トヨタ最新自動車情報:オーリスハイブリッド
2016.7.19
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トヨタ
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欧州の香り漂う〜オーリスハイブリッド
スタンダードサイズのハッチバックモデルであるトヨタ・オーリスは、日本に止まらず、欧州で積極的に販売が行われていることもあって、欧州車テイストを強くもったモデルとなっている。かつてFXやランクスというサブネームを与えられカローラファミリーであることをアピールしていたモデルの後継という位置づけから、カローラから派生したハッチバックモデルというイメージを持たれているかもしれない。しかし、2006年、オーリスという名称とともに独立しており、そのプラットフォームも今のカローラ系とは異なっており、クラスとしてはカローラ系よりもひとつ上に位置している。
現在のオーリスはその2世代目で2012年にデビュー。昨年、マイナーチェンジが施されてライフサイクルも後半戦に突入したものの、今年の4月にハイブリッドモデルが追加された。突然のように思われるかもしれないが、実は、先代モデルから欧州ではハイブリッドモデルが追加されており、今回のために新開発されたわけではなかった。また、欧州で生産されていたこともあって、その走りは欧州向けにチューニングされ、いつしか欧州車的なテイストを強めていた。
試乗インプレッション
前置きが長くなったが、オーリスハイブリッドにはそんな生い立ちがあり、カローラの派生モデルでもないし、単なるハイブリッドモデルでもない、という素性があることをお忘れなきよう。
その違い、そして、良さは走り出すとすぐに感じ取れるものだ。
まず、感じるのは路面トレース性能(タイヤの接地感)に優れていること。路面をしっかりと確実に捉えて、滑らかに、そしてスムーズに加速していく。サスペンションはバネレートを高めた”硬め”のセッティングとなっているが、いわゆるハイパフォーマンスを狙ったスポーツモデルではなく、あくまでも欧州における標準仕様といったフィーリングだ。だから硬さがあるとはいっても、路面からの入力は、サスペンションはもちろんのこと、ブッシュ、タイヤも手伝って、角をしっかりと取り除いてボディーへと伝えてくるため、それを不快だと感じることはない。もちろん、突き上げを感じさせるようなこともない。
今回試乗したハイブリッドGパッケージは、225/45R17という扁平率の低いタイヤを採用したこともあって、凹凸のあるような路面ではそのタイヤサイズを感じさせるところもあるが、先に述べたような好印象に変わりない。
むしろ、このシャーシー剛性の高さはハンドリングに大きくプラスになっており、その印象のほうが大きい。ステアリングに力を与えてからクルマが向きを変え、グリップを感じるまでといった一連のフィーリングに曖昧さが感じられず、また、そのフィーリングに一定感がある。
コーナーでは、手前で減速してフロントに荷重を移し、ステアリングをわずかに切り足してヨーを感じたかなと思うときれいにロールへと移行していく。もちろん、ロールしないわけではないが、その量は的確に抑えられている。それはクイックでも緩やかでもない、まさに丁度いい加減であり、スポーティーに繋がる気持ち良さがある。
そう、ワインディングが実に楽しいのだ。そして、タイヤのグリップ感がもう少し伝わってくると、この楽しさはさらに引き上げられるのになぁと、そんな欲張りなことまで思わせた。これはグリップしているフィーリングが欲しいということで、決してグリップ力が足りないのではないので、お間違いなきよう。
パワーユニットは、先代プリウスに搭載されていた1.8Lガソリン+モーターとなる。最新型プリウスよりも後にデビューしているのに先代のユニットを用いているのは、先にも述べたように、すでに欧州で存在していたモデルだからだ。
しかし、このユニット、スポーツモデル向きに仕立てられた訳ではないのに、先に語ったように走りに上手くバランスしていて好印象だ。
特にレスポンスとアクセルを踏み込んでいった時の伸びはチューニングが違う? と思わせるほど。実際には大きくは変えておらず、クルマに合わせたチューニングに止めているようだが、爽快な走りにリンクしたパワーフィールを備えている。それは、単にガソリンエンジンとモーターのコンビネーションだけではなく、電気式無段変速機によってさらに滑らかな加速感を加えられたものであり、オーリスハイブリッドオリジナルともいえるフィーリングだ。
ただ、何が起因しているかまでは分からなかったが、アクセルを深く踏み込んだ後にペダルから足を離すとわずかにショックが感じられたが、気持ちよさに通じるフィーリングを優先した結果、と捉えると気にならないレベルの話だ。
ついつい走りについてばかり書いてしまったが、インテリアの設えもまたアドバンテージとなっている。ハイブリッドGパッケージ専用となるホワイトとブラックの大胆ともいえるコンビネーションは、特別なモデルであることを“楽しませて”くれるもの。
シートも形状をスポーツタイプとしながら、シート地に本革とウルトラスエードを組み合わせるなど、Gパッケージでなければ手に入れられない世界観を表現している。それは単にラグジュアリーとかスポーティーを強調したものではなく、先にも触れたように、オーリスハイブリッドの走りにあふれる爽快であり快活というスポーティーさにリンクしたものだ。
先進安全装備であるToyota Safety Sence Cの採用もトピックだ。すべての機能にお世話になることはなかったが(あったら困るが)、万が一の事故に対応してくれるという安心感をもたらしてくれるプリクラッシュセーフティシステム、そして、ちょっとしたミスをサポートしてくれるレーンディパーチャーアラート、切り替えの煩わしさを省いてくれるオートマチックハイビームは、まさにあるに越したことがない機能だ。
ちなみに、システムには含まれていないが、そのために採用されたハードウェアを用いて実現している先行車発進告知機能は“使える”機能だと感じた。これは信号待ちなどで先行車が発進しても、自車が発進せずにいるとそれを教えてくれる機能だが、その告知タイミングがとてもいい。機能をじっと観察していると、その反応にちょっと早過ぎやしないかなと感じるのだが、実際のシーンでは、まさに気付かずにいると的確にすぐに教えてくれるといった印象があり、まさに上手く仕立てられていると感じた。
オーリスハイブリッド(Gパッケージ)は、オーリスというキャラクターはもちろん、欧州で育てられたハイブリッドモデルであること、さらにこの装備内容まで含めて、オリジナルのパッケージを作り上げていた。それはいうまでもなく、欧州のどのモデルにも見当たらないアドバンテージとなっている。
(文:吉田直志/写真:佐久間 清人)