【紹介/試走】CADILLAC SRX CROSSOVER
2016.9.17
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プレミアムSUV
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アメリカ車
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ジャンルを超えた
アメリカンプレミアム
目指したのは“クロスオーバー”
日本では「Premium」と「Luxury」
1990年代末期にキャデラック初のSUVとして誕生したのが「エスカレード」、そしてこれに続く形で2003年に登場した新種のキャデラックSUVがSRXであり、その発展型が2009年にデビューを飾った「SRXクロスオーバー」である。
キャデラックSUVラインナップに“新時代のプレミアムSUV”として投入されたモデルということで、デザイン面でも機能面でも従来のSUVとは一線を画す、ジャンルを超えた機能性と快適性を…という意味を込めて「クロスオーバー」と名付けられた。
現実的には、このカテゴリーでさほど重要視されないオフロード性能を潔く切り捨て、現代のラグジュアリーSUVに求められる装備を惜しみなく贅沢に投入…という方向性が貫かれたモデルであることが、車高の低さやタイヤのサイズからも伝わってくる。グラウンドクリアランスよりエアロダイナミクスが優先されたボディーデザインはもとより、ローレンジ設定のない駆動系、ロープロファイルタイヤの設定等もオフロードとは無縁の証である。
日本でのラインナップは「Premium(プレミアム)」と「Luxury(ラグジュアリー)」の2タイプ。試乗車はエマージェンシーブレーキシステムや電子制御スポーツサスペンションを装備する「Premium」だ。
元気よく回る高回転型V6-DOHC
「プレミアム」は車重やや多め
エンジンは3リッターV6-DOHCガソリンで、グレードによる差別化はない。したがって動力性能に関しては「ラグジュアリー」と同等だ。ただしこの「プレミアム」には「ウルトラビュー」と名付けられた、巨大な電動ガラスサンルーフが付くためか、車両重量は20kgだけ重くなっている。
最高出力269PSを6,950rpmで、そして最大トルク30.8kgmを5,100rpmで発生するこのV6は、その数字が示すとおり、かなりの高回転型エンジンで、どっしりとした重厚感に満ちた見た目の印象とは裏腹に、シャープでギュンギュン回る威勢の良いパワーユニットである。
街中では、この巨体を意識させないキビキビとした軽快感溢れる走りが可能。静粛性もサルーン並みに高く、プレミアムSUVとしての満足感はかなり高めだ。
直進時はしなやかな乗り心地
コーナーでは瞬時に減衰力調整
前述のとおり試乗車には、電子制御式リアルタイムダンピングショックアブソーバーが組み込まれたフロント:マクファーソンストラット、リア:マルチリンクのスポーツサスペンションが標準装備されている。路面状況に応じてショックアブソーバーの減衰力がリアルタイムで最適化され、ノーマルよりもスプリングレートの高いコイルスプリングが適度にタイトな独特な乗り味を作り出している。
ワインディングでは、ほどよくローリングが抑えられ、収束も早く不安のないコーナリングが普通にできてしまう脚だ。高速道路などの直進時には、しなやかな乗り心地を維持しつつも、ワインディングではしっかりと車体を安定させる。当日は雨天で路面は滑りやすい状態だったが、トラクションコントロールの介入もごく自然で、悪天候でも安心してアクセルを積極的に踏めることが確認できた。
燃費も健闘!
レギュラーガソリン仕様も嬉しい
今回の試走は高速道路、一般市街地、ワインディング等、全行程300km程度の走行だったが、例によって頻繁な急加速テストや負荷のかかる峠道が含まれていたにもかかわらず、平均燃費は約7km/Lと、まずまずの結果が出た。ガソリンも無鉛ハイオク指定ではなくレギュラー仕様であることもユーザーには嬉しいポイントだろう。
今もアメリカン4×4の伝統や味を継承し、OHVエンジンやリジッドアクスルにこだわるキャデラック・エスカレードとは対照的に、最新技術がふんだんに盛り込まれた新世代アメリカンプレミアムSUVとしてこのカテゴリーの牽引役を期待されているSRXクロスオーバー。
先進の中にもアメリカンSUVらしい余裕が魅力であり、他に似たようなクルマがない…という個性を活かしつつ進化して欲しいSUVである。
【細部写真】
最高出力269PSを6,950rpm、最大トルク30.8kgmを5,100rpmで発生する3リッターV6-DOHCガソリンエンジン。実測燃費は6.9km/Lと、そこそこ良い結果に。レギュラーガソリン仕様で経済的。
【騒音計測データ】
●車内・・・・39.0dB
●ボンネット閉・・・・55.5dB
●ボンネット開・・・・62.0dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。
上:賑やかなメーターパネル。視認性は良好だ。
下:全車左ハンドル仕様。外観のイメージと統一されたデザインはキャデラックの顔。
トランスミッションは、マニュアル感覚のドライバーシフトコントロール付き6速AT。ドライバー固有のシフトタイミングを学習する。
フロントはもちろん、リアシートにもシートヒーターを装備する本革シート。フロントにはベンチレーションも。
Blu-rayやSDカード対応のリアシートエンターテイメントシステムを装備する。
リアシートの背もたれは70:30分割式。中央のシートスルーを使えば、4人乗車+長尺物積載もOK。ラゲッジルームには床下収納スペースも有り。
オートライト、ワイパー連動機能が備えられたHIDヘッドランプ。
フロント:ストラット(左)、リア:マルチリンク+コイル(右)のサスペンション。ショックアブソーバーには減衰力自動調整機構が備わる。「プレミアム」にはスポーツサスが標準装備。
タイヤサイズはP235/55R20。ラグジュアリーにはP235/65R18を標準装備。
文/内藤知己
写真/佐久間清人