トヨタ最新自動車情報〜カムリ
2017.7.29
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最新クルマ事情
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トヨタ
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80年代に登場したことを知っている人は、ずいぶんとイイクルマになったなと感じ、昨今の北米マーケットにおける大ヒットのみを知る人にとっては、グローバルミッドサイズサルーンとして広く認知されている、トヨタ・カムリ。
その最新モデルが今年1月にデトロイトショーで世界初披露され、セダン不振と言われる日本マーケットにおいて「セダン復権」を掲げ、7月に日本デビュー。はたして、新しいカムリは、本当にセダン復権たるポテンシャルを持ち合わせているのか、検証することにした。
文章:吉田直志/写真:佐久間 清人
グローバルミッドサイズセダン“カムリ”日本上陸
日本においては、もはや、オジサンのクルマたるイメージがついてしまった、セダン。しかし、乗員が過ごすキャビンと、荷物を積み込むトランクルームを明確に分けるというパッケージングは、乗る人に失礼を与えないという、もてなしの基本を備えている。さらにはひとつの空間ではなく、箱を組み合わせたかのような構造は、クルマとしての基本性能に有利であるといったメリットも合わせ持つ。
確かに、いかに積めるかといった実用性や、荷物にアクセスしやすいといった利便性は、ミニバンやSUVには敵わないが、それを除けば、つまり、先に述べた「人をもてなす」こと、「クルマの基本性能」といった面では、セダンに敵うパッケージングはない。
そんなセダンを、日本において復権しようと登場したのが、トヨタの新型「カムリ」だ。カムリは、80年にセリカの派生モデル(FR)としてセリカ・カムリという名称で登場し、82年にはカムリ(FF)として独立。FFセダンがもたらす広い室内空間、ひとつ上のクラスといったアッパークラス感を特徴としており、世代を経るごとに日本だけではなくグローバルにも対応できるモデルへと成長。気が付けば、アメリカでメインストリームとされるミッドサイズセダンカテゴリーにおいては、15年連続乗用車販売台数トップを獲得するほど。アメリカはもちろん、中国をはじめとした100か国以上で、広く受け入れられるモデルへと進化を果たしている。
その最新型は、さらにグローバルに通用するモデルへと進化させる一方で、日本仕様においては、”性能、智能を突きつめることで官能をもたらす、心揺さぶる上質セダン”をコンセプトに掲げて開発が行われた。
トヨタが掲げるクルマ作りの構造改革であるTNGAにより、すべてをゼロから開発して造り上げられていることもポイント。
技術的なトピックとしては、日本仕様は先代同様にハイブリッドユニットのみで展開され、燃費・環境性能だけではなく、ゆとり溢れる走りをバランスさせたこと、また、Toyota Safety Sence Pによる先進安全システムを全グレードで標準装備したことはもちろん、リアクロストラフィックオートブレーキをトヨタとして初採用したことなどが挙げられる。
上質と快適性をもたらす走り
その走りはアッパークラス感を備えたものであり「こういうセダンってありだよな」ということを強く感じさせた。ボディー剛性にしても、その高さをこれでもかと感じさせるようなドイツ車的な強固さではなく、シャシーの動きを的確に止め、そして、乗員に不快を感じさせるような振動を止める、そんな剛性”感”を上手く作り込んでいる。
もう少し解説すると、路面からの入力はシャシーでしっかりといなされた上で、角を取り除いたトタンといった音、振動にて、乗員に伝えてくるため、不快を生む理由を明確に伝えながらも、そのレベルを抑え込み、結果として不快感を覚えさせないといった仕立てがされている。
快適性が重視されているがゆえに、バウンド後はリバウンドストロークを感じさせるところもあるが、それとて、いわゆるフワフワ感ではなく、フワのフッで動きを抑えており、不安に通じるフィーリングには至っていない。ただ、ドイツ車的な硬さを感じさせながらも、一方で明確なストローク感を望む人には受け入れにくいフィーリングと言えるかもしれない。しかし、この快適性の演出こそ「これぞトヨタ流、カムリ流の設え」と捉えることができるものだ。
パワーユニットは、新設計となる直4/2.5Lガソリンエンジンに、高回転モーター3MN型を組み合わせ、燃費・環境性能を謳いながら、レスポンスやパワーを大きく引き上げている。
これまでトヨタのアッパークラスに採用されてきた直4/2.5L+モーターによるハイブリッドユニットは、直4たる音や振動、さらにはフィーリングに、そのモデルに与えられたクラス感に届いていない印象が少々あったが、新たにカムリに搭載されたユニットはそれを払拭。
まず、エンジンマウントも手伝って、直4たるフィーリングを感じさせない、モーターのアシストを上手く利用してスムーズな加速感を手に入れているなど、そのモデルのクラス感に相応しいフィーリングを手に入れている。
もちろん、意識してアクセルを踏み込めば力強さをダイレクトに感じさせるパワーが立ち上がるし、日常で穏やかなアクセルワークをしている限りは、ペダル操作が少なくて済むという扱いやすさにも長けていることは言うまでもない。
「セダンもあり!」を印象付けさせてくれた
今回はワインディングルートをあえて選んで走ったが、ステアリング操作に対してスーッとノーズが向きを変えてくれる、「キレイ!」と表現したくなる操縦性が強く印象に残った。意図的に与えたクイック感ではなく、まさにドライバーが切り足した分だけノーズが向きを変えていくものであり、剛性感を含めてロールフィールにも安心感を覚える。言い換えると、意のままの操縦性と、静粛性から乗り心地までの快適性を、ハイバランスさせている。
つまり、日常においては快適性を最優先し、スポーツ性能としては尖ったところがないように感じるが、いざ、ドライバーがその気になると、それに十二分に応えてくれるだけのポテンシャルを備えており、そんな二面性こそが新型カムリのアドバンテージだと感じた。
そう、どんなシーンにも対応できるだけではなく、どこまでも走らせたくなるというクルマの基本的な魅力を備えたモデルであり「これならセダンもありだよね」と、表現したくなる存在であることを確認できた。
カムリとしては10代目となる最新モデル。
TNGAによる新プラットフォームは低重心化を果たしており、それは走りだけではなく、デザインにも強く表現されている。張り出しを明確にしたバンパーボトム部、薄型にしたアッパーグリルとヘッドランプ、立体的かつ大型化したロアグリルによるコントラストによって、個性をアピール。スタイリッシュに見せながら、実用性を犠牲にしていないパッケージングも秀逸だ。
サイドからの流れをCピラー、バンパー、テールランプへと収束させるデザインが特徴的。G以上のリアコンビネーションランプはすべての光源にLEDを採用。Gのホイールは17インチアルミホイール、タイヤサイズは215/55R17。なお、ボディーサイズは、全長4885mm、全幅1840mmと、日本では大柄と言わざるを得ないサイズ。
Bi-BeamLEDヘッドランプを全グレードで標準装備。バルブ(LED)はひとつながらシェードを設けることで、ロー、ハイの照射範囲を実現。センター部にある3層からなるLEDクリアランスランプ(LEDデイライト)もポイント。
新たに採用された直4/2.5Lガソリンエンジン+高回転型モーターによるハイブリッドシステムを搭載。システムとしての最高出力は211PSだが、スペック以上のパワフルさを感じる。
シンプルながら操作性をバランスさせたインパネ。ワイド感をベースにしながら、サテンメッキを用いたラインによってゾーン分けがされている。G以上では、立体感と奥行き感を作り上げたタイガーアイ調パネルを採用していることもトピック。
サポート性を強く意識させることなく、十二分のサイズ感も相まって、心地よく身体を包んでくれるため、ワインディングでも不足を感じさせないフロントシート。取材したGグレードはファブリック表皮、8ウェイパワータイプを採用する。
リアシートはストレッチされたホイールベースも手伝って足下スペースにはゆとりが広がる。フロントシート同様に乗員の身体を包み込んでくれるもので、背もたれの適度も相まって、ゆったり感を味わうことができる。6:4分割可倒式(トランクスルー機能付き)を採用。
バッテリーのコンパクト化に成功しリアシート下へと収められたため、ラゲッジ容量は524L、その床面の奥行きは990mm(最長で1150mm)、荷室幅は1680mmを実現。特に床面の奥行きは先代よりも190mmもアップさせている。
フロントグリル内に配置されたミリ波レーダーとフロントウィンドウ上部に置かれた単眼カメラを用いて、事故の回避や被害軽減を支援するToyota Safety Sence Pを標準装備。
機能としては、歩行者検知も可能としたプリクラッシュセーフティシステム、ステアリング制御付きレーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビーム、全車速追従機能付きレーダークルーズコントロール(写真)を備える。
さらには、後退時、自車の左右後方からクルマが接近してくることを検知し、衝突の危険性が高まると自動的にブレーキを作動させるリヤクロストラフィックオートブレーキ機能をトヨタブランドとして初めて採用(オプション)。
ワインディングではコーナーを爽快に駆け抜けることができるポテンシャルを備える。タイヤのグリップ感がはっきりと伝わってくることもあり、ついついアクセルを踏み込む足にも力が入ってしまうほど。的確なロールフィール、ロール量も好印象。
ストレスなく動くシャシー、意のままのパワーを引き出してくれるハイブリッドユニットなどは、スポーティーさだけではなく、日常においては、快適性を強く感じさせてくれる。高速走行はもちろん、海辺を流すようなドライビングにおいては安心を覚える。