【紹介/試走】FIAT 500X Cross Plus

2016.4.15

    • 四輪駆動車
    • ヨーロッパ車
  •  2014年10月のパリモーターショーで発表され、日本ではその翌年、つまり2015年10月に販売が開始されたフィアット500X。同ブランドの人気車「フィアット500」に「X」が付いた、いわゆるクロスオーバーモデルだが、4×4だけでなく前輪駆動の4×2もラインナップされているので、単純に"Xが付くモデルは四駆"というわけではない。


軽快!楽しいイタリアン

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Jeepレネゲードと姉妹車
日本では3つのグレードで展開

2016041501 また、現在フィアット傘下にあるJeepブランドで先行発売されたジープ・レネゲードとプラットフォームをはじめ多くのコンポーネンツを共有し、イタリアの同じラインで生産される姉妹車であり、フィアット500とは素姓もメカニズムも別モノである。

 

エンジンは1.4リッター直4ガソリンのDOHCインタークーラー・ターボを搭載、4×2は6速AT(デュアルクラッチ)、4×4は9速AT(トルクコンバーター)が組み合わされる。なお、エンジンのスペックは4×2が最高出力103kW(140PS)/5,000rpm、最大トルク230Nm(23.5kgm)/1,750rpm、4×4は最高出力125kW(170PS)/5,500rpm、最大トルク250Nm(25.5kgm)/2,500rpmとなっており、燃費(JC08モード)も4×2が15.0km/l、4×4が13.1km/lと、それぞれ異なる値だ。

 

日本でのラインナップは、4×2が「Pop Star(ポップスター)」と「Pop Star Plus(ポップスタープラス)」、4×4は「Cross Plus(クロスプラス)」の計3グレードで展開されている。

パワフルな4×4モデル
セールスポイントは9速AT

試乗車両はもちろん4×4モデルの「Cross Plus」だが、取材時とは別に4×2モデルである「Pop Star Plus」との比較試乗の機会もあり、両者を並べて眺めてみたが、Cross Plus(写真左:ブルー)には4×4をアピールする専用デザインが施されている程度で、外観の印象に大きな違いはない。全高はCross Plus の方が15mm高いが、これは標準装備されるルーフレールの分だろう。タイヤもサイズは違うが外径は同じなので地上高も同じ、最小回転半径も5.5mで同スペックだ。

 

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主にドライブトレインの違いから、4×2のPop Star Plus(写真右:レッド)の方が車両重量で80kg軽量だが、常用域のギアレシオが低めに設定されているCross Plusの方が、立ち上がりも加速も明らかにワンランク上で、キビキビと走ることができる。

 

前述のようにカタログ上のJC08モード燃費は4×2の方が低燃費を示しているが、6速AT搭載の4×2モデルに対し、9速AT仕様のCrossPlusは、高速巡航時に限って言えば燃費的に有利になりそうだ。

 

ただし通常のDレンジで巡航中、第9速にはシフトされず、マニュアルシフトにすれば100km/h以上で9速にシフト可能だった。つまり、Dレンジで制限速度内で巡航しているときは、ほとんど第7〜8速で走ることになる。

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ちなみに9速/100km/h巡航時のエンジン回転数は約1,600rpm。1.4リッターという小排気量でこの減速比設定は、確かに画期的と言ってよいだろう。

 

ワインディングでは、このサイズのSUVらしく軽快なドライビングが味わえる。前後ストラットの脚は、硬すぎず柔らかすぎずで、あくまでも乗り心地を犠牲にしない程度のタイトさをキープしている。

 

9速あってもアップダウンの多い峠道で使うギアはせいぜい2〜4速なので、ここでは多段化のメリットはないが、低めのギアレシオは1.5トン弱のボディーを元気良く振り回してくれる。ATのマニュアルモードの場合、エンジン保護のための回転数制限もあって、必ずしも思い通りのシフトダウンが可能なわけではないが、それを踏まえた上でなら、ワインディング路も充分楽しめるはずだ。

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オンデマンド式フルタイム4×4
積雪路も楽しく安全に走行可能

4×4システムは、通常走行では前輪のみが駆動し、必要に応じて後輪へのトルク配分が行われるオンデマンド方式。リアにアクスル分離機能が採用され、前輪駆動時はリアアクスルが完全に切り離されパワーロスを最大限に抑えるという燃費向上策が施されている。

 

この4×4/4×2切り替えは自動的に行われるが、ドライバーは「ドライブムードセレクター」と呼ばれる3つのポジション(Auto/Sport/Traction)から走行モードを選択できるが、この内Traction(トラクション)モードを選ぶと、リアへのトルク配分やトラクションデバイスの作動がより積極的に行われる。

 

今回は運良く(悪く?)残雪の林道を走ることができたが、タイヤは45%扁平のオンロード用タイヤなのでムリは禁物…ということで、速度を最低限に抑えつつ、Tractionモードで走行。過大なパワーは不要であり、それよりもフラットなトルク特性がコントロールの容易性を発揮するのが積雪路だが、500Xは、そういう意味ではかなり快適な雪道ドライブが可能だ。

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断続的に積雪が途切れ、舗装路と積雪路が交互に表れるようなコンディションは、もっとも得意とするステージだろう。Autoモードで走ると、4×2→4×4切り替えにワンテンポの、ごく僅かなズレを感じるが、その場合も速度さえ抑えていれば、態勢はすぐに立て直せる。

 

コントロールしやすい、ゆるやかなトルクの出方と、電子制御によるトラクションコントロールに助けられて、安全な雪道走行が楽しめた。

 

ただし、20cmを超えるような積雪には、たとえスタッドレスタイヤを装着していても近寄らない方が賢明だろう。腹がつかえては、最適なトラクションコントロールもフラットなトルク特性も全く無力だ。

 

 

今回の試乗ルートは300km弱で、そのうち約200km程度が高速道路だったが、平均燃費はリッター当たり15.3km(車載燃費計による)だった。直線路での急加速やワインディング路、渋滞した都心の一般道、そして積雪路走行等も含めての結果なので、これはかなり優秀な結果と受け止めて良いだろう。

 

衝突回避のための警告システムや自動ブレーキ、車線逸脱警報等の最新技術も満載で燃費も良し。インテリアの質感やSUVとしてのユーティリティーも、このクラスなりに充実している。これで310万円(税別/全国メーカー希望小売価格)という価格は、多くのユーザーを納得させられる設定とみたが、如何だろうか。

 

惜しむらくは、500(チンクエチェント)という超個性的で究極な軽快感のイメージから、やや距離を感じること。しかし、SUVとして成立させる以上はそれもやむなしだろう。

 

いずれにしても、愉しみの守備範囲が広いクルマであることは間違いない。

 

 

【エンジン】

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4×4モデルであるCross Plusに搭載されるのは、1,368cc 直列4気筒マルチエア16バルブ、インタークーラー付きターボ・ガソリンエンジン。最高出力125kW(170PS)/5,500rpm、最大トルク250Nm(25.5kgm)/2,500rpmを発生する。
【騒音計測データ】
●車内・・・・39.0dB
●ボンネット閉・・・・57.0dB
●ボンネット開・・・・66.0dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。

 

 

20160415082016041509上:速度計の目盛が欧州製小型車らしさを主張するメーターパネル。
下:ポップなインテリアながら、質感は充分なインパネまわり。

 

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2016041511上:トランスミッションには、マニュアルシーケンシャルモードを備えた9速AT(トルクコンバータ式)が採用される。
下:「ドライブムードセレクター」の操作ダイアル。3つのポジション(Auto/Sport/Traction)から走行モードを選択できる。

 

 

20160415seatフロントシート(右)は、レザー表皮がおごられた8ウェイパワーシート。3人掛けリアシート(左)座面は一体式。

 

 

20160415rearリアシートは60:40分割式シートバックを採用。ラゲッジルーム床下にはスペアタイヤが収納されている。

 

 

2016041518ヘッドランプにはバイキセノン式を採用。光軸補正コントローラー付き。

 

 

20160415susサスペンションはフロント(左)、リア(右)ともにマクファーソンストラット式の独立懸架を採用。

 

 

2016041521「Cross Plus」の標準タイヤサイズは225/45R18。ホイ-ルはCross Plus専用デザインだ。

 

 

文/内藤知己
写真/佐久間清人、山岡和正