【紹介/試走】BMW X4 xDrive35i M Sport

2014.11.20

    • プレミアムSUV
    • BMW

クーペ版SUVの役割り

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X3ベースのクーペ・スタイルSUV

今年3月に欧州で発表され、日本では8月から受注が開始されたBMW X4。5ドアながらクーペ・スタイルのフォルムを持つ、Xシリーズでは最新の4×4モデルだ。

 

位置づけとしては、X5のクーペ版がX6であるのと同じく、X4はX3のクーペ・バージョン。ベースがX3なので、駆動系やサス形式、ディメンジョン等に共通部分は多く、エンジンも一部共有している。

 

クーペ・スタイルということで、シートポジションがフロントで20㎜、リアで30㎜下げられ、全高もX3より50㎜低くされていることで、外観も着座姿勢も、よりスポーティーな印象だ。

 

もともとこの顔つきにクーペのシルエットが似合うのは当然なので、X3やX5を見慣れた目にも違和感はない。しかし、さすがにリアゲートの角度に起因する後方視界の狭さは如何ともし難く、リア・モニターカメラの視界もロクに確保できない大雨の夜の車庫入れなどでは辟易させられる。一般的に「視界が広いこと」は多くのSUVに共通するメリットなので、これは残念な部分だ。

 

日本でのラインナップは、2リッター直4ガソリンを搭載する28iと、3リッター直6ガソリンを搭載する35iの二本立て。それぞれに標準モデルとM Sportの2タイプが設定され、合計4タイプが用意される。日本仕様のX3や欧州で設定のあるディーゼルエンジンの搭載は見送られている。

 

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内外装はM Sport専用装備

今回の試乗車は、メルボルン・レッドのボディーも鮮やかな35iのM Sport。スポーツサスペンションやエアロパーツを中心としたエクステリア、そしてスポーツシート等、インテリアの一部に専用装備を与えられているが、エンジン&駆動系、電子制御の安全装備等は標準モデルと同じだ。

 

メカニカル・ノイズや振動面で有利な直列6気筒はBMWの看板でもあり、そのシルキーでスムーズな吹け上がりこそ真骨頂と言われるが、0→100㎞/h加速5.5秒を誇るツインパワー・ターボエンジンの圧倒的なパワーと滑らかな吹け上がりは、まさに”看板に偽りなし”。

 

しかも1,200rpmから最大トルク(400Nm/40.8kgm)を発揮するこの直6・DOHCターボは、街乗りでも非常に扱いやすい。

 

M SPORT専用装備のスポーツサスペンションは、名称からイメージするほどガチガチに硬い設定ではないが、常に重厚な安定感を持続させる快適な脚。標準モデルにダイナミック・ダンピング・コントロール(走行状況に合わせてダンパー特性を変化させる機構)をオプション装備した脚との違いをぜひ試したいところだ。

 

コーナーでは、ロールが最小限に抑えられるこの脚に加えて、X3よりも低い車高や着座位置の効果がしっかり実感できる。

 

オンロード性能がここまでのレベルになってくると、自ずと「だったらクーペかセダンでいいじゃん…」という思いが脳裡をよぎるのは、この手のSUVの常。

 

しかし、都内が突然の大雪に見舞われるたびに、坂の多い高級住宅街で路上に乗り捨てられたBMWがやけに目に付いた(看板であるFRの悲劇!)ことを考えると、やはり都会でも4×4は必須と言って差し支えないだろう。

 

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X4のオンロード特化でさらなる棲み分けを

インテリアの造形はX3とほぼ同じ。ただ、視界や着座姿勢が明らかに違うので、前述したシートポジションのわずかな低さはしっかり効果を発揮しているようだ。

 

外観から受ける印象ほどリアシートのヘッドルームは狭くないが、やはり圧迫感が全くないと言えばウソになる。足元はX3と変わらず充分なスペースがある。それよりも気になったのは、窓の上にアシストグリップがないこと。リアシートだけに無いのではなく、助手席にも装備されていない。その代わり…かどうか分からないが、(洋服の)ハンガー用と思われるフォールディング式フックが付いている。あくまでも2名乗車が基本…と宣言されているような印象である。

 

都内を襲った大雪の例を挙げるまでもなく、今や4×4は未舗装路の多い地域だけで必要とされるクルマではないことは明らか。加えて、いわゆるSUV=スポーツ・ユーティリティー・ビークルの「ユーティリティー」の部分を必要としないユーザー層も増えている…と仮定すれば、X4のようなスポーツクーペタイプのSUVも大いにアリだろう。

 

だとすれば、X4の登場によってX3はもっとSUVらしく4×4らしく…が可能になる。これこそが、敢えてクーペ・スタイルとしたX4の役割であり、存在意義でもある。

 

X4は、整備されたアスファルトでのみ性能を発揮する40扁平のロープロファイルタイヤでOK。一方X3には、雪道でもダートでも安全に走れるオールテレーン・タイヤを装備。ロードクリアランスをさらに稼げてクロスカントリー走行にも対応できる腰高でソフトなサス設定も欲しい。

 

X1、X3、X4、X5、X6と、X系ラインナップの充実を図ってきたBMWだが、今後はその棲み分けによる内容の充実にもぜひ期待したい。

 

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【騒音計測データ】
●車内・・・・43.0dB
●ボンネット閉・・・・61.0dB
●ボンネット開・・・・65.5dB
※エアコンOFF、電動ファン非作動時

 

アイドリング時の騒音レベルを実測。振動の少ないスムーズな直6は、騒音レベルも低い。遮音性能も非常に高い。

 

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X3とほぼ同じデザインのコックピット。着座位置がやや低いためか、タイト感はX3以上。

 

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シンプルかつスポーティーなアナログ2眼メーター。BMWらしさが感じられる部分のひとつだ。

 

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ステップトロニック付き8速ATはX3と共通。右側は走行モードを選択できるドライビング・パフォーマンス・コントロールのスイッチ。

 

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オーディオやカーナビ、車両情報の表示や操作はダイヤルで行う。慣れると素早い操作が可能。

 

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パールポイント・クロス/レザー・コンビネーションのスポーツシート(運転席 & 助手席)。M Sport専用装備。

 

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後方視界はご覧の通り。リアワイパーもない。夜間の車庫入れはリアビューカメラ等の映像とセンサーの警告音だけが頼り。

 

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カーゴスペースの床面積は一般的なSUVレベルだが、屋根が低い分、積荷は制限される。リアシートの中央部分のみを畳んで、スキー等の長尺物積載も可能。

 

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N55B30A型3リッター直6・DOHCガソリン、ツインパワー・ターボエンジン。
最高出力225kW(306PS)/5,800rpm、
最大トルク400Nm(40.8kgm)/1,200〜5,000rpmを発生。

 

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フロントサス(左)はダブル・ジョイント・スプリング・ストラット式。リアサスは5リンク+コイル。M Sport専用のスポーツサスペンション・セッティングが施されている。

 

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標準タイヤは全車ともX3と同じくフロント:245/45R19、リア:275/40R19サイズ。ホイールはM Sport専用のダブルスポーク・スタイリング622Mライト・アロイホイール