【紹介/試走】MITSUBISHI PAJERO SPORT

2015.11.20

  • 2015112002
    • 四輪駆動車
    • 三菱
  •  既に当サイトでもお知らせしているとおり、今年8月、三菱自動車がタイで生産、販売している「PAJERO SPORT(パジェロスポーツ)」の新型車が発表され、10月から海外で販売が開始されている。


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活躍は海外限定!?
隠れた実力派SUV

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タイ生産の三菱製クロカン4WD
日本未発売車のオフロード試乗

 

純然たる三菱製SUVでありながら、国内では生産も販売もされていないという、ある意味特殊なこの新型パジェロスポーツのオフロード試乗会が、なんと国内で行われるということで、これはもしや? と、四駆ファンなら誰もが抱くであろう期待に胸を膨らませつつ試乗会に出かけた。

 

結果から先に言ってしまえば、10月からタイで販売を開始したこのパジェロスポーツ(仕向地によってはモンテロスポーツ)は、この後、豪州、アセアン、中東、アフリカ、中南米、ロシアなどに順次展開を拡大し、先代モデルと同様、約90ヶ国で販売する計画となっているものの、現時点での日本発売は予定されていない、との話であった。

 

では、何故に国内販売予定のないクルマをわざわざタイから運び込んで試乗会なのかと聞けば、これは同時期に行われていた東京モーターショー2015の取材で来日する各国のジャーナリストに向けての先行試乗会がメインとの由。

 

そんなわけで、せっかく試乗車両が揃っているので国内メディアにもぜひ試乗を…ということらしく、若干の肩すかし感は否めずとも、滅多に試乗できないモデルのステアリングを、しかもオフロードで握れることは願ってもない機会。これはこれで三菱広報部の粋な計らいに感謝しつつ、会場であるオフロードコースに入場する。

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ガソリンとディーゼルを用意
オフロードモードも新設定

 

パジェロスポーツは、やはりタイで生産されるピックアップトラック「トライトン」をベースとするSUVで、今回のモデルで3代目となる。ちなみに初代は1996年にデビューしており、ベースはトライトンの前身であるストラーダだ。これは国内でも「チャレンジャー」というモデル名で販売されていたことをご記憶の方も多いだろう。

 

新型パジェロスポーツに搭載されるエンジンは仕向地によって異なるが、今回試乗した2台のうち、ロシア仕様車には、先代モデルから継承された6B31型3.0リッターV6 MIVECガソリンエンジン、そしてもう1台の豪州仕様車には新開発の4N15型2.4リッターMIVECディーゼルターボエンジンが搭載されていた。

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このうちV6ガソリンの方は初代アウトランダーに設定があったのである程度馴染みもあるが、新開発のディーゼルターボは、これも新たに開発された8速ATとの組み合わせにより先代モデルのディーゼル車に対して約17%の燃費向上と、CO2の排出低減を果たしている。

 

バルブタイミングとリフト量を回転域別に制御するMIVECシステムや、タービン容量を可変制御するVGターボ等の新採用により、最高出力は133kW/3,500rpm、最大トルクは430Nm/2,500rpmを発揮。数値を見ても分かるように、低回転域トルクに特徴のあるディーゼルと言えそうだ。

 

4WDシステムは「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」を採用。前後駆動配分を40:60に設定したセンターデフを採用したフルタイム4WDで、電動アクチュエーターによって「2H」「4H」「4HLc」「4LLc」の駆動モード切り替えを持つお馴染みのシステムだ。

 

また、三菱車としては初採用となるオフロードモードセレクト機能が追加されており、「GRAVEL(未舗装路)」「MUD/SNOW(泥道/深雪)」「SAND(砂地)」「ROCK(岩場/4LLc時のみ)」の4モードが選べる設定となっている。

 

このほか、衝突被害軽減ブレーキシステムや後側方死角警報システム、誤発進抑制制御システムといった先進の予防安全装備も時流に合わせて装備されている。

 

安定、安心のヒルダウン
見せかけのLOレンジとは違う!

 

まずは2.4リッターディーゼルターボ+8速AT搭載の豪州仕様車から。今回は公道走行が不可能なため、オフロードコースのみの試乗ということで、いきなり斜面を登るところからスタートというクロカン4WDならではの試乗スタイルだ。

 

せっかくの新開発8速ATだが、主に燃費向上を狙って高速域でのエンジン回転数最適化が行われているらしく、このようなオフロードではあまりその恩恵を実感できない。ただし、急斜面の登坂中Dレンジのままでも、シフトアップして失速してしまうようなこともなく、最適な制御が行われる。トランスファーのシフト、つまり駆動モードはLLc、オフロードモードは「GRAVEL」だ。

 

20度近い勾配でもさほど回転を上げることなくトコトコと登っていける。

 

ここ最近の4WD車試乗では、四輪のトラクション確保をサスストロークではなく電子制御デバイスに頼り切っている四輪独立懸架車ばかり乗っているせいか、ほとんどトラクションコントロールが働かないまま坂を登っていくこの感覚がすこぶる新鮮だ。

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山を登り切ると今度は急な下り勾配。ヒルディセントコントロールのスイッチを入れる前に、試しにDレンジの1速で下ってみると、充分すぎるほどの低速で下ることができる。これなら、大袈裟ではなくヒルディセントコントロール機構は不要である。それなら…と、2速にシフトアップしてみるが、それでも危険を感じるまでの速度には至らない。

 

トランスファーにLOレンジがあるだけでもありがたいと思わなければならない昨今にあって、これは本当にクロスカントリー走行を楽しみたい人にとっては貴重な設定だ。

 

ATでこれなら、さらに最終減速比の設定が低速化されていると思われるMT車は、さらなる低速走行が可能なはずだが、残念なことに、その日用意されていた唯一のMT車は2WDモデルだった。

 

ちなみに当日は、パジェロスポーツのベースモデルであるトライトン4WD(チリ仕様車)も用意されており(素晴らしい!)、これが同じ4N15型ディーゼルターボを積む6速MT車だったので同じコースを試乗してみたが、LOレンジは予想どおりのゴキゲンな極低速設定が確認できたのだった。

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モーグル走行も楽しくクリア
キチンと応えてくれる四輪駆動

次に3リッターV6ガソリン車に乗り換え、人工モーグル・セクションへ。ディーゼルに較べて立ち上がりが俊敏で、豪快に吹け上がる小気味の良いエンジンだ。

 

低回転域のトルクはディーゼルにかなわないが、このようなモーグル地形で細かいアクセルコントロールを強いられるような場面でも、けっして扱い難いエンジンではない。むしろ、瞬発力を利用したメリハリのあるコントロールが活かせる。

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上り勾配の林間コースで見せた路面追従性の良い脚(特にリジッドのリア)も、さすがにここまでのモーグル地形ではネをあげる。ただし、前後独懸の脚よりは3輪接地している時間も長いので、電子制御デバイスへの依存度が高めなクルマに較べると安定感が全く違うのだ。

 

サスペンションは前:ダブルウィッシュボーン+コイル、後:リジッド+コイルで、リアはさすがのホイールストローク量。リアデフロックの設定も心強い。

 

また、浮いたタイヤの空転を検知して反対側の接地したタイヤに駆動配分するトラクションコントロールの介入がごく自然に行われるので、ドライバーは違和感なくスムーズに操縦できる。

 

 

クロスカントリー走行の王道とも言えるヒルクライム/ヒルダウン、モーグルで、外見からは想像しにくい優秀さを見せたパジェロスポーツ。これは、ちょっと意外で痛快だった。

 

いや、外見もよく見れば、さほどダメな対地障害角やロードクリアランスと言うワケでもない。

 

こいつは4WDの本当の楽しさや実用性を必要としている人にとっては、実はかなりキチンと応えてくれる四駆なのではないか? パジェロスポーツは、そんな四駆だった。

 

考えてみれば、この新開発のクリーンディーゼルだって、欧州の新しい排気ガス規制にも適応できるエンジンで、当然日本への導入にも大きな問題は無いはず。

 

居住性や機能性など、ユーティリティー面も、そこは長年この分野で蓄積してきたノウハウが活かされた仕上がりが各部に見てとれる。

 

日本で買えないのに、かなり気になる四駆が、個人的にまたひとつ増えてしまった。

 

【細部写真】

2015112009新開発の2,442cc 直列4気筒MIVECディーゼルターボを搭載。最高出力133kW(181ps)/3,500rpm、最大トルク430Nm(43.9㎏m/2,500rpm)を発生する。MIVEC機構やVGターボを採用。

 

20151120102015112011上:視認性抜群のシンプルな2眼メーター。
下:ヨーロッパの高級SUVを研究し尽くしてデザインされたというインテリア。

 

2015112012新開発された8速AT。Dレンジでセレクターを倒してマニュアルシフト・モードへ。

 

2015112013パーキングブレーキはスイッチ式の電動パーキングブレーキを採用する。スーパーセレクト4WD-Ⅱの駆動モードはダイアルで選択する。

 

201511201520151120162015112017本革シートがおごられた車内。ホールド性、質感とも問題なし。フロントシートはクロカン車らしいアップライト・ポジション。

 

20151120182015112019分割可倒式のリアシート。サードシートもそこそこの広さが確保されている。ほぼ完全なフラットになる荷室は使いやすい。荷室最後部フロア下にも収納スペースを確保。

 

2015112020チューブタイプのLEDを採用したデイタイムランニングライトを装備するヘッドライト。

 

20151120212015112022高効率エネルギー吸収シャーシーフレームを採用。フロントサスは、ダブルウィッシュボーン(左)、リアサス(右)はリジッド(車軸懸架)式コイル。

 

2015112023標準タイヤは265/60R18サイズ。切削加工ホイールはキリッとしたデザインが上質感を与える。

 

文/内藤知己
写真/村西一海、宮島秀樹