【紹介/試走】マイナーチェンジを果たしたデリカD:5

2018.12.16

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フルモデルチェンジかと見紛うフェイスリフトを伴って、三菱・デリカD:5がビッグマイナーチェンジを行うことがアナウンスされ、予約がスタートした。そう、新型を謳っているが、実はフルモデルチェンジではなく、あくまでもビッグマイナーチェンジ。
しかし、改良内容はエクステリアだけではなく、インテリアさらには走りまで一新しており、そのメニューはフルモデルチェンジそのもの。「10年分の進化を一気に果たした」と言っても過言ではないほどの進化となっている。

(文章:吉田直志/写真:川上博司)

 

生誕50周年を迎えた「デリカ」

現行型デリカD:5がデビューしたのは07年だから、今から約12年前のことになる。デリカシリーズとしては5世代目にあたるモデルで、誕生から今年で50周年を迎えている。
 
現行型は、先代となるスペースギアの仕立てとは異なり、乗用車系にも使われているプラットフォームをベースとして、まずはミニバンとしての快適性を手に入れ、その上で、SUVとしての最低地上高、電子制御による走破性を与えられた。デビュー当初はその変貌ぶりから、デリカとは呼びたくないという否定的な意見も聞こえてきていたが、やがてその声は小さくなり、現在ではその唯一無二たるキャラクターが支持を受け、多くはないが一定の台数を販売している。
 
そんな現行型だが、イマドキのミニバンユーザーから見るとオフローダー的なメッセージが強過ぎること、また質感が10年前のままだったこと、さらには先進安全装備不採用だったこともあり、残念ながらミニバン全体の中での販売割合はひと桁%だったとか。そこで、広く一般にも受け入れられるようなデザイン、質感、最新の先進安全装備を手に入れての”再・デビュー”することになった、というワケだ。

 

インパクト“大”のデザイン

大胆ともいえるデザインを採用したフロントマスクは、三菱のダイナミックシールドコンセプトをベースに、縦型LEDヘッドランプを組み合わせたもの。
 
歩行者保護を考慮してボンネットが高くされたこともあり、グリルパートの厚みはかなり増した。報道陣に初めて公開された11月上旬に目にした際には、改良前フェイスとの違いに強いショックを覚えたが、その初見から1ヶ月が過ぎると「まとまり感があり、悪くないんじゃないか」そう思えるようになっていた。
 
リアセクションは、フロントほどの変貌ぶりではないが、低重心化をコンセプトとしたデザインが描かれ、LEDランプの採用も相まって、新しさを感じさせる。ちなみにサイドはフェンダーパネル以外は従来からの流用となっている。
 
大胆に変わったのはインテリアだけではない。インパネは、やはり三菱のインテリアデザインコンセプトであるホライゾンタルアクシスを具現化。水平基調による視界の広がりは心地良さを、掴みやすくなった車両スタンスは安心感を提供する。同時に神殿かのようと表現したくなる立体的な造形、面構成による力強さを組み合わせたことで、アッパークラス感まで手に入れている。
 
個人的に高く評価したいのは木目調パネルの使い方だ。扱い方を間違えるとむしろチープさを伝えてしまうアイテムだが、大きな面積としながらもしっかりと質感をアピールしていていい。

 

アッパークラス感を覚えさせてくれるゆとりの走り

今回の改良がビッグマイナーチェンジだと聞くと、走りについてはそれほど変わっていないだろうと思われたかもしれない。
 
しかし、そのブラッシュアップレベルは、内外装の改良レベルと同等、いや、それ以上。エンジンはディーゼルのみ(ガソリンは改良前モデルのまま併売される)で、型式も排気量も変わらない。内部のフリクション低減から、燃焼室形状変更、尿素SCRシステムの採用(三菱初採用)など、もちろん、マネージメントまで、フルモデルチェンジレベルでの改良が行われた。
 
トルクアップ分をゆとりとして利用し、低回転域での扱いやすさ、高回転域までの滑らかたる加速感、まさに軽快に回るフィーリングなど、別のエンジンに換装されたかのような印象を受けたほど。
 
このユニットの良さをさらに高めてくれるのが、新たに採用された8速ATだ。
 
単に、多段化しただけではなく、ワイドレシオ化、クロスレシオ化したことに加え、シフトスピード、フィーリングも大きく向上しており、ディーゼルユニットのラグジュアリー感を高めてくれている。
 
ゆえに、その走り出しはとにかく滑らかであり、不快な加速をまったくといっていいほどに感じさせない。それでいながらパワーは十二分。少しアクセルを深く踏むとシフトダウンとともに、大トルクが後押すするかのように力強いパワーを発生させる。新型デリカD:5が求めた質感、アッパークラス感通りのフィーリングとも言えよう。
 
シャシーでは、リアサスペンションのダンパー径アップ、デュアルピニオンタイプの電動パワーステアリングの採用がトピックとなっているが、それだけでは語れない操縦性を手に入れており、そのフィーリングをひと言で表現するならば、とにもかくにも愉しさに溢れている。
 
ワインディングにおいて、ステアリングの操舵に伴ってフロント内輪がグーッと沈み込んでいく様は、心地良さの極みと言った感じで、ワインディングドライブがとにかく愉しい。
 
リバウンドストロークにおける減衰がやはり絶妙であり、懐の深さを感じさせるような乗り心地を手に入れていた。そう、もはや、改良前モデルの乗り味はそこにはない、そう言い切れるほどの進化を果たしていた。

 

先進技術を搭載ゆえの安心感

オフロード性能について、最低地上高や対地障害角といったスペックは改良前も悪くなってしまった。確かに不整地を走る際、先代よりも気を遣う面は増えたが、実際に走ってみると、そもそもボディーをヒットしづらいデザインも相まって、走破レベルが大きく下がったという印象は受けなかった。もちろん、いくらオフロード走破性を謳っていても、簡単に路面からタイヤが浮いてしまう。
 
しかし、そんなシーン、さらには対角線スタック状態に陥っても、モードを4WDロックにしておくと、いわゆる「ブレーキLSD効果」空転輪にブレーキを掛け、接地輪へと駆動力を伝える作動を強く掛けるため、アクセルを踏み続けながらトラクションを探っていると、ジワジワと前進を始めて脱出することができる。
 
ちなみに、このブレーキLSD効果は、ロックモードほどではないが、オートモードでも発揮できるようなセッティングに変更されていると言う。
 
新たに採用された先進安全装備については全グレードで標準装備化。機能としては、衝突被害軽減ブレーキシステム、車線逸脱警報システム、レーダークルーズコントロールシステム、後側方車両検知警報システム、オートマチックハイビーム、後退時車両検知警報システムを設定。そのほかマルチアラウンドモニターの採用も相まって、高い安全性を手に入れている。
 
これまでのデリカD:5に惚れ込んだユーザーからすれば、新型のデザインは受け入れがたいかもしれない。もちろん、それも理解できる。しかし、否定的な見方をとりあえず収めて、実車を眺めてみて欲しい。ミニバンにはない質感がデザインされていることを発見できるはずだ。
 
そして試乗してみれば、これまでのデリカD:5とは、全くといっていいほどに異なる走行性能にショックを受けるはず。さらには、この度手に入れた先進安全装備にも魅力を感じるはず。喰わず嫌いをせず、とにかくディーラーへ出掛けて、試乗してみることをオススメしたい。

 

デビューから12年を経て、ビッグマイナーチェンジを行ったデリカD:5。写真左側のレギュラーモデル(白)のほか、プレステージ性をデザインしたアーバンギア(黒)も設定。いずれもタイヤはジオランダーSUVで、ホイールサイズは225/55R18。

 

ダイナミックシールドコンセプトを採用したフロントフェイス。左右の縦型ユニットがヘッドランプ、(内側がハイビーム、外側がロービーム)で、上部はインナーレンズ導光タイプとなるポジションランプ。

 

左右テールランプをガーニッシュで繋ぐ手法は変わらず。ただし、ランプユニットには、導光LEDユニットを採用してワイド感を表現。バンパーボトムにはSUVらしさであるプロテクターをデザイン。

 

水平基調をベースに造形的なデザインを組み合わせたインパネ。ソフトパッドの採用によって、見た目だけではなく、触れた際の質感にもこだわりをみせる。木目調パネルは、樹木が二股に分かれる際にできるサバ杢を採用し、やはり質感アップにプラスとなっている。

 

センタークラスター最上部に配置されるナビゲーションは、ディーラーオプションとなる10.1インチオリジナルタイプ。4分割表示を可能としたモニターは、そのサイズを自在に変更することができる。

 

 

 

4WDセレクトダイヤルやシフトレバーの位置は変わらず。サイドブレーキは足踏み式から、スイッチ式へと変更され、センタークラスターに配置されることになった。

 

 

 

新設計となったフロントシートは、センター部のしっかり感、サイド部のソフトテイストによって、包み込まれるような心地良さあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


写真のセカンドシートは8名乗車のベンチタイプ。ヘッドレストとシート地のみ改良され、シートそのものは従来と同じ。広々とした足下も相まって、心地良さあり。

 

 

 

 

 

 

 

サードシートにもスライドレールを採用しているため、サードシートを使用したままでも、ラゲッジルームの奥行きを自在に調整可能。

 

 

 

 

 

 


8人乗りのシートアレンジ例。6:4分割セカンドシートはチップアップさせて前方へスライド、5:5分割式サードシートを左右へはね上げる。

 

 

 

 

コーナーにおいてはロール量だけを抑え込むのではなく、ロールフィール(ロールしていく過渡域)を穏やかに仕立てており、その動きすら心地良く感じる。タイヤの接地感も豊かであり、グリップ感が的確に伝わってくる。

 

ヘビーデューティー4×4と比較すれば短足ではあるが、それでも果敢にサスを伸ばし、縮める姿にオフローダーの面影を感じる。写真は上り坂で、フロント右、リア左が空転状態。こういった対角線スタック状態でも4WD制御、そしてブレーキLSD効果によって前進可能だ。