【紹介/試走】SUZUKI IGNIS HYBRID MZ 4WD
2016.6.3
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四輪駆動車
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スズキ
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コンパクトの新種登場!
ハスラーとエスクードの中間サイズ
全車エンジン+ISGのマイルドH/B
今年1月に「新ジャンルのコンパクトクロスオーバー」というふれ込みでリリースされ、現時点ではまだ高級車の装備というイメージが強い自動ブレーキや全方位モニター、Apple CarPlay対応ナビ等の設定も話題となっているイグニス。車名の由来はラテン語で「炎」を意味するとのことだが、外観も含めてなかなか個性的かつインパクトのある新型車、という印象だ。
何が新ジャンルなのかと言えば、”コンパクトカーとSUVの融合”ということらしく、この表現からはさして新しさが伝わってこないのだが、要するに軽のハスラーと小型車のエスクードやSX4の隙間を埋める、今まで無かったサイズ、ということなのだろう。
1.2リッター直4DOHCガソリンNAエンジンにモーター機能付き発電機(ISG)を組み合わせた、いわゆるマイルドハイブリッド式パワーユニットを全車に採用し、トランスミッションはCVTのみという設定だ。
装備によるグレードは、上から「MZ」「MX」「MG」の3種類が設定され、それぞれに2WD/4WDが用意されて全6タイプのラインナップとなっている。
試乗車は最上級グレードのMZ 4WDで、車両本体価格は164.7万円(税別)。ただし試乗車両にはメーカーオプションのセーフティパッケージ(9万円)と全方位モニター付きメモリーナビゲーション(13.2万円)が装備されているので車両価格は200万円を少し超える。ちなみに、標準グレードのMG(4WD)は140.7万円(税別)という価格設定だ。
必要にして充分なパワー
やや落ち着きのないサスペンション
SUVらしい腰高な重量感もありながら、サイドからリアにかけてのデザインに見られるアルトにも似たコンパクト感も併せ持つ、まさに中間サイズ。また、Cピラー部分に入れられた3本のリブが往年のフロンテ・クーペを連想させるという、世代によってはノスタルジックなオマケも付く。
発進時や加速時にモーターがエンジンを最長で30秒間アシストするとのことだが、体感的にはそれを強烈に感じることはない。これは逆に言えば30秒過ぎてモーターのアシストが終わっても、パワーダウンを感じないとも言える。つまり、ごく自然にモーターのパワーが加わっている感覚だ。モーターの力を強く感じはしないが、1.2リッターNAエンジンにしては明らかに立ち上がりのトルクが太い。
元気に良く回るエンジンで、920kgの軽い車重には必要充分なパワーを発揮するので、ワインディング走行もすこぶる楽しい。ステアリングの操作感にも重厚感があり、想像していた軽自動車的なチープさは全く感じられなかった。
ただし、フロント:ストラット、リア:3リンク式コイルリジッドのサスの限界はさほど高くはなく、やや接地感の希薄な落ち着きに欠ける脚まわり、という印象だ。
シンプルなフルタイム式4×4
グリップコントロール機能も
4×4システムは、ビスカスカップリング式センターデフによって前後輪に状況に応じた駆動力を配分するフルタイム4×4。通常は前輪寄りの駆動配分で、FFに近い走行状態となっている。
ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)によってエンジン出力や各輪のブレーキ制御等によってトラクションは常にコントロールされているが、オフロードや氷雪路の発進時にブレーキ制御によるサポートのレスポンスを早める「グリップコントロール」や、急勾配のヒルダウン時に有効なヒルディセントコントロールも標準装備(4WD)されているので、オフロードでの行動範囲も拡がりそうだ。
実際に少々荒れた林道に乗り入れてみたが、想像以上にグラウンド・クリアランスに余裕があり、走行ラインを考えて走ればかなり荒れた未舗装路もイケる。ただし、サスは油断しているとすぐ底づきするので、凹凸の多い場所では速度を控えたほうが賢明だ。
文句なしのユーティリティー性能
コンパクトの選択肢増加は大歓迎!
インテリアに高級感はないが、機能的で使いやすいのが好印象。このクラスで前席シートヒーターやオートクルーズ標準装備はあまり見ないし、本革が多用された操作系も良い。CVTながらマニュアル操作可能なパドルシフトも標準装備。iPadをそのまま貼り付けたようなマルチインフォメーションディスプレイも見やすく、操作性もタブレット感覚そのもので良好だ。
この他、リクライニングやスライド可能な分割式リアシートも便利だし、カーゴルームのアレンジも実用性は充分。収納の多さもスズキ車ならでは…ということで、ユーティリティーに関してはほぼ文句なしの仕上がりと言って良いと思う。
そして最後に燃費。4WDの公称燃費は25.4km/L(JC08モード)となっているが、今回400km程の試走では18km/Lをマークした。いつものごとく、発進や急加速、林道走行等すべて含めての結果だが、高速巡航時には確実に20km台/Lに乗るので、マイルドハイブリッドの面目躍如と言ったところだろう。
4×4ならではのステージもそこそこ楽しめて、SUVとしてのユーティリティーも合格点。さまざまな面で今までにないコンパクトSUVの選択肢が増えたことも大きな一歩と言えそうだ。
【細部写真】
1,242cc 直列4気筒DOHCガソリンエンジンを搭載。最高出力67kW(91PS)、最大トルク118Nm(12.0kgm)を発生するVVT(可変バルブタイミング)機構搭載のNA(自然吸気)ユニットだ。最高出力2.3kW(3.1PS)/最大トルク50Nm(5.1kgm)を発生するISG(モーター機能付き発電機)によってエンジンをアシストするマイルドハイブリッドシステムを採用している。
【騒音計測データ】
●車内・・・・41.0dB
●ボンネット閉・・・・55.0dB
●ボンネット開・・・・63.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。
上:2輪テイストな2眼メーター。200km/hまで刻まれたスピードメーターはご愛敬!?
下:高級感はないが機能的で使いやすいインパネ。
全車7速マニュアル機構付きのCVT。マニュアル操作はパドルシフトで行う。
下段左端は「グリップコントロール」の操作スイッチ。スリップ時のブレーキ制御レスポンスが早まるので、特に低μ路での発進時に有効。
エンジン始動はプッシュ式スタートボタンにて。右側は、ESP解除、アイドルストップ解除ボタン。
フロントシートにはシートヒーターを標準装備。リアシートはこれだけスライドする。座面奥行きがやや短い。
5:5分割可倒式のリアシート。荷室フロア下にはパンタグラフ型ジャッキ&パンク修理キット収納スペースが。
フロントグリル内にヘッドランプを収めるデザインは、往年の名車セルボがお手本。
フロントサスは、マクファーソン・ストラット(左)、リアサス(右)はアイソレーテッド・トレーリングリンク式と呼ばれるリジッドアクスル式コイル。
上級グレードであるMZとMXの標準タイヤは175/60R16サイズ。MGのみ175/65R15サイズの設定。
文/内藤知己
写真/佐久間清人