スズキ ジムニー&シエラ 開発者インタビュー

2018.7.20

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    • スズキ

すべては「ジムニーであること」にこだわった結果です

発売と同時に、いや、すでに発売前から大きな盛り上がりを見せていたジムニー/シエラだが、とにかく近年まれに見る大ヒットであり、ジムニーファンの過熱ぶりもピークという今日この頃。
今回は、試走の前にまず開発陣の熱い想いをうかがった。

文/内藤知己 写真/川上博司
 

4×4:ラダーフレームに四角いボディー、車軸懸架といった設計は、ある意味時代に逆行する方向とも取れますが、こうなった要因とは?

 
河野:もう50年近く売り続けてきたこのクルマの新型を開発するにあたって、まず最初に考えたのは「ジムニーとは?」というシンプルな命題でした。つまり、ジムニーに必要なモノって何なんだろう? というところから始めたわけです。で、それは、コンパクトで取り回しの良いサイズであること、そしてそれを活かした本格四駆システムを継承することであり、その条件を満たすためのメカニズムとしてラダーフレーム構造であったり、リジッドアクスルの脚や副変速機付きの駆動系は必須であろう、という結論に至りました。逆にそこを外すとこれはもう「ジムニーではないのでは?」という考え方でしたね。
 

4×4:スズキ全体としては、いわゆる今どきのSUVの多くが向かっているような快適なクルマへ…ということで、モノコック化や独懸化等を推す声もあったのでは?

 
米澤:もちろん、時代の流れとしてそういう意見も、ごく初期の段階ではありましたし、それを考慮したいきさつもいろいろありました。しかし、“コンパクト”で“取り回しが良く” “本格的な四駆性能”というところを突き詰めていったら、自然とこの形に行き着いた、というのが正直なところです。いろいろ検討はしたんですけどね。

 
四輪商品第二部
チーフエンジニア
米澤宏之氏
 
また、我々はこういった点に関して今まで築いてきた財産としてのノウハウがありますから、そこにさらに磨きをかける形で向上させていくのだという1本筋の通った共通認識は最初からありました。
 

4×4:そのような経緯があって完成した新型ジムニーですが、主にその外観フォルムやエクステリアデザイン、メカニズムの一部等から「原点回帰」「伝統の復活」などと評価する世間の声も多いようですが?

 
米澤:うーん…そうですね、例えばボディーに関して言えば、これは今回の開発コンセプトにも掲げている「無駄のない機能美」ということで、直線的でスクエアで見切りの良いボディーにしたわけで、これはけっして昔が良かったという懐古趣味的なモノではない、ということです。まぁ、結果的にそうなった(昔に回帰した)という面はあるかもしれませんが、それは後から付いてきたことですね。あ、もっともジムニーらしさを表現するアイコンという意味で、フロントグリルや灯火類に、かつてのジムニーの要素を散りばめたりはしていますが、これらもやはり無駄のない機能美」が前提となってます。

 

また、空力の面でも「四角くなった分、燃費面で不利なんじゃないか?」 と思われるかも知れません。しかし、そこはもちろん最新の空力シミュレーション技術を駆使して、細部にわたる形状や構造の検討を行い、デザイナーとともにトライ&エラーを重ねた上で完成させた形ですから、昔がカッコ良かったから、空力を犠牲にして昔に戻した…というわけでは、けっしてありません。
 

4×4:今回はジムニー(軽)とシエラ(小型)同時発売ということですが、両者の差別化という点に関して特におこなわれたことはありますか?

 
河野:先代のJB23/43では、発売時期がちょうど軽自動車枠の改正時期とリンクした関係で、ジムニー660発売が後になる形になりましたが、今回は同時発売ということで、いろいろな面でスムースに進めることができました。シエラは今回トレッドを拡大し、エンジンも1.3から1.5リッターに拡大したこともあり、特に高速での長距離移動などではかなり余裕ができたと思います。したがって、差別化という意味では装備等に大きな違いはありませんが、ジムニーより長距離走行はかなりラクになってますね。

 
四輪商品・原価企画部
製品・用品企画課
河野昭彦氏
 

4×4:それでは最後に、新型ジムニー/シエラのここがすごいぞ!というポイントをユーザー予備群にアピールして下さい。

 
米澤:まずは本格四駆性能、これはもう間違いなく徹底してやりました、ということをお伝えしたいですね。あとはとにかく、あらゆる面で機能を優先させて作りましたので、使い勝手の良さに注目して下さい。こだわりのボディーデザイン、荷室の使いやすさ、操作性の良さ等々、合理的で無駄のない機能を随所に散りばめてあるので、それを体感していただきたいです。ホンモノを所有する悦びを感じ、そして、このクルマを使って行きたい場所へ行き、生活を豊かにする道具として使っていただきたいと思っています。