【車両紹介】2014年メルセデス・ベンツG350 BlueTEC

2015.1.30

    • プレミアムSUV
    • Mercedes Benz

オフロード試乗が出来ないオフロード車

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久々のディーゼル、右ハンドル、1,000万円を切った定価設定と話題の多いG350だが、メーカー試乗車はオフロードは走行できない。オフ ロードを走らないで四駆の試乗記など書く訳にも行かないが、メーカー側の気持ちもよく分かる。Gは四駆だし丈夫だろうからと、むやみやたらにオフロードを 走れば、下回りをぶつけたり、ひっくり返してしまう。穴に落ちてもデフロックの使い方を知らずに立ち往生なんてのがいるので、貸す身になれば取材は嬉しい が、壊されては後の予定に響くから、痛し痒しなのであろう。

 

そんな訳もあって、良い機会なので愛用のG500から乗り換える事にした。既に予約も一杯でキャンセル待ち、塗色を選ぶなんて贅沢も出来ず、ま だかまだかで年末(2013年)を過ごし、2014年の年明けに漸くキャンセルが回って来た。考えてみればGクラスとも長い付き合いで、G230、 G300、G500、G36と乗り継いできたので、このG350で5台目になる。生産35年目になるが見た目は基本的に変わらず中身は最新式。一方乗り手 は見た目も中身も老朽化の一途という有り様で、何ともなのである。とはいえ納車から早くも一年が経ち年も変わったので、私なりの感想をお伝えしたい。この ページを見られる皆様は、クルマのスペックや装備類など先刻ご承知であろうから、広報資料のカタカナや数値、能書きをむやみに羅列するつもりはない。で、 どうなの?とよく聞かれる事にお答えしたい。

 

相性抜群の3リッターディーゼルエンジン

凡そいままで乗ったGの中では、ここまで相性の良いエンジンとの組み合わせは初めてだ。230はチト非力、300もイマイチで500になると、パワーには文句はないがヨイショと踏みつけるアクセルとの掛け合いに慣れとコツが必要だった。
G36は上の回転は気持ち良く伸びるが、中速域のトルクの伸びに不満があった。果たしてこの6発ディーゼルは長いGの歴史上、最良のマッチングだと言え る。欧州ではもう一回り小型のディーゼルエンジンもあるのだが、パワーに恨みが残り、常に上を回すストレスを感じるようだ。

 

この3リッターディーゼルは、G500と比べ84馬力少ないが、トルクは10キロ近くも高い設定となっている。Eクラスと同じエンジンだがトルク重視に設定されている。

 

確かにG500はヨイショと豪快にアクセルを踏めば踏んだだけの快適さあったが、燃料計の落ちかたも豪快で、給油の手間や時間もストレス要因で はあった。約1年間の燃費は都内のチョロチョロ移動で6〜7キロ近く、高速で10キロは固い。単純に比較してG500の半分、給油の手間や時間、軽油は安 い事も加えると、長年のG乗りにすれば、経費が半分と言うことは大変な節約になる。しかもエンジンパワーはG500に遜色ないどころか、かえって力強く感 じる。特に中速域からの吹き上がりは、ホォー!そうだったんですかと言いたくなってしまう気持ち良さだ。

 

IMG_7933尿素SCRシステムを採用した3.0L V6ターボ BlueTEC エンジン。

 

IMG_7939給油口の隣にアドブルー(尿素水)給水口がある。

 

てんこ盛りの最新設備は慣れが必要だ

昔のGクラスは商用車と同じスイッチ類だったが、これはメルセデスベンツの乗用車そのまま、内装の雰囲気はEクラスだ。唯一デフロックのスイッ チがGを主張している。有り難かったのは、右ハンドルで初めてステアリングにテレスコピックが採用され、理想的な姿勢が可能になった事だ。他にもご存知の 通り、今どきの乗用車にあるものは全てあるらしい。実は1年も経ったのに、まだ試していない事もあって、いまだに勉強中なのである。長年の不便な生活から 急に豊かな便利装備が増えてしまい、ドキドキしながら覚えている最中なのである。

 

径が小さくなり握りが太くなったステアリングは、少し重くなり、回した後は戻してやる必要がある。これは慣れるしかないが、しかしGクラスのこ のところこそがメルセデスベンツなのである。このリサーキュレーティングボール型ステアリング、今では唯一Gクラスにだけ残ったシステムである。

 

このシステムがあるから、Gクラスに対するドライバーの信頼があると言っても過言ではあるまい。ゼロオフセットジオメトリーによる走行安定性を 謳ったシステムも、コストと量産性に優れたラック&ピニオン型にメーカーは次々と移行してしまったが、Gクラスだけは頑固にこの複雑で高価なシス テムを使い続けている。ラック&ピニオンは確かにダイレクトな感覚はあるが、オフロードでは反応=反力が大きくなる。リサーキュレーティングボー ル型では前輪の応力はボールが介在するため弱められ、暴れるステアリングで指を痛める事もない。そのため高速でのコーナリングではダルい、アンダーが強い と聞く事が多いが、Gクラスは高速走行もできるオフロード車だと言う、メーカーとしてのメッセージであり、四駆メーカーとしての見識なのである。

 

IMG_7945現代風にバージョンアップされたG350の内装。

 

IMG_7951Gである証しとも言えるデフロックスイッチ。

 

IMG_7955ナビやオーディオなどを手元で操作できるCOMANDコントローラー。

 

オフロードはどうかって?

基本的にひとつの車型に35年かけて熟成させるのは電気仕掛けだけでなく、オフロードパフォーマンスも向上している。先ほども述べたが悪路走行 時におけるステアリングのキックバックが弱くなった分、片手での運転が必要な時など楽になったのが一番の違いに感じた。細かい事を言えば、アクセルペダル とブレーキペダルの高低差があったり、アクセルペダルのほうがブレーキペダルより重いのに最初は戸惑ったが、全ては慣れが解決できる事だ。

 

詰まるところはオフロード、極悪路は飛ばさない事。タイヤをスリップさせて土砂を蹴飛ばしながらではなく、車重2屯半を、4本のタイヤ夫々に分 散されるのは、せいぜいハガキ1枚分ぐらいである。このハガキ1枚分のタイヤの面圧を考えながら進める。ニョロリ、ニョロリとバランスを取りながら這うよ うに進むクローリング走法だが、これをやると四駆のバランスの善し悪しが実によく分かる。脱出するのにエンジンを吹かしたがトルク不足でエンストするわ、 勢い余ってタイヤが空回りする四駆もあれば、低速トルクにデフロックでスルッと出る四駆と様々である。

 

で、Gクラスはニョロリ、ニョロリと抜け出してしまう。これがGクラスが多くの伝説に支えられた信頼性であり、地球の表面が変わらない限り充分 な性能だ。個人的には最も満足したGであると評価するし、ベンツがGクラスに対する現在の見識をいつまでも守り続けて欲しいと願う。

 

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