【紹介/試走】JEEP CHEROKEE Limited
2014.12.19
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四輪駆動車
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Jeep
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日本ではふたつの4×4モデル
新しい世代のJEEPファンの中には、チェロキーというクルマに、スタイルや大きさ、性格がころころ変わる”コンセプトの定まらないモデル”という印象を持っている人も少なくないのではなかろうか。
もっともこれは無理からぬ話で、本来チェロキーとは異なるコンセプトで開発されていた「リバティ」というモデルを、日本市場では販売戦略上、あるいはモデル名の都合等で「チェロキー」として販売していた経緯がその一因でもある。
しかし、ここへ来て13年ぶりにようやく「本国と同じチェロキー」が日本でも発売され、本来のJEEPファミリーの中での役割や守備範囲等を考察する機会ができたので、試乗と相成った。
ちなみに、JEEPファミリー全体で見ると、グランドチェロキー、チェロキー、ラングラー(アンリミテッドを含む)、コンパスは本国と同じだが、かつて日本でも販売されていたパトリオットはラインナップされていない。
また、JEEP初のコンパクト・クロスオーバーとして話題のニューモデル「レネゲード」も、今のところ日本市場でのラインナップは未定だ。
日本でのチェロキーのバリエーションは「Longitude(ロンジチュード)」「Trailhawk(トレイルホーク)」「Limited(リミテッド)」の3種類。Longitudeは2.4リッター直4ガソリン搭載の4×2・FFモデルで、TrailhawkとLimitedは3.2リッターV6ガソリン搭載の4×4モデルとなっている。
ラグジュアリー装備の施されたLimitedが、価格的にも最上級モデルとなるが、Trailhawkにはリアデフロック機構やセレクスピード・コントロール(ヒルディセント/ヒルアセント・コントロールを含む)に加えて、下まわりにアンダーガード類が装備されるなど、オフロード走行を強く意識した仕様になっているのが特徴と言える。
JEEP初の9速AT搭載
今回の試乗車は、「モロッコ」と呼ばれるブラックメタリック・カラーのLimited。エンジンはS型3.2リッターV6・DOHCガソリンエンジン。最高出力200kW(272PS)/6,500rpm、最大トルク315Nm(32.1kgm)/4,300rpmと、1.9トンのボディーにメリハリある動きをさせるに充分なスペックだ。アメリカンと言えど、この手の輸入SUVで無鉛レギュラーガソリン仕様は珍しい。
相変わらずストロークが長く、踏み代の大きいアクセルペダルをグググッと踏み込んでいくと、神経質さのない力強い加速が楽しめる。
なぜかフットレストが装備されないので、左足の置き所が落ち着かない。まあ、しっかり踏ん張ってカラダ固定してコーナリング…というタイプではないからいいか…そんな気にさせるところがアメリカンJEEPだ。
ただ、そうは言っても55%扁平の18インチタイヤを履くだけあってそれなりのサス設定のタイトさは確保している。スポーツクーペ張りの脚まわりを売りにする欧州製SUVたちとは一線を画する存在ではあるが、コーナーでの安定感は充分満足のいくレベルだし、発進加速も至ってスムーズである。
ATが前進9速ということで、どれだけクロスレシオで、シフトアップも滑らかなんだ? と期待したが、変速比1:1の第5速までは一般的な変速比設定で、残りの4速、つまり第6〜9速はすべてO/D(オーバードライブ)という設定。
したがって、街中やワインディング走行等で常用する第1〜5速ではその恩恵を感じにくいものの、長距離の高速巡航等ではこの細かいO/D設定による効率の良い走り、静粛性、そして好燃費も期待できそうだ。
外観は個性的、使い勝手は実用的
外観、分けてもフロントまわりのアクの強いデザインには好みも分かれようが、他の何にも似ていない顔つきは個性的であることは間違いない。似た顔が多い昨今のクルマの中で、ひと目見てそれと分かるデザインには、やはり魅力を感じる。
インテリアのデザインもまた個性的ではあるが、使い勝手を犠牲にしてまで凝った造形は見当たらない。収納も多く、特にダッシュボード中央の収納ボックスは、前方から視線を大きく外さずにモノが出し入れできるので便利である。
試乗車は、オプションのラグジュアリーパッケージに含まれるデュアルペインパノラミックサンルーフの効果もあって、明るく開放的な車内が印象的だったが、リアシートが前後スライド可能で、足元スペースも広く快適だ。
今回試乗したリミテッドの車両価格は4,611,600円。オプションのラグジュアリーパッケージ (216,000円)を含めると480万円超ということで、ひとまわり大きくてエンジンもよりパワフルなグランドチェロキーに手が届いてしまう(ラレード/4,503,600円)価格設定もあってか、JEEP同士の競合も少なくないと聞く。
そういった意味では、豪華装備よりもオフロード指向に振った仕様であるトレイルホーク(4,298,400円)のほうが、よりチェロキーというモデルを楽しめて、より価値ある選択と言えるかも知れない。
“ペンタスター”と呼ばれる3.2リッターV6・DOHCガソリンエンジン。最高出力200kW(272PS)/6,500rpm、最大トルク315Nm(32.1kgm)/4,300rpmを発生。無鉛レギュラーガソリン仕様。
【騒音計測データ】
●車内・・・・41.5dB
●ボンネット閉・・・・55.5dB
●ボンネット開・・・・62.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動時
アイドリング時の騒音レベルを実測。車内外とも、ガソリン3リッター超クラスの騒音レベルとしては申し分の無い数値。
顔つきに共通したデザインキーを持つインパネ。やや質感に欠けるが、使い勝手は良い。
シンプルなアナログメーターがメイン。中央は画面を切り替えることで多数の情報を表示するマルチビューディスプレイ。
マニュアルモード付き9速ATを採用。第6〜9速はすべてO/D(オーバードライブ)という変速比設定。
走行モード切り替え操作はダイヤルで行う。ステージ別にシフトタイミングをコントロールする。ローレンジも健在。
リミテッドの標準装備はナッパレザーシートだが、オプションのラグジュアリーパッケージを選ぶと、このプレミアムナッパレザーシートが設定される。
フットレストが装備されていない運転席。アクセルペダルのストロークが長い。
オプションのデュアルペインパノラミックサンルーフ。ガラスは半開までだが、シェードは全開閉する。
カーゴスペースの床面積は一般的なミドルクラスSUVレベルを確保。フロア下にはフルサイズのスペアタイヤを収納。
灯火スイッチのポジションはヘッドランプONかAUTOのみで、スモールだけ点灯は不可。
フロントサス(左)はマクファーソン・ストラット式で、リアサス(右)はマルチリンク式。リミテッド、トレイルホークとも同形式。
標準タイヤは225/55R18サイズ。トレイルホークには245/65R17を標準設定。