The Legend of MERCEDES-BENZ 4×4(前編)

2016.11.12

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    • オーバータイム
    • Mercedes Benz
  • 本誌アンケートや Web のアクセスランキングにおける人気コンテンツの常連のひとつがメルセデス・ベンツ G クラス関連のもの。1979 年の登場以来、本格オフロードカーの構造とスタイルを頑なに守り通してきた「G」は、今や 4x4 ファンのみならず全てのクルマ好きが憧れる 1 台となっている。 G クラスを含めたメルセデス 4x4 の歴史を振り返ってみることにしよう。


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G4と呼ばれる伝説のダイムラー・ベンツ製6×4モデル。第二次大戦直前期に生産され、6×6モデルも用意されていた。

Gの系譜

自動車黎明期から4×4を
開発していたダイムラー

「技術は、非凡な天才がいたおかげで突然出現するものではなく、累積的に進歩し完成するものである」(ジャレド・ダイアモンド、『銃・病原菌・鉄』、倉骨彰訳、草思社、2000)。

 

世界で最初の4ストローク・ガソリンエンジン車は、カール・ベンツが1886年に発表した三輪車であることはよく知られている話であるが、4ストロークエンジンは1866年にニコラウス・オットーが発明したものであり、さらに言えば自動車自体が蒸気自動車や電気自動車という形で先に実用化されていた。高さが2m以上もあったオットーの内燃機関を改良・小型化し、車体に搭載することに成功したのがベンツだったというわけだ。ちなみに、ガソリンエンジン、空気入りタイヤと並んで自動車における三大発明のひとつと言われるディファレンシャル・ギアも、フランスの時計メーカーが1700年に考案した歯車の逆転装置が元になっていると言われている。

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2007年のデトロイトショーで展示されたダイムラー・デルンブルワーゲンの1/4スケール カー。デルンブルワーゲンは1907年に生産された4×4で、ダイムラーは乗用4×4誕生100年を記念するモデルとして、細部まで精密に再現したこのモデルカーを製作した。

 

 

オフロード4×4の嚆矢、といえば1942年に生産の始まったジープであることは誰もが認める史実であろうが、ガソリン自動車同様、ジープもバンタム社が雇った天才技術者カール・K・プロブストが突然ひらめいてそのプロトタイプとなる4×4を開発したわけでない。ジープの基本概念は米軍が考えたものであり、そもそも4×4の歴史は意外に古く、まだ自動車の黎明期であった1900年以前の蒸気自動車や電気自動車でも既に採用されていたのだ。

 

ガソリン車初の4×4は1902年にオランダで作られたスパイカーとされる。初のガソリン車の登場からたった16年後であるにもかかわらず、このスパイカーは、センターデフを採用し、高低2速のトランスファーまでも備えた画期的なフルタイム4×4だった。

 

ベンツと並ぶ自動車のパイオニアであり、後に同社と合併するダイムラーも、スパイカーとほぼ同時期に4×4を開発している。1903年にはウイーンに設立された小会社のオーストリア・ダイムラーが悪路走行を目的とした史上初の軍用4×4を、1907年には独ダイムラーが乗用4×4であるデルンブルグワーゲンを開発するなど、ダイムラーは4×4史のごく初期から大きな足跡を残しているのである。

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デルンブルグワーゲンの実物写真。スパイカーがレースを主目的としていたため、ダイムラーはこの4×4を史上初の乗用4×4としている。

 

 

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デルンブルグワーゲンは南西アフリカ植民地(現ナミビア)向けに生産された。

 

 

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デルンブルグワーゲンは、前後サスにド・デオン式を採用していた。

 

 

機動性を重視した
多輪駆動車を次々に開発

デルンブルグワーゲンは6人乗りで、前後サスにド・デオン・アクスルを採用し4WS(四輪操舵)を備えた乗用4×4であったが、当時はその有用性があまり評価されなかったこともあり、ダイムラーの4×4開発は多輪駆動トラックなどの大型モデルがメインとなっていく。小型軽量モデルの開発こそ後退したものの、その後もダイムラー・ベンツ(1926年に合併)は4×4を積極的に生産した。その背景にはふたつの世界大戦があったからであり、当然軍用がメインであった。近代戦においては4×4の持つ機動力が大変重視されるようになっていたのだ。

 

ダイムラー・ベンツは、1928年に1.5トンG3、1935年に3トンLG3000、1937年に1.5トンL1500、1940年に3トンL3000、1941年に4.7トンL4500など、トラックをメインとした多数の軍用車を開発・生産。用途や仕向け地に合わせて、4×4、6×4、6×6、8×8などさまざまな駆動方式が用意されていた。

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MTW1 floatable crew bus
1927〜1928年に開発された水陸両用8×8の実験車両。前後輪を操舵する4WS機 能までも備えている。

 

 

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LG3000a
1937〜1938年に開発されたLG3000aトラックのシャーシー。8×8仕様となって おり、100HPを発揮するディーゼルエンジンが搭載されている。

 

 

それらの中でも特筆すべきモデルは、1926〜1928年に生産されたG1、および1934〜1939年に生産されたG4だろう。G1(W103)は3リッター直6ガソリンを搭載した乗用タイプの6×4で、ゲレンデワーゲン、つまりオフロードカーを意味する言葉の頭文字である「G」を最初に名前に使ったモデルであると思われる。

 

「G」の名前を持つ4×4は
長年姿を消してしまった

G4はG1の発展型だ。エンジンは5リッター直8にスケールアップされ、内外装も大幅にリファインされた。駆動方式は6×4と6×6があり、型式はそれぞれW31、W131とされている。

 

ダイムラー・ベンツが当時の技術の粋を尽くして製作したG4は、ドイツ政府高官や将官のためのクルマであり、国威発揚の象徴としてパレードなどで重用されたが、1939年に生産が終了するまでの総生産台数は、たった57台のみであった。

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G4(W31)
完璧にレストアされたG4の6×4モデル。エンジンは、1937年に5.3リッター、1938年に5.4リッターと排気量がアップしている。トランスミッションは4速MT。

 

 

834609detail_armaturenbrettG4のインテリア。メッキパーツが多用された豪華な造りとなっている。

 

 

834743ha_einbau_160703G4のリアサスまわり。前後サス共にリーフリジッドとなっている。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA細部までダイムラーのエンジニアによってレストアされるG4。

 

 

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小型4×4としては、1936年に登場した170VL(W139)を改良したG5(W152)の生産が、翌1937年からスタートしている。

 

G5は、2リッター直4ガソリンを搭載したフルタイム4×4。前後センター3つのデフロックと4WSを備えた本格オフロードカーであったが、生産は1941年までで、 合計378台しか作られていない。

 

ドイツ軍は、軽量ボディーにリアLSDを搭載して、4×2ながら高い悪路走破性を発揮したキューベルワーゲン(82型)を小型軍用車の主力としたのである。なお、同車は1940〜1945年の間に5万台以上が生産されている。

 

これ以降、ダイムラー・ベンツの小型4×4は、農耕用多目的装置として開発されたウニモグを除き、1979年のGクラスまで、40年近く登場しないことになる。

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オフロード走行するG5。個人所有された 数少ない車両のひとつであったらしい。

 

 

1109662u74183つのデフロックと4WSを備えたG5。5速MTで1速はエクストラローとなっている。