【紹介/試走】LINCOLN NAVIGATOR

2016.1.22

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    • プレミアムSUV
    • FORD
  •  リンカーン・ナビゲーターは、北米マーケットが空前のSUVブームに沸いた1990年代の後半に、いわゆる"プレミアムブランドSUV"として誕生したフルサイズアメリカン4×4だ。


V8不要!駿足の巨漢

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プレミアムSUVの先駆け
ブームを加速させた立役者

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当時のフォード・エクスペディションをベースに高級装備を施し、伝統あるリンカーン・ブランドで展開して成功を収め、後にGMがユーコン・デナリをベースとするキャデラック・エスカレードでこれに追随したことは周知のとおり。トヨタ・ランドクルーザー80をベースとするレクサスLXが登場したのも、この90年代後半である。

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こうした当時のプレミアムブランドSUVは、バンやピックアップをベースとする既存のモデルに贅沢な内装と快適装備を採用し、高級車ブランドのエンブレムを付けただけの急造リバッジモデルが多く、初代ナビゲーターも”顔と装備が違うだけ”のトラック然としたクルマだった。しかし、今ではすっかりリンカーンの代表車種として認識されるポジションを確立している。

エンジンを大幅サイズダウン
巨漢ながら運転は意外にラク

昨年夏に「大幅改良」を受け、7月から日本でのデリバリーが開始されている新型の注目ポイントは、お馴染みのEcoBoost(エコブースト)エンジンの搭載である。

改良前に搭載されていた5.4リッターV8OHCに代わって3.5リッターV6DOHCツインターボに換装…ということで、大幅なダウンサイジングを果たしたわけだが、そのパフォーマンスや如何に? というのが今回の試走の最大の関心事だ。

アメリカンフルサイズ4×4に3.5リッター? そもそも本国でV8以外のエンジンが受け入れられるのか? というのが世間の大方の反応だが、そこはエンジンにしても、サスペンションにしても、このSUVカテゴリーでは常に先駆者だったフォードが自信を持って行った改革である以上、期待を裏切ることはなかろう…そんな確信もありつつ試乗を開始する。

ドアを開けると自動的にせり出してくるパワーランニングボードに脚をかけ、ドライバーズシートに着席。この自動ステップやヒーター&クーラー付き本革シートは高級車装備としてアピール度高めだが、全て樹脂製のダッシュボードに高級感は希薄だ。「※写真は米国仕様車で、日本仕様とは異なります」との注意書きが入ったカタログ写真には本革らしき素材で覆われたダッシュボードが写っているので、本国ではオプション選択できるのかも知れない。

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この車格で左ハンドルだと、日本の街中では当然いろいろな不都合もあるが、そこはオーナーの好みにも関わる部分なので、これに関する苦言は無粋だろう。ちなみにサードシートへのアクセスは左右どちらからでも可能だし、リアゲートは上開き式なので、使い勝手の問題はさほど無いように感じる。

全長5m超、全幅2m超の巨漢ながら、伝統的にスクエアなボディーは車両感覚を掴みやすく、視界も良好。パワーシートの調整代も大きいので、ドライバーの体格を選ぶこともない。つまり、大きさに関しては、見た目ほど取っつきにくいクルマではないと言って良い。

巨体を軽快に走らせるV6
サスも先進の四輪独立懸架

6速ATのセレクターをDレンジに入れ、アクセルを全開にすると軽やかなエンジン音を響かせて軽々と加速する。2.7トン超のボディーゆえ劇的な加速フィーリングではないが、とにかく軽快だ。

最高出力は283kW(385PS)/5,250rpm、最大トルクは624Nm(63.6kgm)/2,750rpmということで、以前の5.4リッターV8の最高出力224kw(304PS)/5,000rpm、最大トルク495Nm(50.5kgm)/3,750rpmを大きく上回るスペックである上に、注目すべきは、より低い回転数で最大トルクに達しているという点。排気量で大幅にサイズダウンした分、過給器による高回転で振り絞ったパワー/トルクで対応か? という予想を見事に裏切ってくれる、頼もしく、また扱いやすいパワーユニットである。

また、この軽快さはパワーのみならず、エンジンの軽量小型化による恩恵も充分に受けていて、回頭性の良さにも大きく貢献している。以前は巨大なV8が収まっていたエンジンルームにコンパクトなV6が低く、それも後方にちょこんと鎮座している様からも、それは一目瞭然だ。

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四輪独立懸架の脚まわりには、走行状況に応じてショックアブソーバーの減衰力を最適化する可変コントロールダンピング・サスペンションが採用されており、ワインディング路やコーナー等では踏ん張りが利き、高速巡航ではソフトでしなやかな乗り心地…というこの手の大型SUVでは理想的なサスペンションに仕上がっている。

また、このほかに、サス設定に加えてパワステのアシスト量も含めて3つのモード(ノーマル/スポーツ/コンフォート)を選択できる「リンカーンドライブコントロール」も備わっているが、これはメーターパネル内のディスプレイを切り替えて操作する必要がある。

4×4システムは従来型からの踏襲で「コントロールトラック4WDシステム」を採用。4×4/4×2/4×4AUTOの切り替えはインパネ中央部のボタンで操作可能だが、4×4Loレンジの設定はない。その代わり、ヒルディセントコントロールが装備されるという、近頃ではお馴染みのパターンである。

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このほか、ロールスタビリティコントロールや旋回中のコースアウトを防ぐカーブコントロール、トラクションコントロールといった電子制御システムも標準装備されている。

堂々たる存在感はそのままに、コンパクトでパワフルなエンジンを搭載し、先進技術も投入され、新しい時代のプレミアムSUVの形を提示した新型ナビゲーター。大排気量V8エンジンに拘らないアメリカン4×4ファンにとっては、なかなか魅力的な1台だ。

【細部写真】
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3,495cc V型6気筒DOHCツインターボ・ガソリンエンジンのエコブースト搭載。最高出力283kW(385PS)/5,250rpm、最大トルク624Nm(63.6kgm)/2,750rpmを発生する。前軸の後方に低くマウントされたコンパクトなユニットだ。
【騒音計測データ】
●車内・・・・38.0dB
●ボンネット閉・・・・56.0dB
●ボンネット開・・・・58.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。

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前方と側方に設置されたカメラの映像は、ルームミラー上のスクリーンに映し出される。映像の切り替えは手動スイッチによる。

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上: 左端のタコメーターは液晶表示。燃費データや距離計等の情報に切り替え可能。
下:センターコンソールのウォールナットトリムは質感が高いが、ダッシュボードは合成樹脂製で、高級感に欠けるインパネ。

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トランスミッションは6速AT。「M」ポジションでのマニュアルシフト操作はグリップ部のボタンによる。カップホルダーには照明が入る。

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エアコンスイッチ群の下列、左からリアゲート開閉、4×2、4×4AUTO、4×4、ヒルディセントコントロール、トラクションコントロールOFFの各スイッチ。

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前席には、シートヒーター&クーラー、後席にはシートヒーターが備わる本革シート。サードシートは合成皮革だが、大人がヒザを抱えずに座れる実用性の高いシートとなっている。

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後席は40:20:40分割式、サードシートは60:40分割式シートで、収納、展開は電動。ただし、ヘッドレストの展開/収納は手動。

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リアゲートは上開き式で、ガラスハッチ部分も開閉可能。最近少なくなったこの方式は使い勝手が良い。

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フロントサスは、ショート&ロングアームと呼ばれるダブルウイッシュボーン+コイル式(上)、リアサス(下)はマルチリンク式コイルの独立懸架。

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ドアの開閉に連動するパワーランニングボード。

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標準タイヤサイズは275/55R20。タイヤには空気圧モニターシステム(TPMS)が標準装備される。

文/内藤知己
写真/佐久間清人