YOKOHAMA GEOLANDAR I/T-S 265/65R17

2010.10.26

    • タイヤ
    • トヨタ
  • 昨年、7年ぶりにフル・モデルチェンジを果たしたジオランダーI/T-S。トレッドの中央に稲妻が走る、そのインプレッシブなデザインに驚かされたものだったが、今年はさらに"サイズバリエーションの大幅拡充"というニュースが飛び込んできた。何はともあれ下部のサイズ表を見て欲しい。SUV用スタッドレスとしては未だかつて無いほどの充実ぶりだ。ジムニーやデリカD:5等のミニバンから、欧州SUVまでフルカバーするに至ったこのタイヤの、最新試乗記をお届けしよう。


今年は新型プラドで林道にトライ

ヨコハマの新型スタッドレスタイヤ「ジオランダーI/T-S」の試乗はこれで2シーズン目。昨年のデビューではあるが、私はその前シーズンに厳寒の北海道にて完成直後のI/T-Sに乗る機会に恵まれていた。

 

スタッドレスタイヤは、もともと「夏と冬でタイヤを履き替えるのが当然」という北海道マーケットを多分に意識して開発する商品である。その時も雪の上にあ ぐらをかいてもお尻が濡れない…という極上パウダースノーのコンディションの中、新旧I/T装着車をとっかえひっかえ乗り比べながら評価した。

 

その後、気温も雪質も大幅に異なる本州は群馬の一般道にてランクル200系との組み合わせでインプレッション。今回はプラドを起用して、さらに暖かな春先のコンディションにトライした。

 

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豊富なサイズ展開が意図するものは…

選んだのは新型プラド150系の「TX」グレード。I/T-Sは純正同様265/65R17を装着した。敢えて価格の高い「TZ」や「TZ-G」グレード を選ばなかったのは、この時点で純正18インチホイールにフィットするサイズがなかったから。ところが今シーズンのI/T-Sは違う。他ブランドを圧倒す る豊富なサイズバリエーションで、インチアップ著しいSUV市場へ一気に攻勢をかけて来た。その数なんと53種。TZで履ける265/60R18も加わる 予定だ。

 

タイヤの世界では「たかがサイズ違い。されどサイズ違い」である。表面上は同じに見えるが、実はトレッドブロックの大きさや数は言うに及ばず、内部のカー カスコードからケース剛性の与え方、耐荷重から何からみんな違う。1サイズにひとつ、専用の釜が必要なのはもちろん、設計から検証、製品化まであらゆるプ ロセスが必要になるのだ。つまるところヨコハマは、新生I/T-Sによって性能だけでなくサイズ展開でもSUV市場の天下を狙って来たというワケだ。

 

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サイズ別・シチュエーション別に試乗

というわけで、編集部でもプラドだけでなくジムニーやデリカD:5にも履かせ、それぞれ違ったシチュエーションでテストを行った。

 

プラドでは軽い積雪路の試乗をメインに、続くジムニーでは遊び車らしく深い積雪路のスノーアタックを題材に。デリカD:5では18インチの55扁平という ロープロファイルなサイズでオンロードに特化したインプレを行った。そのほか、1シーズン目に体験したアイスバーンの試乗やパイロンスラロームの情報など もお伝えしつつ、ジオランダーI/T-Sを総合的に解説していくので、最後までお付き合いいただきたい。

 

伝統のオンロード性能は健在

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北関東の春は早い。取材は2月下旬だが、ちょうど小春日和の続いた時期。残雪を探しながら、奥日光の林道を目指すことになった。朝ぼらけの都内を出て高速 道路を160kmほど走り、いろは坂をエイコラ登って中禅寺湖の脇を抜ける。段差の多い首都高から高速クルージングの東北道、そして九十九折りのコーナー と、ドライ路面だけでも様々なメニューの用意されたルートである。

 

新型プラドはデビュー時に山ほど試乗しただけにノーマルの感触はよく覚えている。TXの純正17インチタイヤはTZの18インチに較べ、コーナーでややダ ルな印象はあるものの、段差の突き上げも少なく、総合的なバランスに優れていた。これを、同サイズのI/T-Sに変えるとどうなるか…。オンロードで はその乗り味が僅かにソフトライド化され、ハンドルから伝わる感触がなんとなくザラ付き、パターンノイズが少し大きく感じる…。

 

でもそれは”インプレッション”という注意深い作業の中で感じるもの。慣れたら分からないレベルである。それよりもむしろ、旧来比30%も向上した氷上の 制動性能に対し、悪化するどころか向上した感のあるオンロードの操安性を評価したい。高速道でも一般道でも、スタッドレスとは思えない完成度。これは、今 回特に強く感じたことだった。

 

湿気の少ない積雪路ではどうか?

坂道を登っていくと、路端に雪が目立つようになってくる。目指す林道についてみれば、つい最近降ったような美しい雪が一面に広がっていた。雪質は、標高が 高く乾燥した地域特有の雪で、湿気が少くてサラサラ。同じ関東でも、昨年群馬で味わった重いボタ雪とは明らかに違う感触だ。

 

ただ、林道の入り口が除雪の雪だまりとなって行く手を阻んでいる。地ならしのつもりでゆっくり進入すると、意外にも表層の雪をかき分けながらグリップ、コ ブを登ろうとする。そのまま進むと、最後はもがきながらもクリアしてしまった。一旦林道に入るとジムニークラスの狭い轍がうっすらと見えるが、雪は決して 踏み固められてはおらず、重量級プラドでは難しいコンディション。それでもトラクションのかかりがいいので、そのままズンズン奥へ足を踏み入れていった。

 

ところどころ深い轍があったりするのだが、直進性は良好。進路を乱されることはない。ステアしてからの反応もよく、行きたいラインをトレースできる。何よ りも感心したのは、アクセルを乱暴に扱った場合にも荷重移動がしっかり起きること。グリップが優れている証拠だ。私の雪上試乗記ではお馴染みになったフル ブレーキングテストも行ったが、こちらもしっかりと荷重移動が起きていた。轍を見ると、特徴あるI/T-Sのパターンが縦にクッキリ、しっかり刻まれてい る。サラサラの雪を車重で圧縮し、その剪断抵抗で路面の凹凸にも負けないグリップを作り出す。I/T-Sはこのテのサラついた積雪路にも強いことがよく分 かった。

 

サラ雪をも捉える走破力と安心のブレーキ性能

tire101026_01_005軽い積雪路でフルブレーキング。これは、ABSが効き始める瞬間の姿勢だ。フロントにしっかり荷重移動しているのが見て取れる。μの低い雪上でも充分な制動力がかかっている証。安心感は高い。

 

tire101026_01_006中央に太い稲妻状のリブパターンを配置した新型I/T-S。そこからショルダーに向け、緩やかに弧を描きながら横溝が広がっている。単純なブロックパターン全盛の中、インプレッシブなデザインで個性を主張している。

 

tire101026_01_0708左:稲妻状に配された中央の極太リブに注目。接地面積とサイプ量のアップを実現したほか、テーパー状の溝壁面で剛性を確保、ジグザグ形状のブロックエッジ で雪を噛むという。実によく考えられたデザイン。右:トレッドブロックのカタチ、というより溝の形状をジグザグに成形。エッジを飛躍的に増やしている。ま た、ブロック壁面の溝をテーパー形状にすることで剛性も増しているという。

 

tire101026_01_091011左:重いSUVに履かせるI/T-Sならではの技術。トレッドゴムに、2層構造を新採用、表面のトリプル吸水ゴムの下に高剛性ゴムを配した。ドライ路での 剛性や氷上での接地性アップに繋がっている。中:ゴムがホイールリムを守ように盛り上がっているのがおわかりいただけるだろう。悪路を走る時にリムをガー ドする「リムガード」を全サイズに採用。SUV用スタッドレスとして細かいところにまで気を配っている。右:複雑な立体サイプが互いに支え合い、ブロック 剛性を向上させるトリプルピラミッドサイプ(右)を小さなブロックに採用。剛性の高い中央リブには旧来のピラミッドサイプ(左)を配置する。トレッド全体 の剛性とグリップ力を均一化させ偏摩耗も防ぐ。

 

積雪路のハンドリング性能を確かめる

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林道は、さらに奥へ行くと幅広く開けた地形が見えてきた。ここで、アクセルをさらに開けながらハンドリングを確かめる。

 

やはり、ステアしてからの応答が早い! 一昨年、北海道で行ったパイロンスラロームを思い出す。同じ圧雪の条件下で速度を上げながら新旧ジオランダーI/Tを比較したのだが、40km/hで旧型 はブレイクしたのに対し、新型はまだ余裕があった。応答性の違いは明らか。四輪のグリップにも歴然とした差があって、旧型ではパイロンをなぎ倒しまくった ために運転が下手に感じたものだ。

 

実は、新旧のI/T-Sを乗り比べた時、誰でもすぐに気付くのがこのハンドリングの違い。私は昨年、それを「5秒で気付く」と表現したが、新型は本当に機敏でコントローラブル。技術開発の進化に驚いたものだった。

 

この辺り、ジオランダーI/T-Sは乗用車用の「アイスガード iG30」の最新の技術が活かされているのだが、よく見ると違いも大きい。例えばショルダー部の横溝などは明らかにI/T-Sのほうが太い。コーナリング の際はこの横溝でいかに多くの雪を掴むか、が大切になってくるのだが、重いSUV用に意図的に太く設計しているのだ。こんな造り込みが積雪路のハンドリン グにも表れていると思う。

 

オンロード性能へのこだわり 

帰り道は再びいろは坂へ。雪上のハンドリングに気をよくした我々は、オンロードのコーナリングでも飛ばし気味になっていた。ブレーキングでフロントに荷 重を乗せつつ、素早くステア。クッと切れ込む速度は夏タイヤほどではないにしろ充分に速い。スキール音が鳴り響く領域で、表面のゴムには相当の負荷がか かっているハズだが、挙動は暴れず、粘りながらコーナーを抜けていく。グリップ感は強く均一で乱れもない。

 

トレッドの表面的な柔らかさはスタッドレスらしいものだが、粘っている時の剛性感は別モノだ。実は、ヨコハマの技術者にインタビューした際、初めて入手で きた情報なのだが、トレッドゴムが2層になっており、表面の「吸水ゴム」の下に高剛性ゴムを配して氷上での接地性やドライ路面での剛性を高めているとい う。これも乗用のアイスガード iG30にはなく、I/T-Sに特徴的な技術。カタログやネットには載っていない、隠れた情報なのだ。このキメの細かさがSUV専用タイヤ”ジオラン ダー”の真骨頂といえるだろう。

 

今回、プラドを使ったインプレは春先の高地、湿気の少ない積雪の道に限定されたが、オンロードで充分に走り込めたことが収穫となった。この後、ジムニーやデリカで行った状況別の試乗記も楽しみにご覧頂きたい。

 

tire101026_01_013旭川のテストコースで行ったアイスバーンのテスト。スケートリンクのようにツルツルの路面で、新型IT-Sは旧型より格段に向上した減速感が体験できた。 速度計の目視に頼る取材班は制動開始スピードを正確に合わせることができなかったが、実は正しい実験結果がある。ヨコハマタイヤの公正取引協議会届け値に よれば、RAV4による40km/hからの制動比較で旧型の81.4mに対し新型は52.6m、約30%マイナスの数値を記録した(気温−1.2〜 −1.8℃、氷温−2.6℃)。パニック時に、この違いは大きい。

 

tire101026_01_014プラドでインプレを行った後、新旧I/Tの比較をRAV4で行った。新旧ともに同じ速度を維持したまま、4本のパイロンを駆け抜ける。20、30、40km/hと速度を上げて行くと、旧型は40km/h
でブレイク。同じタイミングでステアリングを切っても間に合わず、無理するとテールが流れるという有様だった。対して新型はまだ余裕があった。

 

氷上性能を支える「吸水ゴム」が進化した

I/T-Sには3つの吸水技術を組み合わせた「トリプル吸水ゴム」といわれる最新の構造を採用。トレッド表面は吸水用と補強用でそれぞれ異なるシリカや カーボンを高密度化。ゴムを補強すると共にしなやかさを保つ改良ポリマーも配合。「より柔らかくしなやか」なのに強い。耐摩耗性に優れる理想的な性能を得 たという。

 

tire101026_01_015①新素材吸水ハニカムシリカは、吸水性を有するシリカ質の素材。水を吸い込みながらミクロのエッジで氷を掴む。直径0.01㎜という極小サイズで、トレッ ドゴムに約105億個配合されているという(※215/60R16のヨコハマ・アイスガード1本あたりの個数。タイヤやサイズによって異なる)。②吸水バ ルーンを小径化(最大約0.08㎜)して約86.8億個配合(※アイスガードの値)したマイクロ吸水バルーン。吸水効果、殻のエッジ効果、ゴム補強効果共 に増した。③幅約0.3㎜の吸水カーボンも約7.1億個配合(※アイスガードの値)した吸水カーボンⅡ。層状構造の空洞が表面張力で水を吸い上げる。耐摩 耗性にも役立っている。

 

AMT Camera System Jun 17, 2008 5:49 Χ΋ 3500 7.4 100

AMT Camera System
Jun 17, 2008
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カーボンやシリカ、ポリマーといったトレッドゴムの構成要素を旧モデルよりも一段と高密度化(上は顕微鏡写真)した高密度ゴム補強構造。これが、濡れた路面や乾いた路面での「しっかり感」を生み出している。

 

 

54種ものサイズ展開が魅力

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