【紹介/試走】FIAT PANDA 4×4

2015.2.13

    • 四輪駆動車
    • ヨーロッパ車

オーナーを選ぶ個性派ヨーロピアン・コンパクト

s_IMG_3362

現行モデルは第3世代、340台限定発売

s_IMG_2787コンパクトで軽量な4×4の楽しさと走破性能の高さは、それをオフロードで走らせた経験のあるドライバーなら誰もが認めるところであろう。

 

日本ではスズキ・ジムニーがその最右翼ということになろうが、欧州製でその手の小型4×4というと、このパンダ4×4がまず思い浮かぶ。

 

今でこそFFの乗用車をベースとする4×4はすっかり当たり前になっているが、商用バンやトラックをベースとする四駆がSUVの主流だった頃からこのフィアット・パンダ4×4は、ちょっと異色の存在だったと言える。

 

1983年にデビューした初代モデルは、あのジウジアーロが手がけた平面構成の四角いボディーに、シュタイアー・ダイムラー・プフ(現マグナ・シュタイヤー)社との共同開発となる4輪駆動システムが搭載されたパートタイム4×4。

 

4×2のパンダより少々車高が高く、リアゲートにシュタイアー・ダイムラー・プフ社のエンブレムを着けられた、ちょっと特別なこのパ ンダは、けっして道無き道を行く本格クロカン車ではなかったが、一部に熱心なファンも存在し、欧州ではクロカン走行に特化したカスタマイズを施すコアなマ ニアも存在する。

 

現行型は3代目となるモデルであり、日本では限定340台ということで昨年10月に販売が始まっている。

s_IM1S94870.9リッター直2ターボの軽快パワー

 

 

試乗車は、340台のうちの160台を占めるという、タスカングリーンと呼ばれるボディーカラーで、この他にアイスホワイト、イタリアンレッドが選べる。

 

エンジンは、フィアット500でもお馴染みの875cc直列2気筒ガソリンターボ”ツインエア”を搭載。モノグレードで、全車右ハンドル車の6速MT仕様となっている。

 

なお、『Adventure Edition』と呼ばれる、ロゴ入りベースキャリア(ルーフキャリア)とパンダ・オーナメント付きラゲッジマットのオプション装着車が設定されているが、この特別装備以外は標準車両との違いはない。

 

軽快に回る875cc 2気筒エンジンは、最高出力63kW(85PS)/5,500rpm、最大トルク145Nm(14.8kgm)/1,900rpm。燃料は無鉛プレミアムガソリン仕様だ。

 

ツイン特有の、モーターサイクルのようなバタバタ感はあるものの、吹け上がりは軽快そのもの。ただし、1速では5,500rpm、2 速でも6,000rpm辺りでレブ・リミッターに加速を阻まれるため、マニュアルミッションとは言え、調子に乗って回すことはできない。しかし、それを差 し引いてもこの軽快さは魅力的だ。

 

シフトレバーの前にある「ECO」モード・スイッチを入れると、あからさまにパワーが抑えられ、加速も吹け方も明らかに鈍るが、その分確実に燃費は抑えられそうだ。

 

ちなみにこのECOモードでは、最高出力が8PSダウン、最大トルクは4.6kgmダウン…と、カタログの諸元表にも明記されている。

 

トランスミッションは6速MTだが、4〜6速はオーバードライブなので、ゴー/ストップの頻繁な市街地や,アップ/ダウンのあるワインディング路などでは、使えるギアが限られてくる。

 

ちなみに、1速の変速比は4.100という、いわゆるエクストラ・ロー的なギア比設定で、オフロード走行や牽引時に対応した設定とされている。しかし、実際はそれほど低速で走れるわけでもなく、街中で2速発進するにはやや厳しい(2速が高い)設定だ。

 

ただし、走行中、回転が落ちても低回転域でしっかり粘ってくれるエンジンなので、のんびり走るなら頻繁なシフトチェンジを強いられることもない。小排気量ターボエンジンのイメージが変わるパワーユニットである。

 

s_IM1S9563トルクオンデマンド型フルタイム4×4

 

 

オフロード走行に関しては、標準装着タイヤの外径や対地障害角の小ささから見ても、いわゆるクロスカントリーのレベルに達していない ことは明らかなのでムリは禁物。しかし、エンジンブレーキを利かせやすいマニュアル車であることや、ELDボタンが付いていたりするため、下まわりのクリ アランスやタイヤのグリップ力が許す範囲でのオフロード走行なら、気持ちに余裕を持ってトライできる。

 

ちなみにELD(エレクトロニック・ロッキング・ディファレンシャル)は、50㎞/h以下でホイールスピンを検知した時に、電子制御によってデフの差動を制限する機構だ。

 

したがってダートの高速コーナー等では作動しないが、タイヤの四輪接地が確保しにくいクロカン地形や、氷雪路などスリッピーな路面での低速走行時に威力を発揮する。

 

s_IMG_2709

 

AT車がスタンダードで、車種によってはMT設定無し、あるいはオプション…というこのご時世にあって、MT車のみ、という設定はかなりオーナーを限定するが、もともとヨンクは、”オーナーを選ぶクルマ”の方が多かった気がする。<

 

ミッションの件に限らず、このクルマは、よくあるSUVが目指している高級感の演出や無駄に豪華な装備がない代わりに、クルマを操っているという実感があって楽しい。

 

パンダ4×4は、そんな個性を重視するドライバーになら、受け入れられる要素がたくさん見つかる4×4だ。

 

s_IMG_3305

s_IMG_2775875cc 直列2気筒ターボ”ツインエア”ガソリンエンジン。最高出力63kW(85ps)、最大トルク145Nm(14.8kgm)を発揮する。無鉛プレミアムガソリン仕様。

 

【騒音計測データ】
●車内・・・・42.0dB
●ボンネット閉・・・・62.0dB
●ボンネット開・・・・67.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動時

 

モーターサイクル的な甲高さのあるエンジン音ながら、騒音レベルは想像以上に低い。

 

s_IMG_2928収納スペースが多くユニークなデザインのインパネまわり。

 

s_IMG_2943トランスミッションは全車6速MT。適度な節度感で心地よいシフト・フィーリング。

 

s_IMG_2988

センタートンネルをえぐって確保したフットレスト・スペース。マニュアル車でも余裕の足もと。

 

s_IMG_2946シフトレバー前方中央にECOスイッチとELDスイッチが配置される。

 

s_IMG_2967何か違和感を感じると思ったら、速度計表示が「10、30、50、70…」と2ケタ目が奇数という刻み。タコメーターのレッドゾーンは6,500rpm。

 

seat初期モデルに較べれば格段に進化したシート。リアは3人乗り。

 

s_IMG_3018後席ドアには、手動のウインドゥレギュレーターが。

 

rear7:3分割可倒式のリアシート。シートバックが厚いためか、フラットとは言いがたいフロア。

 

s_IMG_3413リッドを開けるといきなりフタ無しで給油口が現れる…が、問題なし。

 

susフロントサス(左)はマクファーソン・ストラット式で、リアサス(右)はトーションビーム式。下まわりがフラットで余裕のクリアランス。

 

s_IMG_2919標準タイヤは175/65R15サイズ。もうひとまわり大径タイヤが履ける余裕が欲しい!