【紹介/試走】MERCEDES-BENZ GLS 350d 4MATIC Sports
2016.7.23
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プレミアムSUV
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Mercedes Benz
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GL改めGLS発進!
GLからGLSへ名称変更
基本ラインナップは変わらず
今年4月にお届けしたGL350 BlueTECの試乗記でもふれたとおり、メルセデスSUVの最高峰に位置付けられる「GL」が「GLS」に改称され、その日本仕様車もすでに市場に出回り始めている。
GLSへの主な変更点としては、キープコンセプトながらフェイスリフトが施され、新しい9速ATやレーダーセーフティパッケージを中心とする最新のインテリジェントドライブシステム等が搭載されており、パッケージングやエンジン、サスペンション等の基本的な部分に大きな変更はないものの、最新のプレミアムSUVとして大きく進化している。
今回も試乗車は、3リッターV6・DOHCディーゼルターボ搭載車で、正式名称は「GLS350d 4MATIC Sports」である。BlueTEC (ブルーテック)の文字が消え、代わりにディーゼルであることを表す「d」が付けられたが、排出ガス中に尿素水溶液(AdBlue)を噴射し、NOx(窒素酸化物)を低減させる浄化システム「BlueTEC」を採用した同型エンジンだ。また、写真でも分かるとおり、旧GL(濃紺)と新GLS(白)では前後の一部デザインが少々異なる程度で、全体的なシルエットに劇的な変化は見られないが、GLEやGLCとのフロントデザインの統一感は明確になった。
なお、GLSの国内ラインナップにはGL時代と同様、大きく分けて3タイプが用意される。3リッターV6・DOHCディーゼルターボ搭載の「GLS350d 4MATIC」(税込み車両価格1,070万円)、4.7リッターV8・DOHCガソリン・ツインターボ搭載の「GLS550 4MATICスポーツ」(同1,500万円)、そして5.5リッター V8・DOHCガソリン・ツインターボ搭載の「Mercedes-AMG GLS63 4MATIC」(同1,900万円)だ。今回の試乗車である「GLS350d 4MATICスポーツ」(税込み車両価格1,190万円)は、AMGスタイルのエクステリアや豪華インテリアが施された仕様となっている。
スムーズな9速ATと軽量化の効果
SUVらしからぬワインディング走行
電子制御可変ターボを採用した3リッターV6・DOHCコモンレール式ディーゼルのスペックは、旧GLと同じく最高出力190kW(258PS)、最大トルク620Nm(63.2kgm)。ただし、最高出力の発生回転数が3,600から3,400rpmに下げられており、より低中回転域重視型な味付けとなったようだ。
これに加えて車両重量が100kg以上軽量化されているためか、ワインディングなどではさらに軽快感が増しているように感じるが、これはむしろATが7速から9速へと多段化されたことによる効果かも知れない。
脚まわりは、前:ダブルウィッシュボーン、後:マルチリンク、4輪独立懸架のエアサス「AIRマティックサスペンション」が採用されている。電子制御式エアスプリングの脚は乗車人数や積載量を検知して車高を一定に保つセルフレベリング機能を持ち、さらに状況に応じて、あるいはドライバーが選択した走行モードに応じてスプリングレートや車高、ダンパー減衰力を変化させるADSプラスも標準装備している。
「Sport」モードを選択すると車高が下がり、ステアリングがクイックになり、エンジン回転数を高く保持するために低めのギア選択が行われ、サスペンションがタイトに設定されて路面追従性が上がる。このモードでワインディングを走ると、もはやその感覚は大型SUVのそれではなく、スポーツサルーンを操っているフィーリングに近い。これは、295/40R21という超ワイド&ロープロファイルタイヤもその一因である。
ディーゼルにもローレンジ搭載を
楽しみ方拡がるプレミアムの頂点
走行モードを「Offroad」に設定すると、車高がアップしてサスがソフトになり、ステアリングもキックバックに備えてレスポンスが遅くなるが、ひとつ残念なのは、日本仕様車の場合、このディーゼル車(350d)には「Offroad+(オフロード・プラス)」モードが設定されていないことだ。正しくは、「ON&OFFROADパッケージ」と呼ばれるオプションに含まれる走行モードで、これには副変速機、つまりローレンジ・ギアボックスやセンターデフロック機構が備わっているのだ。
ちなみにこれは、ガソリン車であるGLS550には標準装備されているとのこと。日本ではハードなクロカン走行の機会などほとんど想定されぬであろうGLSだが、ヘビー級ゆえにこの手の装備があれば安心であるし、メルセデスの最高峰SUVを名乗るなら、たとえオプションでも用意して欲しい機能と言える。
エアサスも含めた最新の電子制御技術によって細かい設定が可能になり、楽しみ方も快適性も拡がった…これが今回の新型GLSの総合的な印象だ。車種限定ではあるが、オフロードでは心強い本格装備も用意されており、これも好印象。
Gクラス大幅リニューアルの噂も流れる中、どこまで4×4として可能性を広げていくのかは大きな課題だが、ファンの期待は大きいSUVだけに目が離せないモデルである。
【エンジン】
2,987ccV型6気筒・DOHCディーゼルターボエンジンを搭載。最高出力190kW(258PS)/3,400rpm、最大トルク620Nm(63.2kgm)/1,600〜2,400rpmを発生する。旧GL350と同型エンジンだが、最高出力の発生回転数が200rpm下がっている。
【エンジン騒音計測データ】
●車内・・・・39.5dB
●ボンネット閉・・・・64.5dB
●ボンネット開・・・・70.0dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動/アイドリング時。なお、当コーナーでの騒音計測は毎回微妙に異なる環境下(天候、気温や地形等)で実施されるため、計測値を他車と比較することはできません。
操作系の基本レイアウトは旧GL(上)と同じインパネまわり。4本スポークから3本スポークになったステアリングホイールと、大型化した中央のワイドディスプレイが目を引く。
タッチパッドが追加されたセンターコンソールのCOMANDコントロールシステム。右側ダイアルは走行モード選択ダイアル。ATセレクターはステアリングコラムの右側にある。
インパネ中央の8インチ・ワイドディスプレイには、ナビ/オーディオ画面のほか、出力/トルクメーター(上左)やステアリング/エンジン/サスの個別設定(上右)、トルク配分、ダンパー減衰力、傾斜計、操舵角、重心位置等を表示できる。
余裕のレッグスペースを誇るリア&サードシートとホールド性の良いフロントシートは秀逸。
ラゲッジルームは最大容積2,300リッターあり。サードシートは従来同様に、展開、格納とも電動スイッチにより操作できる。
フロントサス(左)は、ダブルウィッシュボーン+エアスプリング式、リアサス(右)はマルチリンク式エアスプリングの独立懸架。
タイヤサイズは295/40R21。標準モデルには275/55R19が装着される。
文/内藤知己
写真/佐久間清人