【BACKWOODS】 宮島秀樹

2015.10.30

    • イベント
    • トヨタ

2015103001

それは、トヨタブースのナナマル、ランドクルーザー70系である。実はこのナナマル、トヨタが「もっといいクルマづくりと、それを支える人づくり」の一環として実施している「五大陸走破プロジェクト」の北米編で使用した車両で、ナナマル自体の展示というよりも、トヨタの企業アピールを目的としたものだ。とはいえ、今までナナマルが東京モーターショーのトヨタのメインブースに展示されたという記憶はなく、それが展示されているということだけでもトピックと言っていいと思う。

 

特筆すべきは展示演出だ。この4.5リッターV8ディーゼルを搭載するオーストラリア仕様のナナマルは、フロントサイドまで回り込んだ大型のグリルガードやシュノーケルを装備した、まさしくオフロードを走るためのヘビーデューティー仕様である。おまけに、ついさっきブッシュを抜けてきたかのように、わざわざ泥だらけのまま飾られているのだ。展示されているのはブースの端ではあるが、入り口に近く、かなり目立つ場所と言っていい。それもなぜか後ろ向きに展示されている。広大なビッグサイトにピカピカに磨き上げられたクルマが多数立ち並ぶ中、このナナマルだけ、泥だらけで、後ろ向きに展示されているのである。そんなちょっと斜に構えたような姿で佇むナナマルは、昔ながらの四駆乗りならグッとくるものがあるはず。もちろん筆者も、トヨタブースでその全貌を見たとき、思わず嬉しくなってしまったクチである。高級さ、快適さ、ハイパワー、ハイスピードを売りにするSUVやらクロスオーバーカーが数多く登場しているが、そもそも四駆とはどんなクルマなのかを、これだけダイレクトに表現・訴求している光景は、まさに目から鱗…だと思う。

 

さて、「五大陸走破プロジェクト」には、ナナマルのほかにランドクルーザー200やプラド、そしてプリウスやカムリなど日本で販売されているモデルも使用されている。では、なぜ日本では販売が終了しているナナマルを、わざわざ選んで展示したのだろうか? ナナマル再々販売の布石なのでは…とつい期待してしまうところだが、どうやらそういった計画はないようだ。トヨタのスタッフによれば、ナナマルの展示理由は、「文字どおり世界中で信頼されているクルマであること」と、「世界各地で必要とされるクルマがあれば、それを作ることがトヨタの使命であること」をあらためてアピールすることにもなるからだという。トヨタブースには、新型プリウスや燃料電池車などといった次世代モデルも多数出展されているが、こうした本当のニーズによって長年生産されているクルマをちゃんと展示しているのは大変素晴らしいことだと思う。世界販売台数トップの座は、世界のユーザーニーズに応えた結果であり、ただ売らんがための虚飾の上に成り立ったものではないのだ。

 

皆さんも東京モーターショーに出かけたら、ぜひこのナナマルをご覧になっていただきたい。泥だらけだが、四駆好きならどのコンセプトカーよりも輝いて見えるだろう。

 

201510302ナンバープレートはオーストラリアのビクトリア州のもので、南十字星のイラストと州のスローガンが入る。オーストラリアはランドクルーザーカントリーとも呼ばれるほどランクルが人気。このスローガンもランクルにぴったり?