【紹介/試走】プジョー3008

2017.6.7

    • プレミアムSUV
    • ヨーロッパ車

プジョーSUVの第二弾

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SUVの広がりは日本だけではなく、ヨーロッパも含む全世界的な傾向となっており、SUVに無縁だと思えたプジョーも、SUVラインナップを充実させていくことを発表。これまでは3008(先代)、アウトランダーとプラットフォームを共用する4007といったモデルを展開してきたが、そのラインナップを一新。昨年紹介した2008、今回紹介する新型3008、そして、秋に登場する3008のロングホイールベースバージョンとなる5008の3車種構成とすることが発表されている。

 

いずれもプラットフォームは乗用車にも使われているもの。これらプジョーの新SUVラインナップの特徴とは、プジョーらしいデザインや装備、そして操作性に加えて、あえて機械式4×4を採用せず、FFベースのラインナップとしていること(4WDはPHVで展開予定)にある。

 

ちなみに、プジョーは2015年からダカールラリーに復帰し、2016、2017年と2年連続で総合優勝を果たしただけではなく、2017年はなんと1-2-3フィニッシュを飾ったことも記憶に新しい。

 

そのダカールラリーに参戦したプジョーのマシンは、実は4×4ではなく、4×2。プジョーとしては、4×4ではなくてもオフロードを走れること(しかも優勝できること)を実証しており、その技術を市販車にもフィードバックしているという訳だ。しかし、実際に4×4に乗っているユーザーとしては、すくなからずFFでは走りきれないシーン(たとえば雪道の上り坂など)を少なからず目にしていることもあり、プジョーのスタンスにどことなく疑いを持ってしまう。

 

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3008に与えられたオフロード走破性とは

そんな穿った目を持って3008をテストドライブすることになったが、オフロードへ足を踏み入れる前にそのスペックを確認しておこう。

 

テスト車両は、オフロード走行をアシストしてくれるデバイスであるグリップコントロールを採用したGTLine(すでに完売となっているDEBUT EDITION)だ。SUV然としたスタイリングは、最低地上高は219mm(ホイールベース中)、アプローチアングル20度、そしてデパーチャーアングル29度で確保。スタイルからも、デパーチャーアングルはそこそこに確保されているかなといった印象はある。

 

しかし、2008よりもフロントオーバーハング、ホイールベースともに長いことから、アプローチアングル、ランプブレイクオーバーアングルに過度な期待は禁物だ。オフロード走破を語る装備(技術)として、オールシーズンタイヤ、トラクションコントロールのプログラムを5つのモードからセレクトするグリップコントロール、そして、3008から加わったヒルディセントコントロールが用意されている。

 

恐る恐るオフロードへ足を踏み入れてみると、いわゆるフラットな林道や河原レベルであればクリアランスをそれほどに気にすることなく走ることができる。もちろん、ボディーをヒットさせないライン取りは必須であり、大きくバウンドさせるような操縦、ドライビングは禁物だ。

 

それでも、ちょっとした上り坂で路面に起伏があると、タイヤがグリップを失う。しかし、即トラクションコントロールが作動し、的確なトラクションを提供。ズズズッという音、振動が聞こえてくるものの、そこで前進できなくなるようなことはなかった。「でも、それって乗用車でも走れるシーンでの話でしょ?」と思われるかも知れない。確かにそういったレベルのシーンではあったが、それでもグリップ制御に関しては乗用車レベルとは異なっており、簡単に言えば、グリップを失ってからのトラクションのコントロールが緻密かつ複雑であり、FFではないように感じた。

 

ちなみにグリップコントロールの細かな制御を行うマッドモードをセレクト。このモードでは左右いずれかのタイヤがグリップを失うと、さらにタイヤを回転させてグリップを失わせタイヤに詰まった泥や小石を吐き出しつつ、路面μを計測。次に、グリップしているタイヤにトルクを優先して伝え、状況に応じて両輪に適切なトルクを伝達して、クルマを前進させてしまうというもの。このあたりは、ラリーで培われた技術がまさにフィードバックされているといった印象を受ける。

 

そんなグリップコントロールをもう少しチェックしてみようとスタック覚悟で小さなバケツにトライ。小さなといってもバケツの底は全高以上の深さがあるし、上り斜面は砂利が浮いており、落ちることはできても、FFで上ってくるのは無理だろうと思われるようなシーンだ。下りはヒルディセントコントロールが作動するが、あまりに小さなバケツゆえに完全に速度をコントロールする前に底に下りてしまう。

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続いて、バケツを脱出する(上る)ために、アクセルを踏み込むとタイヤが勢いよくスピンするものの、すぐにタイヤをグリップさせてクルマを前進させ、そしてまたグリップを失いながら(スピンさせながら)もグイグイと上りきってしまった。まぐれかと思って幾度となく試したが、結果は同じ。これって、FFだったよな? と幾度も確認したほどだ。

 

ちなみにアクセルペダルは踏み込みっぱなしではなく、グリップ量に応じて、自ら少々コントロールを行ったが、その際の操作性はとてもいい。ドライバーがどうしたいかを読み取りながら、路面状況に的確に対応させているといった印象がある。そう、コントロールのしやすさがあり、それもまた驚きだった。

 

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難易度を上げてさらなるステージへ

ここまで走れるならばと、さらに難易度を上げてみようとエスカレート。段差を上りつつ、リアタイヤが完全に浮くというシーンをチャレンジ。さすがにアプローチアングルは厳しく、クロスカントリー4×4のようなつもりで進むと、いとも簡単にフロントバンパーを擦ってしまい、誘導がないと無理であることを悟る。

 

しかし、そんな誘導さえあれば、リアタイヤが完全に浮き、対角線にあるフロントタイヤも少々浮き気味になったとしても、段差を上ってしまうのだ。そう、FFなのに。これもまたグリップコントロールの制御によるものだが、ラリーでの技術が相当にフィードバックされていることを強く感じた。

 

この3008、クリアランス不足から積極的にオフロードにアタックすることは難しいが、頼もしいオフロード性能を持っていることは事実だ。と書きながら、4×4の良さを知っている身としては、僻みにも似た悔しさがあるが……。

 

 

 

YM2X4210プジョー初採用となるヒルディセントコントロールは、傾斜5%から作動。スノードライブでの活躍が期待できる。操作は、ATシフトレバー前にあるスイッチを押して、システムをオンにする。

 

YM2X4248浮き砂利が多くあるような上りのシーンにて。時にグリップを失わせつつ、トラクションを確保しつつ、左右輪をコントロールして、フロントタイヤの駆動だけで上っていってしまう。アクセルコントロールがしやすいことも好印象。グリップコントロールのモードはマッドモードをセレクトした。

 

IMG_5182a段差へと上るシーンでリアタイヤが浮いても、やはりトラクションコントロールを作動させて前進させていく。ただ、アプローチアングルが不足しており、ライン取りはかなり慎重にならざるを得ない。言うまでもないが、乗用車ベースのSUVゆえにサスペンションの伸びは少なく。つまり、短足。

 

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3008としては2世代目となるモデルで、3月に日本デビューを果たしたばかり。駆動方式はFFで、エンジンは1.6Lガソリンターボと、夏に導入される2.0Lディーゼルターボを設定。いわゆるCセグベースのSUVで、日本ではギリギリスタンダードと呼べるサイズ。

 

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プジョーらしいスタイリッシュかつ斬新なデザインが印象的。伸びやかなサイドビューもトピックとなっている。乗車定員は5名。秋にはボディを190mmストレッチしサードシートを備えた5008が日本デビュー予定。

 

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チェッカーフラッグをモチーフにしたグリル、LEDを採用したヘッドランプが個性をアピール。

 

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テールランプはライオンが爪でひっかいたような3本のラインをデザイン。ちなみに最外側はサイドビューからラインが続く。

 

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i-cocpitを採用したインパネ。コンパクトハッチバックの208から採用されているデザイン。メーター部はステアリングの内側から覗くのではなく、ステアリングの上から見ることとなる。オーディオやエアコンの操作は大型タッチパネルスクリーンと、トグルスイッチによるメニューセレクトによって行う。

 

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BMWと共同開発した1.6Lガソリンターボエンジンを搭載。低回転域からのトルクに富みながら高回転までしっかりとパワーを発生。スポーティーさを愉しめるだけではなく、日常での扱いやすさも備えている。

 

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プジョーらしい身体をしっかりとホールドしてくれるシートデザイン。シートポジションはクロカン的ではなく、どちらかといえば乗用車的。

 

ラゲッジ

6:4分割可倒式を採用したリアシートにより、定番のアレンジをこなすラゲッジルーム。リアゲートはハンズフリー電動テールゲートを採用。

 

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オールマイティーな走りに対応するためオールシーズンタイヤを採用。サイズは225/55R18。乗り心地はしなやかなシャシー性能によって快適さがある。

 

http://web.peugeot.co.jp/3008-suv/

(文章:吉田直志/写真:山岡和正)