを感じさせつつ力強い加速に移る…という感覚だ。電子油圧制御式の6速AT、ステップトロニックのシームレスかつスムーズなシフトアップは快適。ただ、パドルシフトによるマニュアル操作では、よくある「左=シフトダウン、右=シフトアップ」といった一般的な操作法ではなく、パドルを押すとシフトダウン、引いてシフトアップで、これが左右どちらも同じ機能…というやや風変わりな方式が以前から採用されていて、かなり違和感を覚える。

 

エンジンはさすがの新世代ディーゼルらしく、低回転域からグイと立ち上がり、回転を落としてもよく粘り、常にトルクの厚さを感じる。高速での追い越し加速も申し分なし。メリハリあるドライビングが楽しめる。ただし、加速時ははっきりディーゼルと分かる特有のノイズを発生する。このあたりは、聞き耳を立てないとガソリンエンジンとの識別が難しいレベルのBMW製3リッター直6ディーゼルとは異なる点だ。

安定のワインディング走行
万が一!?のオフロードでも安心

フロント:マクファーソンストラット、リア:マルチリンク式のサスペンションには、特に電子制御の仕掛けはないものの、この元気なエンジンとコンパクトボディーのマッチングを存分に活かすことのできる優秀な脚だ。見た目の印象とは違って、どっしりと落ち着きのあるサス設定は、コーナリング時にも常に四肢を安定させてくれる。クロスオーバー=SUVという位置付けのためか、タイト感はありながらも、乗り心地の良さは犠牲にしない方向のセッティングで、あくまでも快適、安定志向の乗り味である。マニュアルシフト操作のレスポンスも大らかなので、コーナーを攻めたい向きには、M/T車をオススメするしかないが、M/T車が選べるタイプにALL4の設定はないのが玉に瑕だ。

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一般的に“クロスオーバー(カテゴリーの枠を越える)”を謳うモデルなら、それを使うシチュエーションを想定しているかどうかは別として、「ヒルディセントコントロール」や「オフロードモード」的なスイッチを設け、機能拡張をアピールするSUVも少なくない。しかし、このミニにはその手の演出もアピールも見当たらないので、オフロード走行は想定されていないと考えるのが妥当だろう。

 

ただ、ホームページには「走れない道はありません。岩だらけの道に乗り出す準備はいいですか?」との頼もしい一文があったので、最後に少し砂地を走らせてみた。

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駐車場にも使われている固く締まった砂浜とは言え、電子制御によるトラクション・デバイスの介入がハッキリと認識できる程度のこのような砂地では、その効果が実感でき、スムーズな走行が確認できた。

 

ここは4×2のワンボックスや乗用車が立ち往生している場面を時々見かける場所だが、こういう場所に安心して入っていけるだけでも、4×4に充分なメリットを感じるSUVオーナーは多いはずだ。

 

高速道路、自動車専用有料道路、市街路、ワインディング、砂地、渋滞した道路も含めて約250kmの走行で、燃費はリッターあたり13.1km。急発進、急加速等も繰り返し試したうえでの数値と考えれば、これは優秀な結果だ。撮影時(7月下旬)で軽油価格は80円/Lだったので、やはり割安感は相当高い。何より、それを抜きにしても、ドライブが楽しいエンジンであり、サスペンションであることが重要。経済性だけでディーゼルを選ぶ時代はとっくに終焉しているが、それをあらためて感じたのがMINIであったことが新鮮な経験だった。

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【エンジン】
20160820eng1,995cc 直列4気筒DOHCディーゼルエンジン。最高出力82kW(112PS)/4,000rpm、最大トルク270Nm/1,500〜2,500rpmを発生する。アイドリング時はややカラカラ音大きめ。
【騒音計測データ】
●車内・・・・46.0dB
●ボンネット閉・・・・72.5dB
●ボンネット開・・・・76.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。

 

20160820inst上:MINIならではのアナログメーター。凝ったデザインのセンターメーターにオプションの液晶画面は残念。
下:先代モデルと変わらない印象だが、パワーウインドゥスイッチをセンター部からドアに移設するなど、細かい匠変更が行われてきたインテリア。

 

2016082014トランスミッションは、6 速AT(ステップトロニック付)を採用。シフトレバーの手前にはナビゲーションシステムやオーディオ関係の操作用スイッチ、ジョイスティックが配置される。

 

2016082015霧灯、ATシフトモード、ドアロック、EBD解除等の、関連性のない各種スイッチが並ぶセンターコンソール部。

 

20160820seat手動調整式のフロントシート(右)。リアシート(左)は3人掛けでスライド、リクライニング不可。

 

20160820rearリアシートの背もたれは40:20:40分割式で、4人乗車+長尺物積載も可能。オプションのランフラットタイヤ装着につき、ラゲッジルームの床下は収納スペースとなっている。

 

20160820susフロントサスは、ストラット式(上)、リアサス(下)はマルチリンク式コイルの独立懸架。

 

2016082024タイヤサイズは205/55R17。ホイ-ルは7.0J×17サイズの「5スター・トライアングルスポーク」を装着。

 

文/内藤知己
写真/佐久間清人