雨中の極悪路を駆け抜けた! 〜ジオランダーA/T G015 with TRDハイラックス MSB

2019.11.1

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NASC史上最悪のレースコンディション
果たしてレースは成立するのか!?

10月5、6日に新潟県アパリゾート上越妙高の特設コースで行われたNASCオフロードレース・シリーズ第3戦に、5台のTRDハイラックス MSBがエキシビションに出走した。
 
雨をたっぷり吸い込んでドロドロ・ヌタヌタとなった1周2kmのコース路面は、主催者の中島聡尚さんをして「NASC 20年のレースで最強最悪の極悪路面」といわしめるほどの悪条件。全車とも、スタートから盛大にホイールスピンを起こしながらコース・インしていったが、30分2ヒートの戦いを征したのは、TRDのハイラックスと極悪クロスカントリー路面のどちらをも熟知している新堀忠光選手だった。
 
コースはアップダウンの多い設計で、終盤には角度の大きなヒルクライムなどもあり、観客はもちろん主催者もスタート直後のあり様を見て「完走すら難しいのでは」と漏らすほどだったが、そこはオフロードのプロドライバーたち。ヒート1では降りしきる雨の中、周回を重ねるごとに速度と安定感が増し、全車が完走。ヒート2と合わせ、競技をしっかり成立させてしまった。

 

出場選手は全日本ラリーで10度の総合優勝経験を持つ奴田原文雄選手のほか、AXCRで2回総合優勝している新堀忠光選手、2019年のAXCRでJAOSマシンを操りクラス優勝を果たした能戸知徳選手、そして全日本ラリーやダートラ等で活躍する平塚忠博選手や前田良書選手の5人。当日はあいにくの雨となったが、豪華メンバーの競演に、観客は多いに盛り上がった。
(写真左から前田選手、能戸選手、奴田原選手、平塚選手、新堀選手)

 

写真:「NASCの歴史の中で最悪の路面」と語っていた主催者中島聡尚さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

競技はJRXエキシビジョンマッチ(福島県)同様、より難度が高い追加コース「ジョーカーレーン」を1度は通り抜けねなければならない、という特別ルール。
これを利用して♯3能戸知徳選手が、♯2奴田原文雄選手を追い抜く場面もあり、ラリーやタイムトライアルと違い、ヨーイドンで同時にスタートして争う「レース」ならではの醍醐味を存分に味わうことができた。

 

NASC史上最悪のマッド路面を走破したのは
横浜ゴムのオールテレーンタイヤ “ジオランダーA/T G015”

選手達の走りには魅了されたが、何よりも驚かされたのはタイヤの性能だった。
 
実はこの時、5台のTRDハイラックスMSBが履いていたのはジオランダーA/T G015。ひとたびコースに入り込めば、脚が抜けなくなるほどのヌタヌタの路面を、マッドタイヤではなくオールテレーンタイヤで走っていたのだが、前後輪から大粒の泥を大量に吐き出しながら路面を掻き続け、コーナー手前でちゃんと減速し、しっかりと向きを変え、出口から加速していく姿は、オールテレーン装着車とは思えない、まさに理想的な挙動だった。
 
装着サイズはハイラックスの標準サイズと同じ 265/65R17。だが実は、これまで同サイズで市販されていたものとはひと味違うタイヤが、試験的に使用されていた。ジオランダーA/T G015であることに違いはないのだが、ちょっと違うのだ。
 
どういうことか?
 
実はあまり知られていないことかも知れないが、ジオランダーA/T G015には2通りのトレッドパターンが用意されている。メーカーがPC(パッセンジャーカー)規格と呼ぶパターンと、LT(ライトトラック)規格のパターンだ。その違いは写真で見た方がわかりやすい。
 

PC規格に対し、LT規格のタイヤはブロックの1つ1つがより大きくて溝も深く、ショルダー部も角張っていて、全体的にアグレッシブなカタチをしている。当然ながら、オフロードでのパフォーマンスはLT規格に軍配が上がる。
 
これまでは、265/65R17にはPC規格のパターンしか存在していなかったのだが、今回のレースでLT規格のパターン、サイズ表記にして「LT265/65R17」となるA/T G015が試験的に投入された。その成果がいきなりの極悪路面で試されることとなったのだが、その期待に見事応えてくれた、と言うワケだ。

 

2020年春ジオランダーA/T G015に
LT仕様の “265/65R17” を追加予定

このLT265/65R17は、2020年の春に発売される予定だ。
 
「ハイラックスであれば、このタイプの方がいい」というユーザーは、沢山現れてくることだろう。もちろん「ライトトラック規格だから」という理由もあるが、LT規格のA/T G015は「片側ホワイトレター」の仕様である、ということも忘れてはならない。好みに応じてホワイトレターを、そしてもちろん、ブラックレターも選ぶことが可能となる。
 
ここで、各国の本格オフローダーが選ぶハイラックスのタイヤサイズについて、この大会に帯同していたTRDの柏村さんに話を伺ってみたので、ご紹介しておこう。
 
「クロスカントリーラリーの現場でよく見かけるのは、265/70R17ですね。2019年のAXCRでもTRD車は、他メーカーのタイヤでしたが、このサイズを履いていました。
ただ、これを装着するとフロントのインナーフェンダーが擦れてきたり、ステアリングを切った時にフェンダーの後ろ側に当たったりするので、自己責任のもと、ボディー側を加工している人が多かったと思います。日本では70扁平に対する抵抗が大きいのか、やはり65サイズを装着している人が多かったかな、という印象です。
オーストラリアで6月に開催されたフィンク・デザートレースでは、ジオランダーA/T G015のLT285/70R17サイズという、もう少し太くて大きなタイヤを履いていました。サンド路面が基本で、常に凹凸が続くような路面だったからです。
サスペンションもリアをコイル化したり、AXCRよりさらにストロークを増したりと、かなりスペシャルな仕様に改造しましたが、やはりこのタイヤのポテンシャルに負うところがとても大きかったですね」と語る。

 

想像以上にマルチパーパスな
“オール・テレーン” タイヤ

実は柏村さんの話に出てきた「フィンク・デザートレース」にて、新堀忠光選手の操るTRDハイラックスがクラス優勝を飾っているのだが、新堀選手はその時のタイヤの印象を、このように語っている。
 
「昨年は他社のMTを、そして今年からジオランダーA/T G015を使ったんですが、初日は去年より20分も早いタイムでした。砂のヒルクライムも問題なく、おそらく日本人がA/Tタイヤに漠然と抱いている感覚よりも、オフロード性能がはるかに高いんだと思います。俗に言う “食ってくれるタイヤ” ですね。とてもドライバーコントロールがしやすくて、速度域が上がっても安定感があって、すべての速度域でトータルに使えるタイヤだと思います。
パンクもすることなく、そして心配することもなく2日間を走り切ることができました」。

 

参考:4x4MAGAZINE記事

◆「Finke Desert Race 2019 ~前編」◆「Finke Desert Race 2019 ~後編」※ご覧になりたいタイトルをクリックしてください。

 

このフィンク・デザートレースでも、やはり使用されていたのはLT規格のパターン。そして今回のレースでは、期せずもサンドと対照的な極悪マッド路面での走りを目の当たりにすることとなったが、やはり我々が思い描いていた想像以上に、ジオランダーA/T G015のオフロード性能は高い、ということが正直な印象だった。
 
ジオランダーにはA/Tのほか、H/T、X-AT、M/Tなど幾つもの選択肢があることは、ユーザーにとって悩ましい限りの話しだが、ナスク・オフロードレースシリーズ最終戦に臨んだTRDハイラックス MSBによる、極悪マッドをものともしない走りは、ジオランダーA/T G015(LT規格)の悪路におけるポテンシャルの高さを立証するものとなった。

 

当日はジムニーやUTVのレースも行われた。UTVでトップをひた走っていたマシンもジオランダーA/T G015を装着していた。

 

 

◆ジオランダー公式サイト

https://www.y-yokohama.com/brand/tire/geolandar/
なお、発売されたばかりのジオランダーX-ATに興味がある方は、こちらの映像と記事もご参照いただきたい。
 

◆動画:MTタイヤか?ATタイヤか? ジオランダーの新作”X-AT”をテスト!


 

◆記事:Rubber Sole 「GEOLANDAR X-AT」

※ご覧になる場合は、タイトルをクリックしてください。

 

日本のラリーシーンを変える! トヨタ・ハイラックスとTRD・MSB

パジェロ以来の快挙
ダカールラリー制覇を遂げたトヨタ・ハイラックス

2019年1月のダカール・ラリーにおいてトヨタ初の総合優勝をもぎ取った8代目ハイラックス。ちょうどその2か月前、日本ではハイラックス生誕50周年を祝う特別仕様車「Z “ブラック・ラリー・エディション”」が発売され、実用車ハイラックスの「ラリーカー」としての側面が国内でも注目を浴び始めていた。
 
とはいえ、国際ラリーでのハイラックスの活躍は、大多数の日本人が認識しているよりずっと古く、その歴史は「トヨタIMVプロジェクト」によって2004年に生まれ変わった7代目ハイラックスの歩みとほぼ重なる。
 
IMVとは「Innovative International Multi-purpose Vehicle (革新的な国際多目的車両)」の略。ひとつのプラットフォームから、ピックアップ、SUV、ミニバンと3種類のクルマを生み出し、アジアや中南米、アフリカなど世界各地の新興国で製造、全世界へデリバリーするというもので、今やトヨタ世界戦略の屋台骨のひとつとなっている。
 
ただ、すべてが頑丈なラダーフレームの上に構築されるという新興国向けの味付けであるため、舗装路が多く環境規制の厳しい日本へのデリバリーは見送られ続け、2017年の8代目ハイラックスの国内導入でようやく実現した。
 
この間、IMVのハイラックスはアジア、オセアニア、アフリカを中心に、全世界で順調にシェアを伸ばし、その魅力や活躍を知らぬはハイラックスの母国日本のファンばかり、という逆ガラパゴスな状態が続いていた。

 

アジアのクロスカントリーラリーシーンでは
ハイラックスとD-MAXが “ガチンコ” の戦い

筆者は幾度となく、タイを起点に開催されるアジアクロスカントリーラリー(AXCR)を取材してきたが、東南アジアをめぐるピックアップの市場は、この20年の間に大きく様変わりを果たすこととなる。
 
もともとタイはピックアップ王国として知られていたが、ひと昔前まで圧倒的なシェアを誇っていたのはイスズ。これがIMVの登場によってトヨタ・ハイラックスの人気が一気に高まり、オフロード競技の中でもイスズ・D-MAXとガチンコのバトルを繰り広げるようになった。
 
特に印象的なのは、近年のTRDハイラックスの活躍だ。2016年から優勝経験のある新堀忠光選手を擁してTRDがAXCRに挑戦し始めると、それまで連続優勝記録を更新中だったイスズ・レジェンドチームをいきなりロック・オン。2年連続で総合2位の成績を残したのち、2018、19年も地元タイ人ドライバーの手でチャンピオンが駆るイスズ・D-MAXと、1分1秒を争う熾烈な優勝争いを繰り広げた。
 
実際にコース脇でその走りを観察していると、TRDマシンの走りは豪快そのものだった。
 
凹凸路面のいなし方やスピード面では、すでにチャンピオンチームを上回っており、その完成度は24年に及ぶAXCRの歴史の中でも随一のレベル。さすがにダカールラリー優勝車のように、フレームから専用設計されたスペシャルなマシンではないが、オリジナルのフレームを備えながらIAのラリーに参戦できる身近な競技車両として、各国のチームが毎日のように観察に来るほどの魅力を放っていた。
 
ところで、このTRDハイラックスが「誰でもすぐに入手できる」と言ったらどうだろう!?

 

パジェロエボリューション以来のインパクト
すぐに競技参戦できるTRDのハイラックス

実はすでに、2019年のアジアクロスカントリーラリーで走ったマシンとほぼ同じ仕様となる「ハイラックス MSB」が、日本でも購入できるようになっている。
 
MSBとは「モーター・スポーツ・ベーシック」の略。最もベーシックなステージ1から、「AXCRで優勝を狙える」ステージ2、そして「FIA T1車両の出場できるあらゆるラリーに参戦できる」ステージ3までのパッケージが用意されており、ステージ1でもAXCRに出場することが可能という。
 
2016年のAXCRでも、ステージ1とほぼ同じ仕様で総合2位を獲得、2019年に行われたタイ国内のクロスカントリー選手権でも、ステージ1で2位入賞(エンジンは2.8L)するなど実績も充分。このプロジェクトを進めているTRDの柏村勝敏さんと堀内文雄さんに話を伺うと「荷台にスペアタイヤとジャッキ、ウインチを積めばすぐにでもラリーに出られる仕様」なのだという。

 

写真:今回お話しを伺った
(株)トヨタカスタマイジング&デベロップメント MS本部 TRD事業部
第2MS事業室 2グループ
柏村勝敏さんと堀内文雄さん

 

 
ステージ1の主な仕様は、タービンとコンピューターのチューンによるパワーアップ。前後サスにはリザーバータンク付きのキング製競技用ダンパーが与えられ、車高を変えずに約280mmという大きなストローク量を確保。リアにはLSDが組み込まれ、インテリアには6点式ロールケージやフルバケットシート、競技用シートベルトなどが装備されるという。
 
価格は「ベース車両を400万円とすると、全部でざっくり700万円くらいかなと思います」とのことだが、仕様によって価格が異なるため、気になる方は直接TRDに問い合わせて欲しい。
 
いずれにせよ、日本では1997年発売のパジェロエボリューション以来20年間、クロスカントリーラリーで「勝つ」ためのベース車として思い浮かぶ国内発売モデルは皆無に等しかった。その頑丈さゆえにランドクルーザー(プラド)などが選ばれてきたものの、ハイスピード化するラリーでは重量的にかなり厳しい、というのが実際のところ。
 
AXCRでも国内事情に縛られて旧車やマイナー車種で出場し続ける日本勢にかつての勢いはなく、トップを走るのは日本メーカーのピックアップでありながら、それを日常的に使用している地元アジアチームばかり、という状態が続いていた。それだけに、TRDのMSBは今後の日本のラリーシーンを変えるほどのインパクトを持って登場した、といっても過言ではない。
 
もちろん、これらTRDの経験や知見が凝縮された製品はアジア諸国にもデリバリーされ、ライバルがさらに増えていくことは間違いない。しかし、大切なことは日本人が世界で戦えるクルマをより短い期間で簡単に手に入れられるようになった、ということ。相応の予算は必要となるが、日本のクロスカントリーファンの誰もが「本気で遊ぶため」のスタート台に労せずして立てるようになったという意味で、トヨタ・ハイラックスとTRD・MSBの存在は、とても大きな可能性を秘めている。
 

 

TRDハイラックスMSB ステージ1<Basic Package>仕様

●日本仕様の2.4Lエンジン(発売時期は要問い合わせ)
・タービンとコンピューターを変更
・最高出力110kW → 130kW
・最大トルク400N・m → 480N・m
●国外仕様の2.8Lエンジン
・タービンとコンピューターを変更
・最高出力130kW → 180kW
・最大トルク450N・m → 670N・m
●フロントコイルオーバーサスペンションキット
・550lb コイルスプリング
・2.5in キングショック + リザーバータンク
・スタビライザーオフ
●リアサスペンション
・2.5in キングショック + リザーバータンク
・リーフスプリングはノーマル
●リアLSD追加
●エクステリア
・TRD オーバーフェンダー
・TRD グリル
・TRD アンダーカバー
・リアバンパーレス化
●インテリア
・FIAJ項 6点式ロールケージ
・前席 TRD フルバケットシート
・OMP 6点式シートベルト
 

 

◆参考:TRDホームページ

https://www.trdparts.jp/ms-parts/rally-hilux.html#loaded
 
(文/写真:河村大)