【紹介/試走】SUBARU EXIGA CROSSOVER 7 2.5i EyeSight
2015.8.21
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四輪駆動車
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スバル
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走りが愉しい正統7シーター
先進のアイサイトは標準装備
スバルならではの7人乗りワゴ
「ボクサーエンジン+四輪駆動」というスバルならではの多人数乗りミニバンとして今年4月まで販売されていたのが初代エクシーガ。これと入れ替わる形で登場したのが今回のクロスオーバー7(セブン)である。
2.5リッターNAエンジンを踏襲する7人乗りワゴンというエクシーガの後継モデルながら、ミニバンとは呼ばず、クロスオーバーSUVとして生 まれ変わった…これがクロスオーバー7のアピールポイントとなっており、ラインナップは「2.5i EyeSight(アイサイト)」のみのモノグレードだ。
この分野では先駆とも言える運転支援システム「アイサイト(ver.2)」を標準装備する2.5リッター水平対向4気筒DOHCガソリン搭載のAWD、7人乗りワゴンである。
モノグレードゆえ、選択肢はオプションの本革シートを選ぶか否かくらいで、安全性能や走行性能に直接関わるようなメーカーオプションの設定はない。
したがって、”3列目シートは必須”というユーザーであれば、購入時にほとんど迷う余地のないモデルだ。
クセのないエンジンフィール
実用的なマニュアルシフト機構
一般にクロスオーバー型SUVというと、乗用車より腰高なシルエットを持つクルマをイメージするが、このクロスオーバー7は重心の低さを売りにしていることもあり、シルエットもドライビングポジションも低いため、着座感覚はセダンに近い。
ボンネットを開けてみると、ボクサー(水平対向)エンジンのメリットのひとつであるマウント位置の低さが一目瞭然で、視覚的にも低重心は実感できる。
この低重心とシンメトリカル(左右対称)というシャーシーの特徴がバランスの良さや安定性を生む…とされているが、これは街中でもワインディングでも確かに実感できるレベルだ。
とりわけ、コーナリング時の安定性、ステアリング操作に対する素直さ、回頭性の良さは秀逸で、そこそこの速度域であっても常に安心感があり、操る愉しさも充分ある。
2.5リッターのガソリンエンジンは、NAらしい自然なパワー/トルクフィーリングが扱いやすく、アクセル・レスポンスも良好。リニアトロニック と呼ばれる無段変速+マニュアルモード(6速)付きトランスミッションも、シャープな立ち上がりとシームレスなシフトチェンジでスムーズなドライビングを 可能にしている。
また、マニュアルモードはシフトレバー(+/−ポジション)のほか、ステアリングコラムに配置されたパドルでも操作でき、レスポンスが良く実用的な設定となっている。
これらの要因により、7人乗りのワゴンであることを忘れるくらい軽快に走ることができ、見た目以上に操る愉しみを味わえるクルマだ。
サードシートも快適に使える
“7人乗り”重視のユーザー向け
そして、このクロスオーバー7最大の注目ポイントは、この走行性能に”ちゃんと使える3列目シート”が備わっている点だろう。
これは、”プラス2名乗ることもできる”補助席的なものではなく、平均的な体型の大人が2名、ふつうに座ることができるシートだ。リアシート(つ まり2列目)がスライドするので足元スペースの調整もでき、左右独立リクライニングも可能。座面の面積や奥行き、高さも充分に確保されているので、この手 の3列目シートにありがちな、ヒザを抱えるような姿勢を強いられることもない。
ただひとつ残念なのは、2列目シートを前方にスライドさせて3列目シートに乗降する(いわゆるウォークイン)機構を、3列目の乗員が自分で操作できない、という点だ。つまり、先に降車した第三者にその操作を頼まないとクルマから降りられないわけだ。
また、3列目シートの大きさや形状は他のシートと同等のものなので、非使用時の格納には限界があり、畳んだ時、荷室フロアがフラットにならなかったり…といったウィークポイントがあることも否めない。
つまりは、荷室スペースの使い勝手よりも3列目シートの居住性を優先する、という選択規準の明確なユーザー向けということだろう。
このほか、シートに関しては、メーカーオプションのウルトラスエード+本革シートの質感が良く、特に人工皮革であるウルトラスエード部分は、見た目、手触り、質感ともホンモノのスエードに見劣りしない出来の良さである。
ダートでも安定走行が魅力
運転が楽しいファミリーSUV
スバルのAWDシステムといえば、フォレスターやインプレッサのMT車に採用されている電子制御を使用しないビスカスLSD付きセンター デフ方式もあるが、クロスオーバー7のそれは、レヴォーグ、レガシィ等と同じ「新世代アクティブトルクスプリットAWD」が採用されている。
これは、前60:後40のトルク配分を基本に、加速、登坂、旋回などの走行状態に合わせてリアルタイムにトルク配分をコン トロールする方式。4輪の駆動状況やエンジントルクなどに加えて、操舵角、ヨーレート、横加速度信号などの車両情報をモニターすることにより、コーナー進 入時における操舵初期の反応を向上させると同時に、タイトコーナーブレーキング現象の抑制に対し、より緻密なトルク配分制御も行っている。
ダート走行では、50扁平のロープロファイルタイヤゆえ、ホイールのリムをキズ付けないようフラットな路面を選んで走る必要有り。
このようなスリップしやすい路面では、かえって前述した安定性がさらに際立つ。おそらく、圧雪路などでもコントロールしやすく、また、それが愉しいドライブになることが容易に推測できる。
この”曲がりやすさ”や効率良く路面にトルクが伝わっている感覚は、AWDシステムを中心に、各電子デバイスの違和感のない自然な制御が作りだしているもので、オンロード以上に安心感が高い。
おそらく、3列目シートが快適に座れるクルマの中ではトップクラスの”走る愉しみ”が与えられたSUVだろう。
2,498cc 水平対向4気筒DOHCガソリンエンジンを搭載。NA(自然吸気)で最高出力127kW(173ps)、最大トルク235Nm(24.0kgm)を発生する。
【騒音計測データ】
●車内・・・・38.0dB
●ボンネット閉・・・・54.5dB
●ボンネット開・・・・65.0dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動時アイドリング時。
水平に動くピストンが互いの振動を打ち消し合う、という特性を持つボクサー4
上: シンプルな2眼メーター。右下の指針式メーターはアナログ燃費計。
下:内装色はボディー色にかかわらず全てこのタン/ブラック。シート素材は標準がファブリック+合成皮革、オプションでウルトラスエード+本革が選べる。
トランスミッションは無段変速のリニアトロニック。6速マニュアルシフト機構付き。
ステレオカメラの監視によるアイサイト(ver..2)の機能は、ドライバーの任意でキャンセル可能。右は自動ブレーキ(プリクラッシュブレーキ)、左は車線逸脱検知のOFFスイッチ。
試乗車はオプションのウルトラスエード+本革シートを装備。座面と腰の部分は人工皮革のウルトラスエードを使用。滑らず、肌触り良く、高級感あり。2列目シートは左右独立スライド&リクライニング可、3列目はリクライニングのみ。
2、3列目とも背もたれが倒れるだけの可倒式シートなので、リアを荷室として使う場合、フロアはフルフラットにはならないが、スペースは充分確保されている。最後部には床下収納あり。
フロントサスは、マクファーソン・ストラット(上)、リアサス(下)はダブルウィッシュボーン式コイル。ソフトよりの設定。