タイ日産(NMT)工場取材レポート

2014.10.31

    • 四輪駆動車
    • 日産

 

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タイ北部チェンマイでの新型ピックアップNP300 ナバラの試乗を終えた翌日、ナバラを生産するタイ日産:Nissan Motor (Thailand) Co., Ltd (NMT)の工場を取材する機会を得た。

 

NMTの歴史は意外に古く、1973年から40年以上、ピックアップや小型乗用車を現地生産している。工場は、首都バンコクに隣接するサムットプラカーン県の内陸に位置。車両や部品の運搬に有利な港湾部ではなく内陸を選んだのは、従業員の通いやすい立地を優先させた結果だという。NMTでは現在6車種を生産しており、日本向けのマーチもここで生産されている。自動車生産に必要なパーツの約9割を現地で調達しており、日本企業がいかにタイと密接な関係にあるかが窺える。広い敷地内には見慣れた日産車が多数あり、タイにいる事を忘れてしまうほどだ。

 

第2工場入口

第2工場入口

 

2012年12月から新型ナバラの生産を行うために第2工場の建設が始まり、今年4月からナバラの試作生産を開始。このトラック専用となる新工場建設にあたっては、2つの新しい試みが行われている。1つ目は、2011年のタイ大洪水の教訓から、敷地を1.5mほどかさ上げしてから工場を建設していること。2つ目は、ゼロディスチャージと呼ばれる廃棄物ゼロ環境を目指し、工業排水を循環ろ過するシステムを構築するため、処理水を溜める巨大なプールを敷地内に設置したことだ。機械的に建物を作るのではなく、環境を考慮してバージョンアップしたものを作るあたりはさすがである。

 

処理水を溜める巨大なプール

処理水を溜める巨大なプール

 

ナバラは、ボディープレスとエンジン生産は既存の第1工場で行われており、溶接、塗装、組み立てなどが新設の第2工場で行われる。今回取材が許されたのは、第2工場のトリム&シャーシーライン。フレームに塗装されたアッパーボディーを搭載し、内外装パーツ、エンジンや足回りパーツなどを組み付け、完成車にする最終工程だ。完成した車両は敷地内にある全長約1kmの評価路で全数検査され、世界中にデリバリーされている。

 

第2工場内にある見取り図

第2工場内にある見取り図

 

工場に入りまず感じたことは「暑い…」。冷房慣れしている我々にとっては少々辛く感じる環境だが、そこは暑さに強いタイ人。誰もが涼しい顔で作業している。というのも、工場内は自然の熱循環によって空気が還流するよう巧みに設計されており、冷房は特段必要ないのだそうだ。友好的で穏やかな人柄もタイ特有だろう。作業中にも関わらず、誰もが笑顔で応えてくれた。その上、我々の訪問を歓迎するため、スタッフ全員がわざわざお揃いの新型ナバラのシャツを着てくれていたのである。また、タイ人には手先の器用な人が多く、スタッフも優秀だという。日産グループ内で技術を競い合う「日産五輪」の優勝者がいるほどなのだ。

 

稼働して間もないナバラのトリムライン

稼働して間もないナバラのトリムライン

 

工場全体を見渡すと、作業者の習熟度を明記した顔写真入りの勤務表や、市街地では見かけなかった缶ジュースの販売機なんかも設置されており、設備・環境ともに日本国内の最新工場と変わりはない。

 

ナバラの生産ラインは1時間で30台生産する能力がある。取材時はまだトライアル中で、ダブルキャブのみを生産しており、最大キャパシティの3割程度であるという。今後は徐々にラインスピードを上げ、シングルキャブの生産も開始する予定だ。

 

新型車種を立ち上げる場合、一般的にプロトタイプと呼ばれる生産試作や量産に移すための工場試作を繰り返し、開発段階で不具合を徹底的に潰して行くことが必要だ。設計に起因するもの、部品精度や組み付けによるものなど、不具合の原因は様々だ。それと同時進行で海外に新たな工場を立ち上げる苦労は計り知れない。

 

こうしてピックアップトラック大国のタイで生まれたナバラ、今後に注目したいモデルである。日本での販売予定がないのが、やはりちょっと残念だけど…。

 

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