【紹介/試走】MERCEDES-BENZ G550

2019.3.26

    • プレミアムSUV
    • Mercedes Benz


40年目の「G」

劇的に変わった新型Gクラス

昨年(2018年)のNAIAS(北米国際自動車ショー)で、業界関係者やファンにとってはかなりセンセーショナルなリニューアルが公開され、話題となったメルセデス・ベンツGクラス。日本ではこの新型の販売が6月から開始され、当初は併売されていた従来型も現在は公式ホームページから姿を消し、最近は新型を街中でよく見かけるようになった。
 
実際、首都圏の街中で見かけるGの数は年々増えていて、特に青山や六本木界隈をクルマで移動していると、Gとすれ違わない日はない…というくらいの頻度で増殖している。
 
Gに備わるクロカン4×4としての性能がウケている…というよりは、街中で人々の目を引く“武骨で高級なベンツの四駆”として選ばれているようだが、とにかく人気のモデルであることに間違いはない。

 

冒頭で“センセーショナル”と表現した新型Gクラスの最大の変更点とは、フロント・サスペンションの独懸化である。デビュー以来39年間継承されてきた前後リジッドアクスル+コイルという形式が、フロントだけとは言え廃止された事実に驚いた本誌読者も多かったことだろう。
 
このサスペンション変更に伴って、ラダーフレームが大幅に設計を見直され、ねじり剛性や悪路走行時の耐久性、安全性向上も図られている。
 
このほか、全長が85mm、全幅が125mm、ホイールベースが40mm拡大され、ボディーもひとまわり大きくなったが、全幅拡大の比率が多いためか、シルエットは少々平べったくなった印象を受ける。
 
エンジンは従来型の4.0リッターV8-DOHCツインターボをベースとするM176型を搭載。最高出力422PS/310kW、最大トルク610Nmは従来型とほぼ同スペックだが、新型には気筒休止システムが採用され、燃費向上が図られている。
 
ちなみに、上級モデルのAMG G63には、このG550と同排気量の4リッターV8直噴DOHCツインターボながら、最高出力585PS/430kW、最大トルク850Nmを発揮するM177型エンジンが搭載されている。

 

快適で愉しいオンロード

ボディーが拡大され、インパネが液晶スクリーンになり、走りが電子制御されるようにはなったが、運転席からの眺めは、伝統的なGのそれだ。
 
車体の四隅が明確に把握できるボディー形状、フロント先端の目印となるウインカー、視界を妨げない低めのダッシュボード等は健在であり、助手席のアシストグリップ等も含めてオフロード走行で有利なデザインは保たれている。
 
ただ、発進の瞬間から感じる強大なパワー/トルクは、とりわけクラシカルな重心の高い箱型ボディーを持つGにとっては、電子制御なしにはコントロールしきれるものではないな…と、あらためて実感する。
 
フロントが独立懸架となったことで、サスペンションのオンロードでの路面追従性も向上し、トラクションコントロールを中心とする電子制御がより効果を発揮するようになったことは大きな前進と言える。
 
ただし、前後とも車軸懸架だった先代モデルに較べて極端に乗り心地が良くなったり、コントロールが楽になったり…というわけでもないので、フロント独懸化の恩恵はむしろ限界走行時でないと実感できないのではないか、と感じた。
 
また、それと同時に、初めてGにパワフルなV8が搭載された500GEに試乗した時に感じた“不用意にアクセルを開けられない”感覚は、現在のG550では全く無縁のモノで、この400PSオーバーの怪物を一般ドライバーが普通にコントロールできることの驚きも、今さらながらに感じる。

多段化された電子制御9速ATは、よりスムースなシフトアップ/ダウンを楽しめるし、パドルシフトによるマニュアル操作もレスポンス良好でワインディングも楽しい。
 
試乗車には、標準タイヤ(275/55R19)よりさらに偏平率の低い275/50R20サイズ(オプション)のタイヤが装着されており、オンロードでのパフォーマンスをアピールする仕様であったが、軽快にコーナーをクリアしていく様は、まさに時代に沿ったGの立ち位置の変化を感じさせるものだった。

 

やはり真価はオフロードにあり

如何にオンロードでのパフォーマンスを無視できずに変化してきたGと言えども、基本設計がオフロードをキチンと走ることを前提としていて、それがデビュー当時から不変である以上、やはりその真価はオフロード性能にある、と考えたい。
  
今や誰もが認める高級車であり、泥靴を受け付けない豪華な内装、クロカンどころか林道走行でも危ういロープロファイルタイヤ、そして何より「1,600万円の高級車で誰がオフロード走る?」という現実。すべてがオフロードとは正反対の方向を向いている中でのオフロード試乗は、ちょっと複雑な気分だ。
 
新型になってATセレクターがセンターコンソールから消え、シフト操作はステアリングコラムから生えた小さなレバーになったが、指先で素早い操作ができるので、前進後退を繰り返す時などには都合が良い。
 
けっこうな段差のモーグルステージに進入し、さっそくローレンジにシフトする。この時点で「Gモード」が作動し、ダンパーの減衰力、ステアリング、アクセル、ATシフトの各特性が状況に応じて最適化され、最大限の悪路走破性を確保する制御が行われることになっている。なお、この「Gモード」は、ハイレンジでもデフロックスイッチを操作するだけでONになるしくみだ。

ローレンジの減速比は充分に低く、しかも2,000rpmから最大トルク610Nm(62.2kgm)という太いトルクを発揮する4リッターV8の余裕は、オンロードでの愉しさとは比べものにならない頼もしさを感じさせてくれる。
 
やや上り気味のモーグルをジワジワと進んでいくと、ほどなく左前輪と右後輪が浮き、いわゆる対角線スタック状態となって前進が止まった。
 
このエンジンのトルクなら、ハイレンジでトラクションコントロールを効かせながらの前進も余裕で可能だが、ここはやはり伝家の宝刀:マニュアルデフロックを活用したい。
 
ここまでは、センターデフロックさえしていない状態、つまりフルタイム4WD+ローレンジ走行である。この組み合わせが可能なクロカン4×4は昔から少ないが、ローレンジの活用範囲が拡がるので便利なシステムと言える。
 
センターデフをロックしてもタイヤの空転は止まらなかったので、次にリアデフをロックし、何事もなかったように前進を再開する。リアデフをロックした時点で、かなり直進性が高まるので、状況によっては注意が必要だ。
 
さらにフロント・デフロックするとステアリングをフルに切ってもそのまま直進してしまう、という事が普通に起きるので、ほとんどコントロール不能な状態に陥る危険もある。
 
マニュアルデフロックとは、使いどころとその特性を十分理解した上で使用するべきベテラン向けの機能なのだ。この辺りは、コンピュータにお任せの電子制御とは正反対の性格とも言えるので、オーナーとしては頭にたたき込んでおくべきだろう。
 
ダブルウイッシュボーンとなったフロントサスは、このようなモーグル走行ではほとんど実力を発揮できなかったが、一定以上の速度域ではリジッドアクスルよりも路面追従性に優れるので、ダート走行や林道走行では実力を発揮するだろう。
 
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現状、国内の正規ラインナップはこのG550とAMG G63の2車種だが、従来のようにディーゼル車を求めるユーザーも多いことと思う。
 
また、細めのM+Sタイヤを履き、ベーシックな内装で電子制御はABS程度にとどめたオフロード・パッケージ的な仕様が設定されたら、どんなに楽しいだろう、とも思う。
 
Gクラスの「G」は、ゲレンデヴァーゲン(Geländewagen)のG。原点でもある本来の姿をした仕様をぜひ見てみたいものだ。

 

【エンジンスペック】

最高出力310kW(422PS)/5,250〜5,500 rpm、最大トルク610Nm(62.2kgm)/2,000〜4,750 rpmを発生する3,982cc V8・DOHCガソリン・ツインターボ。

【エンジン騒音計測データ】

●車内・・・・42.0dB
●ボンネット閉・・・・67.5dB
●ボンネット開・・・・71.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。

 

メーターパネルも液晶スクリーン。様々なデザインに切り替え可能。

 

 

 

 

 

近代化されたが、低く抑えられたダッシュボード等、Gらしさも残されたインパネ。

 

ATは電子制御式9速。ATセレクターが細いシフトレバーに。指先で素早い操作ができるので、前進後退を繰り返す時には便利。

 

 

 

「LOW RANGE(ローレンジ)」スイッチはここ。ONで「Gモード」が作動する。

 

写真はGモード作動時。走行モード、デフロック状態、ステアリング操舵角、傾斜角等の数値が表示される。

 

センターコンソールに並ぶ3つのスイッチは、センター/リア/フロントのマニュアル・デフロック。ドライバーが状況に応じて判断し、各ディファレンシャルギアをロックできる。

 

 

 

試乗車のシートはオプションの「AMGライン」仕様。ナッパレザーのブラック(designoレッドシートベルト付き)を装着。

 

カーゴルームのシートアレンジ。リアシートは60:40分割可倒式。最大2,250リッターのスペースを確保できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騒音対策なのかルーフドリップがカバーされていて雨樋の機能を果たさない。これも進化と呼ぶべきだろうか?

 

 

 

 

 

 

マルチビームLEDヘッドライトを採用。基本デザインは昔ながらの丸目2灯式ヘッドランプだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フロントサス(左)とリアサス(右)。フロントはダブルウイッシュボーン(独立懸架)式に変更された。リアはリジッドアクスル式を踏襲するが、アッパーリンクが追加され、従来型の3リンクから5リンク式へと変更されている。

 

V8搭載車伝統のサイド・デュアルマフラー。オフロードで干渉しないようフレーム内に収まっている。

 

 

 

 

 


標準サイズは275/55R19だが、試乗車にはオプションの275/50R20が装着されていた。オンロードでは快適だが、オフロードでは林道程度でも気を遣う。

 

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