【紹介/試走】TOYOTA HILUX Z ~国産ピックアップ4×4復活の起爆剤に!~

2017.11.14

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    • 紹介/試走
    • トヨタ
  • 本格と言えばこれほど本格派な四駆も、今や希少だ。乗り手の意思によって確実に4輪が駆動するシステム、フレーム構造と板バネ+車軸懸架による屈強なシャーシ。すべては、それを必要とするユーザーのために生産されている…これが今出来のSUV四駆と大きく異なるポイントだろう。ハイラックスの復活は、四駆の本来の姿の復活でもある。


国産ピックアップ4×4復活の起爆剤に!

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文/内藤知己

写真/宮島秀樹

 

タイからやって来た“輸入車”
2グレードのシンプル構成

 

2004年を最後に新車市場から姿を消していたトヨタのピックアップトラック、ハイラックスが13年ぶりに復活した。ただし、これは日本国内マーケットでの話であって、タイやアルゼンチン、南アフリカ等、海外での生産および販売は続けられてきたので、今回の復活は “日本への輸入開始”ということでもある。

 

同じピックアップトラックで言えば、三菱のストラーダ、および後継のトライトンがタイで生産され、2011年まで日本に輸入されていたことは記憶に新しい。

 

ちなみにタイと言えば、知る人ぞ知るピックアップ天国であり、日本で4×4ブームが起きる以前から、都会からジャングルに至るまでピックアップトラックが人々の生活の足として根付いている国だ。歴代のトヨタ・ハイラックスも「Tiger(タイガー)」「Vigo(ヴィーゴ)」「Revo(レヴォ:現行型)」といったサブネームとともに親しまれてきた。

 

そんなタイからやって来た8代目ハイラックスの日本でのラインナップは2タイプ。プリクラッシュセーフティシステム等の最先端安全技術や、マニュアル式リアデフロック等の本格オフロード機構を標準装備する上位グレードの「Z」、そして、基本走行性能は同等で、スチールホイール等装備面で簡素化された標準グレードの「X」だ。

 

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両者ともエンジンは、最高出力110kW(150PS)/3,400rpm、最大トルク400Nm(40.8kgm)/1,600〜2,000rpmを発生する2.4リッター直4ディーゼルターボ(2GD-FTV型)を搭載。トランスミッションはマニュアルシフト付き6速AT、駆動方式はパートタイム4×4。もちろん減速比2.566:1のローレンジを備えるトランスファーも標準装備である。

 

この他、トヨタ車ではお馴染みのJAOS製パーツやTRD仕様車も含めた純正カスタムパッケージモデルも用意されている。

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TRD製「ハードトノカバー」装着車

 

トルクフルな2.4リッターDターボ
静粛性は高級輸入SUVレベル

 

試乗車は上級グレードのZ。個人的な好みで言えば、フロントグリルやリアバンパー、ドアノブにクロームメッキの飾りは要らないし、ホイールも頑丈なスチール製がよい…ということで、標準グレードのXを選びたいところだが、残念なことにXには、Zに標準装備されているリヤデフロック機構の設定が無い。

 

これは本格的なクロスカントリー走行が可能なハイラックスにとってはある意味必須アイテムなので、オプションでもよいから、ぜひ標準グレードにも設定が欲しい装備だ。

 

ちなみにZには、4×4走行時にいずれかのタイヤの空転を検知すると、その車輪にブレーキをかけ、それ以外の車輪に駆動力を配分する…という、言わば“疑似デフロック”的なデフの差動制限を利用した電子制御機構「アクティブトラクションコントロール」も装備されている。

 

そんなわけで、上級グレードのZを試乗車に選び、さっそく試走を開始する。

 

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可変ノズル式ターボを採用したこの2.4リッター直4コモンレール式直噴ディーゼルは、劇的なパワーを見せつけるタイプのエンジンではないが、スペックを見ても分かるように、低回転域から高いトルクを発揮する頼もしいパワーユニットだ。

 

うっかり雑なアクセルの開け方をすると、後輪が派手に空転して非常に不安定な状態で発進…と、これがハイパワーエンジンを積んだ空荷のピックアップのイメージだが、新型ハイラックスは、その点あまり気を遣う必要はない。

 

たとえ雨天時で路面が濡れていても、全車に標準装備されるTRC(トラクションコントロール)が働いて空転を抑えるし、パワーの立ち上がり方が緩やかなので発進時も常に安定している。

 

かと言ってけっして非力なわけではなく、だらだらと続く長い上り勾配等ではアクセルを踏んだ分グイグイ加速させるトルクの太さが頼もしい。

 

エンジン音は、アイドリング中、走行中を問わずディーゼルのそれとハッキリ分かる音質だが、実測したアイドリング時の車内騒音値はガソリン乗用車並みの静かさだった。遮音性能では高級ディーゼルSUVに引けを取らないレベルと言っても過言ではない。

 

今では稀少 “オーソドックス”な脚
高剛性化と電子制御で快適、安全

 

ハイラックスの脚まわりは、前:ダブルウイッシュボーン、後:リーフ・リジッドで、これは1991年から変わっていないが、乗り心地は大幅に改善されている。

 

もちろん、空荷時のリアの落ち着きの無さは宿命と言えるが、フレーム、ボディーの高剛性化や電子制御が実現させた旋回時の挙動安定は、このクルマがピックアップという特殊な形をした貨客兼用車(1ナンバー)であることを忘れさせるに充分なレベルにある。

 

常識的な速度であれば、尻の軽さとロングホイールベースの曲がりにくさを感じさせず、ふつうのSUVと同じ感覚でドライブできることが可能である。

 

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全長5.3m、ホイールベース3m超えのボディーは、さすがに市街地では持て余す場面も多い。特に昭和サイズの区画の駐車場、住宅密集地の路地、コインパーキング等では、最小回転半径6.4mと、1mを超えるリア・オーバーハングを充分考慮した取り回しが必要になる。

 

とは言え、360度すこぶる良好な視界や、車両感覚の掴みやすさを考えれば、これは慣れの問題であることも事実だ。視界と言えば、左フェンダー上にニョッキリ生えているフロント&サイドアンダーミラーも実用的で、けっこう重宝した。

 

 

ちゃんとクロカンできる駆動系
乗り手の意思で操れる愉しさ

 

最後にオフロード試走…と言っても、ちょっとしたモーグル地形と林道走行レベルだが、それでもこのハイラックスが持つポテンシャルの一部は充分に体感できた。

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4WDシステムはパートタイム式。駆動モードは、2H(高速2駆モード)/4H(高速4駆モード)/4L(低速4駆モード)の3通り、センターデフは持たないので4WD時は前後直結状態だ。

 

最終減速比4.100、トランスファー(低速)減速比2.566と、充分な減速を行うので、ATながらクロカンに適した極低速走行も可能。ABS回路を利用して下り急勾配をゆっくり下ることができる「DAC(ダウンヒルアシストコントロール)」も装備されているが、充分にエンジンブレーキが利くこの駆動系なら不要かも知れない。

 

短いアッパーアームを見ても一目瞭然なフロントサスの短足ぶりはともかく、リジッドアクスル式リアサスのストローク量はご覧のとおりで、分厚く重ねられた板バネ(リーフスプリング)が、意外に柔軟にしなっている様子が確認できる。

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深めのモーグルで、リア片輪が対角線上に浮き上がるまで進み、前進がかなわなくなったところで伝家の宝刀「リヤデフロック」スイッチ0N。どこで効くか分からない電子制御と違い、ドライバーの意思で確実な駆動力配分(左右後輪50:50固定)を指定できるこのシステムは、やはり安心感が違う。浮いた車輪はそのままで安定の前進、難なくクリア。ただし、左右輪が直結されることで直進性が極端に高まる、つまりステアリングを切っても曲がりにくく、あるいは曲がらなくなる特性は常にアタマに置いてドライブする必要がある。

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フラットダートの林道では、やはり空荷のハンデは舗装路上以上に大きく、リアの接地感の希薄さは否めない。ただ、実際にはVSC(ビークルスタビリティコントロール)とTRC(トラクションコントロール)が車体の横滑りなどを常に監視し軌道修正するので、ドライバーがライン取りに集中できることが最大のメリットである。

 

 

 

今回の取材期間中、他のSUVでは見られなかった街行く人々の反応が印象的だった。「トラックって意外にカッコいい!」というこの反応は、どれもコレも同じに見える現在のSUVへのアンチテーゼなのかも知れない。

 

ピックアップのカッコ良さが評価されず、ついに純然たる国産ピックアップ4×4が絶滅してしまった日本というマーケットで、今後どこまで健闘できるか…に注目されるハイラックスだが、ぜひとも国産ピックアップ復活の起爆剤になって欲しい。

 

【細部解説】

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2,393cc 直列4気筒直噴ディーゼルターボエンジンを搭載。最高出力110kW(150PS)、最大トルク400Nm(40.8kgm)を発生する。可変ノズル式ターボを採用。

 

【騒音計測データ】

  • 車内・・・・39.5dB
  • ボンネット閉・・・・63.0dB
  • ボンネット開・・・・71.0dB

※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。

 

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上:オプティトロンメーターと4.2”TFTカラーマルチインフォメーションディスプレイの組み合わせ。

下:本革巻きステアリングホイールを中心としたシルバーの装飾がスポーティーなインパネ。

 

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左からTRC解除、DAC(ダウンヒルアシストコントロール)、リヤデフロックの各スイッチ。

 

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トランスミッションはスーパーインテリジェント6速AT。マニュアル感覚のシーケンシャルシフトマチック付き。シフトノブは本革巻き。

 

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ダイアル式のトランスファー切り換えスイッチ。H2は4×2モード、H4は4×4高速モード、L4は4×4低速モード。

 

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Zには上級ファブリックシートを装着。運転席は6ウェイ、助手席は4ウェイシート。

 

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リアシートは60:40分割チップアップ式。標準グレードのXは一体型チップアップ式。

 

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オートレベリング機構付きのLEDヘッドランプ。(ヘッドランプクリーナー付き)。

Xにはハロゲンヘッドランプを採用。

 

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2面鏡式の補助確認装置。デザインは賛否両論ながら、実用性は高い。

 

 

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四隅に固定用フックを設けた荷台。

 

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フロントサスは、ダブルウイッシュボーン+コイル(上)、リアサス(下)はリジッドアクスル+リーフ。

 

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リアサスのリーフスプリング。リーフ間の隙間を多くして板間摩擦を減少させ、乗り心地と柔軟性を向上させている。

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両グレードとも標準タイヤは265/65R17サイズ。Zはアルミホイール、Xにはスチールホイールが組み合わされる。