【紹介/試走】MAZDA CX-3 XD Touring L-Package
2015.5.1
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四輪駆動車
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マツダ
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エキサイティング・スモール・ディーゼル発進
デミオ・ベースの進化形コンパクト
ディーゼルのみ!の潔さに自信
今年2月末の発売から1か月間で目標月販台数の3倍を大きく上回る実績を上げ、なお順調に販売を伸ばしているマツダCX-3。
この快進撃は発売前から予測されていたとおりではあるが、実際に街角でCX-3の姿を見かける頻度も増えつつある現在、その人気の高さをあらためて実感している4×4ファンも多いのではないだろうか。
同じマツダの人気車種であるデミオをベースに開発され、エンジンはディーゼルのみ…という思い切ったラインナップでデビューした、その話題 性もさることながら、CX-5で高評価を得た走りの良さ、楽しさという血統を受け継ぎ、SUVファン以外の新しいユーザー層も取り込むポテンシャルを秘め たクロスオーバー・コンパクトとして大いに注目されているSUVである。
兄貴分であるCX-5と同様、「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」と呼ばれる先進安全技術を駆使した各種検知デバイスがふ んだんに盛り込まれドライバー支援が図られているが、SUVファン、あるいはこの新型SUVを購入候補に挙げているオーナー予備群の最大の関心事は、やは り何と言っても、その小排気量クリーンディーゼルであろう。
3グレード全てに4×4を用意
M/T車も選べるうれしい設定
「SKYACTIV-D 1.5」と命名された1.5リッター直4・DOHC直噴ディーゼル・ターボは、前述のようにCX-3全車に設定されるコモンレール式新世代クリーンディーゼルだ。
装備の内容によって「XD」「XD Touring」「XD Touring L Package」と3つのグレードが設けられ、それぞれに4×2と4×4モデルが用意されている。そして嬉しいことに、全てのモデルで6速A/Tと同M/Tが選べるのだ。
最上級グレードの「XD Touring L Package」には、レーダークルーズコントロールや車線逸脱警報、スマートブレーキ・サポート等の最先端システムが標準装備されるが、中間グレードで はオプション、標準グレードでもオプション、あるいは設定無し…といったグレード間の格差はもちろんある。
ただし、スタビリティ・コントロールやトラクション・コントロールなど、走行性能を大きく左右する機構については全車標準装備となっているものも多く、「走りに関しては、グレード差を設けない」という姿勢が、このモデルの位置付けを物語っている。
静粛性向上のため最新技術投入
オプション設定の騒音低減システム
試乗車は最上級グレードである「XD Touring L Package」の4WDモデル、トランスミッションはM/Tを選んだ。
エンジンを始動し、走り始める。ストロークが短く、スコン、スコンと心地良い節度感のマニュアルトランスミッションは、素早く確実なギアチェン ジが可能。リバースはシフトレバーを押し下げて左奥…なので、前進後退を素早く繰り返す切り返しを強いられる場面では、やや操作しづらいが、このシフ トフィーリングは好印象。
何より、窓を閉め切って走っていると、しばらくの間これがディーゼル車であることを忘れてしまいそうなほどの静粛性の高さに驚く。いや、静かと言うより、音も吹け方もガソリン車のフィーリングに近い。
さすがにアイドリング状態で窓を開けていれば、ディーゼル特有の音が聞こえては来るが、この瞬発力といい吹け上がりのシャープさといい、1クラス上の排気量を持つガソリンエンジンに引けを取らないパワー感と言ってもけっして大袈裟ではない。
それでいて、低回転域でじわじわと粘るトルク特性はさすがディーゼル。峠道などでこまめなシフト操作を放棄し、じわじわモリモリと湧き上がるトルクを活かしたAT的なズボラ走行が可能なのも、ディーゼルならでは、である。
静粛性といえば、このCX-3のディーゼルが初採用となる「ナチュラル・サウンド・スムーザー」という新技術も話題だ。これは、ピストンとコネ クティングロッドの連結部にダンパー機構を持つパーツを圧入し、ピストンの振動を打ち消すことでディーゼルノック音を抑制する、という革新的な技術だ。
ただ、残念なことに、これは上位グレードのAT車のみにオプション設定(なぜか電気エネルギー回生システムのi-ELOOPとセットオプション)ということで、今回試乗したMT車には設定自体がない。
しかし今回、アイドリング時に実測した騒音値は、たまたま取材に同行した欧州製プレミアムSUV(3.6リッターV6ガソリン搭載)とほぼ同レ ベルで、この最新技術「ナチュラル・サウンド・スムーザー」なしでもこのレベルの静粛性を実現していることは大いに評価されるべきだろう。
繊細な制御が安定を生む
先進の4×4コントロールシステム
サスペンションは、適度なタイト感と、いわゆる”ゴツゴツしない程度”の快適な乗り心地の両立が図られたセッティング。
立ち上がり、吹け上がりのシャープなエンジンを引き立てるキビキビとした走りを望むドライバーがある程度満足できる、キレのある脚という印象である。
ただ、ある程度の快適性はCX-5に任せて、よりコンパクトなCX-3にはこの軽快感と俊敏性を活かして、よりスポーツ指向に振ったほうが、棲み分けという面でも有効な気がするが如何だろうか。
もとよりクロカン性能を云々できるタイプの4×4ではないし、それを期待するユーザーも少ないであろうことを考えれば、さらにタイトな脚まわりでも面白いはずだ。
ただ、同じオフロードでもダートなら楽しいはず…ということで、凹凸の少ないフラットダートに乗り入れてみた。
通常はFWDで駆動し、タイヤの空転等を検知すると、必要な分だけ後輪にトルクを配分する、という最近ではよくある方式の4×4で、切り替えのためのレバーやスイッチはない。
資料によれば、タイヤの空転のみならず、アクセル開度やステア角度、さらにはワイパーの作動状況や外気温、パワステモーターから拾う路面摩擦反 力までもが、この4×4制御に反映されるとのことで、想像を絶する繊細なコントロールが行われているらしいが、もちろんその細かさは残念ながらドライバー には分からない。
しかし、これらのコントロールやトラクションデバイスの介入はごく自然に行われ、違和感の無い安定した4×4走行が楽しめた。
成熟期に入った感のあるCX-5との差別化、棲み分けをさらに進める形で、少々とんがり気味に進化してもらいたい! そんなことを強く感じたCX-3。まずはこのゴキゲンに元気なコンパクト・ディーゼルをできるだけ多くのユーザーに体験して欲しい。
1,498cc 直列4気筒DOHC直噴ターボ・ディーゼルエンジン。最高出力77kW(105ps)、最大トルク270Nm(27.5kgm)を発揮する。
【騒音計測データ】
●車内・・・・41.0dB
●ボンネット閉・・・・54.5dB
●ボンネット開・・・・68.0dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動時
数値的には3リッター超クラスの高級SUVガソリン車なみの静粛性だった。
スポーティーながら落ち着きのある、外観とは違ってオトナっぽい雰囲気の車内。
アクティブ・ドライビング・ディスプレイ。エンジンONでメーターパネル上に立ち上がり、車速やナビのルート誘導などを透明なスクリーンに表示する。
全車に6速MTが用意されている。心地良い節度感を持つショートストロークなシフトレバーが好印象。第4〜6速はO/D。
センターコンソールに配置されたコマンダーコントロール。カーナビやオーディオはこのダイアルとボタンで操作。ドライビング姿勢を崩すことなく操作ができる。
XD Touring L Package にはパーフォレーションレザーのシートが装備される。XDにはファブリックシートが装備される。
2分割可倒式のリアシート。操作が軽くて容易だが、フラット感は弱め。ただし、このクラスでは充分な容量ではある。
対向車や先行車のドライバーを眩惑させることなく、常時ハイビームでの走行を可能にした「アダプティブ・フロントライティング・システム(AFS)」を採用。
フロントサス(上)はマクファーソン・ストラット式、リアサスはトーションビーム式。アテンザ・クラスのシャーシより14%軽量化されている。