震災から一年 4×4トリックス長岡代表

2012.3.1

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宮城県仙台市にある「4×4TRICKS(トリックス)」。クロカン仕様からリフトアップ、エンジンチューニングまで幅広いカスタマイズを手が ける本格4×4プロショップだ。取り扱う車種は限定していないが、ランドクルーザーやデリカ スペースギアなど、いわゆる本格四駆のユーザーが多く集う。オフロード走行会などのイベント運営にも積極的に携わっており、これまで東北地区のオフロード 業界で中心的な役割を果たしてきた。

 

仙台東部道路・仙台東ICから近く、アクセスの良い立地にあるが、昨年の東日本大震災では大きな被害を受けた。震度6弱の強烈な揺れに襲われ、 店内の展示物やピットの工具などは滅茶苦茶に散乱。社屋自体が傾き、シャッターが閉まらないために代表自ら泊まって番をした。仙台市若林区といえば今回の 大震災で甚大な津波被害を受けた地区である。沿岸地域の家屋を飲み込んできた波は店舗から50mほど手前、ひとつ先の交差点まで押し寄せた。まさに間一髪 だ。近所に住む常連客には津波から逃れるためクルマの屋根にしがみつき、流されながら他人の家の二階に飛び移って一命を取り留めた方もいたという。

 

店舗の電気は断絶されたが、奇跡的に水道だけは出た。どうにか確保した食糧と水を近所の人や店に辿り着いたお客さんたちと分け合い、被災からの 数日間を過ごす。食料についてはスーパーに5時間並んでも牛乳2本しか買えない状況だったが、それ以上に苦労したのが燃料の確保。近隣のガソリンスタンド はすべて閉店。クルマで移動できなければ仕事はおろか、生活すらもできない。店にあるクルマのガソリンをすべて抜き、燃費の良い軽自動車一台に集めて急場 を凌いだ。高速道路のサービスエリアにあるスタンドで燃料の供給が始まったのは、実に震災から3週間目のこと。しかも給油するには数キロにも及ぶ渋滞の列 に並ぶ必要があった。そんな中、被災地の状況を聞きつけたトライアングル事務局から支援物資として燃料が届き、大変助かったという。

 

ライフラインが混乱を極める中、互いに助け合わなければ、今日を生きることさえ難しい状況だった。

 

長岡代表自身もがれき撤去などにボランティア参加し、壮絶な現場を目撃。仕事でも津波に流されてあり得ない場所まで移動したクルマを引き上げに 行ったり、走行できなくなったクルマを部品取り車として再生し、専門の業者に売却して部品代を元の持ち主に渡すなど、収益を度外視した活動が続いた。さら に震災後に起きた余震でも、預かっていたクルマがリフトから落下するなどの大打撃。昨年一年は、まさに震災からの復旧に追われた日々だった。

 

現時点でも完全に元の生活に戻ったわけではないが、今回の震災を経て、東北の人間は以前より強くなった…と感じているという。これまでの人 生で、そして願わくばこれからの人生でも出くわさないであろう、凄まじい体験…。何が起ころうとも、これ以上、最悪の状況はない! という思いが人生を達観するに至らせたのではないか、と長岡代表は語る。家やクルマを流されてしまった人でさえ絶望せず気丈にふるまう姿に、代表自身が励 まされることもある。

 

今後のショップ運営についても前向きだ。

 

「昨年は本当に震災被害からの復旧にまつわる作業で一年が終わってしまった印象でしたが、現在はずいぶん落ち着いてきました。まだまだ今後どう なるのか分からない状況ですが、創業当時から中心となってきたランドクルーザーのカスタマイズについては今後もずっと続けていきたいですね。ランクルほど 長く愛され、ユーザーの夢を自在に叶えてくれるクルマは他にないですから」。

 

時代の流れとともに本格四駆の数は少なくなり、ランクルもカスタマイズの対象からヴィンテージカーの一種に変わっていくかもしれない、と長岡泰宏代表。そうした時にも対応できる柔軟性と技術力を4×4TRICKSは培ってきた。

 

IMG_2681_convert_20110405171555-thumb-300x225-7617震災直後、水や燃料などの支援物資がトライアングル事務局から届けられた。貴重な燃料は、店に集まった皆で分配。こうした支援が、本当にありがたかった。※写真はLANDCRUISERJAPANブログ記事より転用。

 

TRICKS_0016-thumb-300x225-76194x4TRICKS(トリックス)
宮城県仙台市若林区卸町東5-3-18
TEL.022-390-4715 FAX.022-390-4716
営業時間/10:00~19:00
定休日/木曜
E-mail/info@tricks.jp